武田薬品、高血圧症治療薬ブロプレスの大規模臨床試験「CASE-J」の成績を発表
高血圧症治療薬ブロプレス(R)の大規模臨床試験「CASE-J」の成績発表について
‐ ブロプレスの臓器保護作用が明らかにされた‐
福岡市で開催されている第21回国際高血圧学会(10月15日~10月19日)において、高血圧治療薬ブロプレス(R)(一般名:カンデサルタンシレキセチル)の大規模臨床試験「CASE-J※」の試験成績が発表されました。
※ CASE-J: Candesartan Antihypertensive Survival Evaluation in Japan
CASE-J試験は、日本人のハイリスク高血圧症患者4,728例を対象に、わが国の高血圧症治療薬として最も繁用されているアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)のブロプレスとカルシウム拮抗薬のアムロジピンとを比較した、日本で最初の大規模臨床試験です。
今回の試験により、主に次の3点が明らかになりました。
☆心血管系イベント発症抑制に対し、ブロプレスはアムロジピンと同程度の抑制効果が認められました(発症率は両群とも5.7%)。<主要評価項目>
☆全死亡に対しては有意ではないものの、ブロプレスはアムロジピンと比較して全死亡リスクを15%減少させました。特に肥満度の高い患者層でブロプレスはアムロジピンと比較してそのリスクを49%減少させました(p=0.045)。<副次評価項目>
☆糖尿病の新規発症に対し、ブロプレスはアムロジピンと比較して新規発症リスクを36%減少させました(p=0.030)。さらに、肥満度が高くなるほどブロプレス群はアムロジピン群と比較してより顕著に糖尿病の新規発症を抑制しました。
今回の試験成績について、CASE-J試験の運営委員会委員長の荻原おぎはら俊男としお先生(大阪大学医学部附属病院院長、大阪大学大学院医学系研究科老年・腎臓内科学教授)は、「主要評価項目の心血管系イベントの新規発症は両群間で有意差は見られませんでしたが、心肥大退縮効果や糖尿病の新規発症の抑制でブロプレスが有意に優れていることが明らかになりました。さらに、層別解析の結果、ブロプレスは、メタボリックシンドロームが話題になっている現代において、時代にマッチした高血圧症治療薬であるといえます」と述べています。
CASE-J試験研究責任者(京都大学EBM共同研究センター長)の中尾一和なかおかずわ先生(京都大学大学院医学研究科内分泌代謝内科教授)は、「欧米と異なり、軽度肥満であってもほぼ全員が高血圧症に罹患しているのが、日本人のメタボリックシンドロームの特長です。CASE-J試験では、カンデサルタンがこのような患者の死亡率や糖尿病の新規発症を半減させることを明らかにしました。さらに、肥満度が高いほど、その効果が大きいという新知見は、メタボリックシンドロームの増加が世界的な問題となっている現代において、日本のみならずアジア諸国さらには欧米諸国において、高血圧症及びメタボリックシンドローム治療ガイドラインに対し強いインパクトを与えると確信しています」と述べています。
<CASE-J試験の概要>
対象:日本人のハイリスク高血圧症患者※14728名
調査期間:3年以上
試験デザイン:非盲検無作為群間比較試験
解析項目:
・心血管系イベント※2(主要評価項目)
・全死亡、心肥大退縮効果等(副次評価項目)
・糖尿病の新規発症
※1 重症高血圧症(180/110mg以上)、2型糖尿病、脳血管障害、心疾患、腎障害、血管障害のうち、心血管リスクを1つ以上有する患者
※2 突然死、脳血管障害、心疾患、腎障害、血管障害のうち、最も早期に発症したイベント
CASE-J試験は、日本高血圧学会の後援を受けCASE-J研究会の主導で実施された大規模臨床試験です。京都大学EBM共同研究センターが中央事務局となり、日本全国の600名を超える医師が参加し、2001年9月から2005年12月までに実施されました。
カンデサルタンは武田薬品が発見・創製し、武田薬品とアストラゼネカ社により共同開発されました。現在、カンデサルタンは武田薬品からBlopress(R)、Amias(R)、Kenzen(R)、アストラゼネカ社からAtacandRの商品名で、世界約90ヵ国で発売されています。
以上