産総研と昭和電工、電気絶縁性と柔軟性を両立させた絶縁用樹脂を開発
電気絶縁性と柔軟性を両立させた絶縁用樹脂を開発
-エレクトロニクス製品の小型軽量化、高性能化、長寿命化に貢献-
■ポイント■
・大型液晶ディスプレイから携帯電話まで、あらゆる電子部品に使われる絶縁保護膜用樹脂の新製造法を開発。
・樹脂原料として塩素化合物を用いないため、環境にやさしく、長期の電気絶縁性にすぐれた技術。
・新開発の硬化剤を組み合わせて、高い柔軟性を実現。
■概要■
独立行政法人産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という)環境化学技術研究部門【部門長 島田 広道】高選択酸化技術連携研究体佐藤一彦研究体長は、昭和電工株式会社【代表取締役社長 高橋 恭平】(以下「昭和電工」という)と共同で電子部品の小型軽量化、高性能化、長寿命化に貢献する革新的な[絶縁保護膜用樹脂]を開発した。
絶縁保護膜用樹脂は、大型液晶ディスプレイから携帯電話まであらゆる電子部品や配線の保護材料として使われている。これまでの製造技術では塩素化合物が不可欠であり、長期間の使用時に樹脂から塩化水素が発生して微細配線をショートさせ、絶縁性が損なわれるという問題点があった。これを防ぐために樹脂の耐熱性を上げると、材料の柔軟性が低下し、自由な形状の機器を実現するのに大きな支障となっていた。
今回、[過酸化水素]を用いるクリーンな酸化技術により、塩素化合物を使わない絶縁保護膜用樹脂材料の製造法を確立した。新開発の[硬化剤]と組み合わせることにより、従来よりも2桁以上の長期間の絶縁安定性と、高い柔軟性とをあわせ持つ革新的な絶縁保護膜用樹脂の開発に成功した。
製造の際の環境汚染物質の排出も無く、環境に優しい製造技術である。
この樹脂は、今後ますます進んでいく[プリント基板]のフレキシブル化と配線の細線化に対応し、次世代のエレクトロニクス社会を支える基盤素材になると期待される。量産化に先立ち,2007年からユーザーへのサンプル配布を開始する。
本技術の内容の一部は、平成18年11月6(月)~7日(火)に開催される第39回酸化反応討論会(於産総研つくば)および平成18年11月16日(木)~17日(金)に開催される第15回ポリマー材料フォーラム(於千里ライフサイエンスセンター)で発表される。
左図 新開発の絶縁保護膜用樹脂の応用例(*添付資料参照)
ポリイミドフィルム上に緑色で銅配線を被覆している材料に新開発の絶縁保護膜用樹脂を用いた。なお、柔軟性を強調するために、丸めて撮影した。
※ [ ]は別紙【用語の説明】参照
※ 参考図など詳細は添付資料参照