ノバルティス、パーキンソン病治療薬「Stalevo」で症状コントロールが有意に改善などと発表
ノバルティス(スイス)が発表しましたリリースの日本語要約をお届けします。
ノバルティスのパーキンソン病治療薬「Stalevo」
患者さんのQOLを改善し、長期的なベネフィットをもたらす
可能性を示す新たなエビデンスを獲得
・レボドパの生物学的利用能がさらに向上したレボドパ製剤であるStalevoによる初のQOL試験で、パーキンソン病の症状コントロールが有意に改善 1
・Stalevo治療の早期開始により、治療が遅延した場合には得られないベネフィットをもたらす可能性を確認 2
・余命を縮めQOLを有意に低下させる 4パーキンソン病の患者さんは、世界で630万人 3
2006年10月31日、京都発―パーキンソン病治療薬のエンタカポン、カルビドパ、レボドパの3剤の合剤であるStalevo*に関する新たなデータ解析の結果が、京都で開催されている第10回国際運動障害学会(the 10th International Congresss of Movement Disorders Society of Parkinson's Disease)で発表されました。新たなデータによると、Stalevoは運動症状の日内変動を全く伴わない、あるいは最小限の運動症状の日内変動を有するパーキンソン病患者の「生活の質」(QOL)を、既存のレボドパ製剤に比べて有意に改善することが示されました。さらに、レトロスペクティブ試験の新たな解析の結果、Stalevo治療を早期に受けた患者さんでは、症状コントロールが持続的に改善される、一方、治療開始が6ヵ月遅れた場合ではそのような改善は達成されないことも明らかになりました。
ロンドンにあるロイヤル・フリー・ホスピタル臨床神経科のアンソニー・シャピラ氏(Anthony Schapira, Department of Clinical Neurosciences, Royal Free Hospital, London)は次のように述べています。「これらのデータは、パーキンソン病の管理についての重要な洞察を提供するものであり、早期に治療を開始することによってベネフィットを得られる可能性があることを改めて強調しています。本日発表された試験結果は、向上したレボドパ製剤であるStalevo治療によって、パーキンソン病の患者さんのQOLと症状コントロールが有意に改善されるということを示しています。Stalevo治療を早期に開始することで得られた結果は非常に興味深いものであり、この分野における研究をさらに促進するでしょう」
* Stalevoは向上したレボドパ療法薬であり、レボドパ、カルビドパ、およびエンタカポンを含んでいます。
QUEST-AP 試験
QUEST-AP (QUality of Life Evaluation of STalevo Asia Pacific)は、機能障害を伴わない運動症状の日内変動が全くない、あるいはほとんどない、184名のパーキンソン病患者を対象として、患者さんのQOLに及ぼすStalevoの効果を従来のレボドパ療法と比較するために行われた、初めての多国籍間の無作為化二重盲検比較試験です。この試験はMDSオーストラリア臨床研究・試験グループ(MDS Australia Clinical Research & Trial Group)とノバルティス オーストラリアが共同で実施しました。治療開始後わずか12週間で、Stalevoは既存のレボドパ療法薬に比べて有意にQOL(感情、コミュニケーション、社会的関係、偏見など)を改善するということが示されています。
患者さんは2005年7月から2006年3月にかけて、オーストラリア(10施設)、台湾(3施設)、タイ(4施設)およびフィリピン(2施設)で登録されました。主要評価指標は患者のQOL改善であり、簡略化されたQOL質問表である「パーキンソン病質問表(PDQ-8)」によって評価されました。副次的な評価は「統合パーキンソン病評価尺度(UPDRS)」に基づいて実施され、日常生活行動の調査も含まれていました。試験結果は、Stalevo投与群はレボドパ投与群と比較して、治療開始後わずか12週でPDQ-8スコアが有意に改善(p=0.021)したことを示し、特に感情的な安定、社会的関係、コミュニケーション、および偏見の項目で顕著でした。さらにStalevo投与群では、日常生活行動(ADL : activities of daily life)において、治療開始後12週で優れた改善が見られました。これらの結果は、Stalevoがパーキンソン病の患者さんに有害な影響を及ぼしている機能と生活のいくつかの側面を、有意に改善するということを示すものでした。
欧州パーキンソン病協会(EPDA: European Parkinson's Disease Association)の援護者であるのマリー・ベイカー(Mary Baker)前会長は次のようにコメントしています。「患者と介護者にとって今回の試験結果は非常に喜ばしいものです。パーキンソン病は破壊的に進行していく病気ですが、パーキンソン病の感情的・社会的な側面の改善に実際に役立ち得るということを示しています。このデータは患者さんに真の希望となり、たとえパーキンソン病であっても良好なQOLを享受し続けることができる可能性を示すものです」
向上したレボドパ製剤 Stalevo療法:早期開始と開始遅延の比較分析
