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ニュースリリースのリリースコンテナ第一倉庫

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2024'11.28.Thu
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2007'04.17.Tue

新日鉄、高強度複合特性UO鋼管の量産体制を確立

高強度(~X120)及び複合特性鋼管の量産化体制確立について


 新日本製鐵株式会社は、このたび君津製鐵所鋼管工場における高強度UO鋼管(大径溶接鋼管)の量産化体制確立に向けた投資を決定した。ラインパイプ分野における最先端の高付加価値製品として開発したX120グレード(”X”はAPI 5L~米国石油協会ラインパイプ規格~の強度記号)を始めとする高強度複合特性UO鋼管の量産体制を、競合他社に先駆け世界で初めて2008年3月に確立する。


1.投資決定の背景
 世界のエネルギー消費が趨勢的に拡大する中、とりわけ、天然ガスはクリーンエネルギーとして開発が活発化しており、これに伴ってガス輸送用のラインパイプ需要が着実に増加している。
 一方で、天然ガスの開発環境は年々遠隔地化、過酷化(寒冷地、深海等)が進行しており、パイプラインに使用されるUO鋼管に対する需要家の要求品位はますます高度化・複合化するとともに、増大する開発コスト低減のため抜本的なサイズダウンニーズ(→高強度鋼管化)が高まっている。
 当社はAPI 5L(現在X70までが主流)のX100、X120(注1)グレードを含む高強度複合特性鋼管(低温靭性(注2)、高圧潰性(注3)、高変形能(注4)等)の開発を実施し、既に完了させていたが、今回本格的に量産化するための設備体制を整える。

2.ExxonMobil社との共同研究
 当社は、1996年から米国ExxonMobil社とともに、パイプライン敷設の抜本的なコストダウンを図るべく、X120クラスの高強度鋼管開発のための共同研究を実施してきた。2004年には、カナダにおいて共同開発したX120のUO鋼管を実際に使用したデモンストレーションライン(1マイル)に世界で初めて供給し、敷設に成功。各種試験をクリアし充分な実用性を立証・確認の上で2005年に開発を完了し、現在までに、国際標準規格化(APIおよびISO)に向けた取り組みを共同で実行してきた。なお、本研究開発に伴う出願特許件数は46件に上っている。

3.設備対策の概要
 高炉一貫製造ミルとしての特徴・有利性、及び、常に世界の最先端の技術開発をリードしてきた実績を最大限活かし、既に投資実行中の製鋼・厚板の上工程から、今回投資決定した鋼管の成形・溶接・品質保証の下工程に至る一貫製造プロセスでの設備対策により、世界最高レベルの高強度(~X120)及び各種複合特性に対応した高品質のUO鋼管の量産体制を整える。

(1)上工程(君津製鐵所 製鋼~厚板工場)
 本年11月に立上予定の製鋼工場の第6連続鋳造設備、および昨年稼動した厚板工場の次世代型制御冷却プロセス“CLC-μ”等、上工程における戦略投資効果のフル活用により、世界最高水準のメタラジーを適用したUO鋼管用超高級厚板の製造体制を確立。

(2)下工程(君津製鐵所UO鋼管工場 設備能力50万トン/年) ≪今回の設備投資決定≫
・主な投資内容:
 1)FEA(注5)を駆使した精密成形技術を確立し、高精度造管方式を導入、X120までの高強度鋼管における高品質、高寸法精度を実現。
 2)新たに開発した低温靭性に優れた高強度用溶接材料を本格適用するために、溶接品質向上と併せて関連設備を増強。
 3)パイプラインの自動溶接化及び深海パイプラインの進展に対応するため、自動寸法測定装置を導入。一昨年設置の最新超音波探傷設備(UST)と併せ、製品の安全性を確保する世界最高水準の品質管理・品質保証体制を構築。

・投資額:約40億円

・スケジュール:2008年1月完工、同年3月量産開始(予定)

