東レ、高機能樹脂のPPSとLCPの生産設備増強で約40億円投資
高機能樹脂PPS、LCPの生産設備増強について
東レ株式会社はこのたび、高機能樹脂のPPS(ポリフェニレンサルファイド)“トレリナ”とLCP(液晶ポリマー)“シベラス”について生産設備の増強を決定し、建設を開始しました。当社東海工場(愛知県東海市)に年産2,500トンのPPS樹脂重合設備、および愛媛工場(愛媛県松前町)に年1,000トンのLCP樹脂重合設備をそれぞれ増設します。総投資額は約40億円で、2007年12月からの稼働開始を目指します。今回の増設により、PPS樹脂の年産能力は11,500トンに、LCP樹脂は現有能力倍増の年2,000トンに拡大します。
今回の生産設備増強は、電気・電子機器や自動車用途における高機能樹脂の需要拡大に対応するべく実施するものです。これにより樹脂事業における先端材料の強化拡大を図ります。なおPPS樹脂の増能力は、当初の5,000トン増強計画の第一ステップであり、引き続き2009年までに追加増設を実施していく計画です。
PPS樹脂は、耐熱性や耐薬品性、機械的強度、難燃性等に優れた“スーパーエンプラ”で、電気・電子機器やOA機器、自動車の電装部品等に使用されています。世界需要はニートレジン換算で約4万トン(2006年)と推定され、年7%以上の高成長が期待されます。東レは当社独自のポリマーアロイ技術を活かして、ハイブリッドカーをはじめとする自動車材料やエレクトロニクス関連等の成長分野で新規用途開拓を推進し、PPS樹脂“トレリナ”事業の拡大を図ります。
東レはPPSを樹脂コンパウンドにとどまらず、フィルム、繊維の各分野にも事業展開する総合PPSメーカーで、世界ナンバーワンの事業規模を誇ります。今回、フィルムと繊維にも適用可能な高機能タイプの生産増強を図ることで、世界ナンバーワンのポジションを一層強化していきます。
一方、LCP樹脂は、耐熱性や薄肉流動性に優れているのが特徴で、携帯機器の高性能化に伴う電子部品の小型精密化の進展により需要が急速に拡大しています。世界需要はニートレジン換算で約2万トン(2006年)と推定され、今後も、好調なIT関連需要等に牽引されて年10%以上の高成長が見込まれます。
当社のLCP樹脂“シベラス”は、良流動性と低ソリ性を有するII型液晶ポリマーで、ファインピッチコネクターを中心に採用が広がっています。今春からは、LCPの弱点であるウエルド強度を飛躍的に改善した「LXシリーズ」の本格販売を開始し、これまでのII型LCPでは実現できなかった自動車用コネクターやモーター絶縁体等、構造部材への新規採用が見込まれます。東レは、製品ラインアップの拡充と生産能力の倍増により、“シベラス”の新規用途開拓と事業拡大に取り組んでいきます。
東レは本年10月からスタートした中期経営課題“プロジェクトInnovation TORAY 2010”(IT-2010)において、情報・通信・エレクトロニクス、自動車などの成長領域をターゲットに先端材料の拡大を推進しています。東レは、PPSとLCPの各樹脂を当社樹脂事業における先端材料の主要な柱のひとつとして位置づけ、事業のさらなる拡大を図ります。
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