タカラバイオ、明日葉の新規抗ウイルス物質「明日葉ディフェンシン」を発見
明日葉の新規抗ウイルス物質:明日葉ディフェンシンの発見について
タカラバイオ株式会社(社長:加藤郁之進)のバイオ研究所では、明日葉組織培養物に新規な抗ウイルスペプチドである明日葉ディフェンシンの遺伝子が強く発現し、明日葉の茎(根元)や葉にも明日葉ディフェンシンが発現していることを発見しました。これらの研究成果の詳細は、本年10月26日より大阪大学(大阪府吹田市)で開催される第1回食品薬学シンポジウムで発表します。
当社では、セリ科植物のひとつである明日葉の新規な機能性の研究を続けており、すでに、明日葉の抗糖尿病作用に関しては2004年9月に日本生薬学会にて、また明日葉の骨粗鬆症に関する効果については共同研究先の岡山大学が2006年6月の国際歯科学研究会議にて発表しています。
ディフェンシン(Defensin)はヒトから植物まで広く生物界に存在する抗ウイルスペプチドです。ヒトにおいてはウイルスからの最初の防御線であるナチュラルキラー細胞、好中球、マクロファージ、T細胞、B細胞などの免疫細胞で強く発現しており、好中球では最も豊富に存在するペプチドのひとつといわれております。また口腔粘膜などの粘膜上皮細胞では、ウイルスの侵入によってディフェンシンの発現が誘導されることが明らかになってきています。抗ウイルスの対象は鼻炎ウイルスやHIVなどの広範なウイルスが含まれます。植物においてはアブラナ科植物の種子で多く見つかっており、病原体の感染防御にかかわっていると考えられています。
当社バイオ研究所では、すでに明日葉の組織培養によりカルコン類化合物を高効率で生産できることを見出しています。今回我々は、この組織培養物からカビに対する抗菌性物質が放出されること、加熱処理するとその活性がなくなることを確認しました。DNAマイクロビーズアレイを用いて遺伝子発現解析を行ったところ、明日葉の組織培養物にディフェンシン様遺伝子が大量に発現していることがわかり、この新規な遺伝子を明日葉ディフェンシン遺伝子と名付けました。また、予想されるアミノ酸配列の解析により、明日葉ディフェンシンはヒトのβ型と高次構造が似ていることも明らかになりました。さらに、明日葉ディフェンシンはこの培養細胞のみならず植物体の茎(根元)や葉でも強く発現していました。
当社グループでは、明日葉を新しいユニークな健康食品素材として大きく発展させたいと考えており、鹿児島県大崎町や上屋久町などで生産を行っています。現在、当社グループの明日葉の年間の生産量は約400トンで、日本最大の生産規模です。
当資料取り扱い上の注意点
資料中の当社の現在の計画、見通し、戦略、確信などのうち、歴史的事実でないものは、将来の業績に関する見通しであり、これらは現時点において入手可能な情報から得られた当社経営陣の判断に基づくものですが、重大なリスクや不確実性を含んでいる情報から得られた多くの仮定および考えに基づきなされたものであります。実際の業績は、さまざまな要素によりこれら予測とは大きく異なる結果となり得ることをご承知おきください。実際の業績に影響を与える要素には、経済情勢、特に消費動向、為替レートの変動、法律・行政制度の変化、競合会社の価格・製品戦略による圧力、当社の既存製品および新製品の販売力の低下、生産中断、当社の知的所有権に対する侵害、急速な技術革新、重大な訴訟における不利な判決等がありますが、業績に影響を与える要素はこれらに限定されるものではありません。
<参考資料>
【語句説明】
明日葉
セリ科の大型多年草で、学名をAngelica keiskeiといいます。伊豆諸島を中心とした太平洋岸に自生する日本固有の植物です。関東地方では食用に供され、特に八丈島では不老長寿の霊薬として広く用いられています。民間薬としても用いられた経緯があり、その効用には、便秘、高血圧、貧血の改善、利尿作用、疲労回復、精力増強などがあります。さらに明日葉に特有の黄色汁が虫刺されや水虫、皮膚のかゆみに有効とされています。
ディフェンシン(defensin)
1984年にウサギの白血球から精製されたのが最初の報告で、1985年にはヒトからも報告されています。ヒトのディフェンシンはα型、β型などに分類され、最近ではエイズウイルスなどへの抗ウイルス作用が注目されています。植物では1990年に小麦や大麦の胚乳からの精製の報告が最初で、アブラナ科やキク科などの植物種子から見つかっています。
上皮細胞
口腔や腸内壁など外界と接する上皮の表面にある細胞で、生体防御の最前線にあります。
好中球
顆粒白血球の一種であり、骨髄中、血液中、血管内皮細胞に付着して存在します。健常組織には存在しませんが、マクロファージなどに誘導されて感染部位に集まり、病原体を捕食して破壊します。
組織培養
植物組織や細胞を無菌的に培養する技術です。苗の大量繁殖、育種や植物特有の成分の物質生産に利用されます。遺伝子組換え植物作製の際もこの技術が使われます。
カルコン
フラボノイドの一種で、主に黄色い花に含まれる黄色色素。食用できる植物での分布は非常に限られています。
DNAマイクロビーズアレイ
DNAマイクロビーズアレイは従来のDNAチップのように固定的なアレイとは異なり、流動的な直径5マイクロメートルの微小ビーズにDNAが固定化されたDNAアレイです。今回のように新規遺伝子の発見に大きな威力を発揮します。