4.製品の特徴と効果、および受注見通し
・今回量産化するX120までの高強度鋼管は、2008年以降、世界各地で多数計画されている大型長距離パイプラインプロジェクト(敷設距離 1,000km以上、鋼材使用量 50万トン超クラス、例として中国の第二西気東輸、北米のアラスカハイウェイ、ロシアでの複数の大規模案件等)において、パイプラインが敷設される周辺環境に配慮した厳格な安全基準を満足しつつ、且つ、開発コストの抜本的な削減に貢献することが期待される。
 このような、高強度鋼管(~X120)の研究開発から量産化にいたる当社の一連の取り組みは、世界のオイル・ガスメジャー及びエネルギー産業関連各社から高く評価されている。

・また、今回の設備投資は、高強度鋼管のみならず、寒冷地や深海用として世界最先端の高機能複合特性(低温靭性、高圧潰性等)を持つ鋼管製品の量産化も可能となり、北極圏、地中海等で計画されている水深2,000mを超える深海パイプラインや、新技術であるCNG船(注6)への適用等、従来は実行困難とされてきた世界各地の過酷な環境下における開発プロジェクトの実現に大きく寄与することも期待される。

・このように、今回の投資により市場に投入される世界最先端技術を具備した当社UO鋼管は、エネルギー分野における需要家の各種ニーズに的確に応えると確信しており、当社は、今後とも、素材の立場からエネルギー資源開発分野におけるソリューションを積極的に提供し、同分野向けのハイエンド鋼管の受注拡大を更に推進していく。


(注1)X100、X120
 数字は鋼管の降伏強度(Yield Strength)をksi(kilo pound square inch)単位で表したもので、抗張力(引張強度、Tensile Strength)換算ではそれぞれ760MPa、915MPa以上に相当。数字が大きいほど、高い内圧がかかっても鋼管が変形しないことを保証しており、同じ内圧に対し板厚のより薄い、軽量な鋼管が使用可能となる。あるいは、同じ板厚であればより高い内圧をかけられるので、パイプラインの輸送効率(操業圧力)を向上させることが可能となる。

(注2)低温靭性
 靭性とは鋼の粘り強さの指標で衝撃によく耐える性質。材料に微小な疵があった場合に破壊が発生するかしないか、又は、一度発生した破壊が長距離に渡って伝播するかしないかは、鋼の靭性と関係があり、特に寒冷地(鋼が脆くなりやすい)、天然ガスパイプライン(高圧輸送)では不可欠な特性。

(注3)高圧潰性
 圧潰性とは外圧に対する強度の指標。海洋での石油ガス開発が深海領域に拡大されるなか、鋼管には高水圧でもつぶれない、高い圧潰性が要求される。

(注4)高変形能
 変形能とは曲げモーメントに耐えられる性能のことであり、高変形能とは万が一鋼管が変形しても壊れにくいことを表す。パイプラインの敷設地帯が地震・断層地帯や、カナダ・シベリアなどの不連続永久凍土地帯では、地盤変動によりパイプラインが移動する可能性がある。従って、これらの地域で使用される鋼管には高い変形性能が要求されるようになってきた。

(注5)FEA:Finite Element Analysis(有限要素解析)
 物体に力が加わったときの変形状態、応力・歪み分布をコンピュータで計算する数値解析手法の一つ。物体を細かい「要素」に分割し、要素毎に構成した連立方程式を合成して解く。構造物、機械部品などの強度計算を中心に広く用いられている。

(注6)CNG船
 CNG(Compressed Natural Gas,圧縮天然ガス)を輸送する船のこと。圧縮した天然ガスを、船内に搭載した鋼管に充填して輸送する。
 LNGと比べて、天然ガスを気体のまま輸送する手段であり、開発の初期投資が少なく、生産規模、需要規模に合わせて船の大きさ・隻数の変更が可能なため、中小規模ガス田の開発に適した新たなサプライチェーンとして注目されている。


以上

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