フジッコ、とろろ昆布が血中の中性脂肪の上昇を抑えることを証明
-平成18年度日本食品科学工学会大会で発表予定-
とろろ昆布が血中の中性脂肪の上昇を抑えることを証明
―昆布を薄く削ることにより,作用は増強される―
東京海洋大学大学院矢澤一良教授との共同研究
フジッコ株式会社(代表取締役社長福井正一)は,東京海洋大学大学院ヘルスフード科学講座の矢澤一良教授との共同研究で,とろろ昆布に血中の中性脂肪の上昇を抑える作用があることを動物実験により証明しました。この作用は,削る前の昆布にもみられましたが,とろろ昆布ではより明らかな作用が認められました。これは,昆布の細胞の大きさよりも薄く削るというとろろ昆布の加工特徴が,消化管内での有用成分の溶出量に影響するためであることが示唆されました。
昆布食品は,食物繊維やミネラルに富んだ優れた食物ですが,今回の研究により,その中でもとろろ昆布は,昆布が持っている健康機能を最も有効に活用できるヘルスフードであることが示されました。
本研究成果は,平成18年度日本食品科学工学会大会(2006年8月28日~30日,日本大学湘南キャンパス神奈川県藤沢市)において発表いたします。
■とろろ昆布の製法の特徴と研究の背景
とろろ昆布の製法は,概ね次のようになっています。
図1 とろろ昆布の製造工程
※添付資料参照
とろろ昆布の加工方法の特徴は,他の製品のように水や調味液中で煮炊きすることがないことと,「切削」と呼ばれる工程で極めて薄く削られることです。
水や調味液への成分の流失がほとんどないため,とろろ昆布は原料昆布が持っている成分がそのまま保持されています。しかも,極めて薄く削られていることから,消化管での成分の溶出量が多いことが推測されます。
今回の研究では,とろろ昆布のこのような加工特徴が,体内での成分溶出やその生理作用の発現に影響する可能性について検討しました。
■研究内容
SD系雌ラット(8週齢)にコーン油(5ml/kg)と1)蒸留水,2)切削前の昆布粗粉砕物(425~600μm),3)とろろ昆布をそれぞれ1000mg/kg経口投与し,経時的に血中の中性脂肪の測定を行い,吸収された中性脂肪の総量(AUL値)を算出しました。その結果,切削前の昆布粗粉砕物(2))投与群でも,対照群(1))と比較して血中の中性脂肪の上昇が抑えられ,AUL値を低下させる傾向が認められましたが,とろろ昆布投与群(3))では,さらに作用が顕著となり,統計的にも有意な差が認められました。(図2)
切削前の昆布粗粉砕物(2))ととろろ昆布(3))について,水溶性アルギンとフコイダンの人工消化液による溶出試験を行ったところ,とろろ昆布(3))では明らかに溶出量が多くなっており,血中の中性脂肪の上昇抑制作用に関して,これらの水溶性食物繊維の溶出量の差が影響していることが示唆されました(図3)。
また,電子顕微鏡でとろろ昆布の組織をみると,とろろ昆布は20~30μm程度の厚さで切削されており,大部分の細胞が切断・破砕されていることが観察されました(図4)。そこで,段階的に粉砕した昆布粉末について水溶性アルギンやフコイダン,ミネラル類の溶出試験を行ったところ,昆布の細胞に相当する粒子サイズ(10~100μm)程度までは微細化に伴って溶出量が多くなりましたが,それ以上微細化しても溶出量は大きくは増加しないことが分かりました。
以上のことから,昆布の細胞の大きさよりも薄く削るというとろろ昆布の加工特徴が,消化管内での有用成分,特に水溶性食物繊維の溶出量を増やし,血中中性脂肪の上昇抑制作用に影響しているものと考えられました。
■発表予定
平成18年度日本食品科学工学会大会(会期:2006年8月28日~30日)
発表日時:8月29日(火)11時30分
場所:日本大学湘南キャンパス(神奈川県藤沢市)
会場:C会場
※以下、添付資料参照