また、3つの二重盲検フェーズIII試験のさらなる統合解析5,6,7, の結果、Stalevo治療(エンタカポン、レボドパ、カルバドパ)を早期に開始した場合では、優れた症状コントロールが達成、維持される一方、遅く開始した場合ではそのベネフィットが得られないこと明らかになりました。
既に従来のレボドパ治療を受けている488名の患者さんを対象として、新たに5年間にわたるレトロスペクティブな解析を行いました。Stalevo治療を早期に開始した群と、6ヵ月後に開始した群について、UPPDRSの運動評価尺度を用いて長期間(5年間)にわたる有効性を評価した結果、早期に開始した群は、遅く開始した群と比較して5年以上にわたって優れた症状コントロールが達成、維持されていることが明らかになりました(p<0.05)。これらの結果と一致しているのは、ベースラインにおけるパーキンソン病の罹病期間で調整を行なった場合、UPDRS IIIスコアにおける治療群間の相違がさらに有意だったということです(p<0.001)。すなわち、従来のレボドパ治療を受けてきた患者さんに、早期にStalevo治療を導入することによって得られるベネフィットが、治療開始が遅れた場合には達成できないことが示されました。
これらの試験とその解析結果が全体として示唆しているのは、最適化されたレボドパ治療であるStalevo治療を早期に開始することによって、パーキンソン病の患者さんのQOLが有意に改善されるのみでなく、治療の開始が遅れると、患者さんが短期的および長期的に得られるはずの最大のベネフィットが制限されてしまうということです。
Stalevoについて
Stalevo (レボドパ/カルビドパ/エンタカポン)はパーキンソン病の治療薬であり、運動症状のwearing-off(日内変動)を経験しているパーキンソン病患者が適応となっています。StalevoはDDC(dopa decarboxylase)阻害剤(カルビドパ)とCOMT阻害剤(エンタカポン)の両方を含有しており、レボドパの分解を阻害することによって、脳へのレボドパ供給をより円滑かつ持続的にする効果があります。レボドパはパーキンソン病において産生が減少しているドパミンの代替となりますが、脳に到達する前に末梢で大部分が代謝されてしまいます。Stalevoは従来のレボドパに比べて症状を1日中コントロールする効果が高く3,4,5,6 その有効性は長期的治療においても維持されます。Stalevoはオリオン・コーポレーション・オリオン・ファーマによって開発され、ノバルティスとオリオン・ファーマによってそれぞれが権利を有する地域で販売されています。
パーキンソン病について
パーキンソン病は慢性・進行性の神経系疾患4であり、世界中で630万人3の患者さんが存在すると推定されています。病因は不明ですが、パーキンソン病の症状は基本的に黒質(脳内で運動をつかさどる部分)内のドパミン作動性細胞すなわちニューロンの退化によって引き起こされるものです。
症状は手足の震え、運動緩慢、手足のこわばり、歩行困難およびバランス感覚の悪化などです。病気が進行すると、通常、これらの症状が進行して患者さんの仕事や日常生活に悪影響を及ぼします。
上記の発表には、将来を見据えた記述が含まれています。Stalevoに関する将来の申請、あるいはポテンシャル等についての明示的、暗示的考察もこれにあたります。このような将来を見据えた記述については、既知または未知のリスク、不確実性、その他の要因が内在しており、明示・暗示を問わずStalevoについて予想を踏まえて述べられた将来の結果、成績、成果と実現する結果が相当程度異なることも考えられます。どの国においても、将来Stalevoの承認申請が計画どおり確実に行われるという保証はなく、申請されたとしても成功裏の承認について何ら保証されたものではありません。特にマネジメントのStalevoに関する期待は、多数のリスクによって影響を受けます。例えば、臨床データの追加分析、新たな臨床データ、予期しない臨床試験結果、予期しない行政の決定や遅延あるいは規制、特許やその他の知的財産権の入手もしくは継続維持の可能性、一般的な競合関係、政府・業界・一般社会からの圧力などです。詳細については米国証券取引委員会に提出したForm-20-Fをご参照ください。このように不確実な要素や予見できないリスクなどにより、将来の結果が現在の予想と異なる場合があることをご了解ください。本リリースは、現時点で明らかな情勢をもとに発信するものであり、将来における情勢の変化などによりその内容を改訂することはありません。
ノバルティスについて
ノバルティスは、医薬品とコンシューマーヘルスにおける世界的リーダーです。ノバルティス グループ全体の2005年の売上高は322億米ドル(約3兆5,433億円)で、当期純利益は61億米ドル(約6,755億円)、研究開発費は48億米ドル(約5,330億円)でした。スイス・バーゼル市に本拠を置くノバルティスは、約97,000人の社員を擁しており、世界140カ国以上で製品が販売されています。詳細はインターネットをご覧下さい。http://www.novartis.com
以上
参考文献
1. Movement Disorder Society of Australia Clinical Research & Trial Group and QUEST-AP Study Group. A randomized, double-blind study to compare the effect on quality of life of levodopa/carbidopa/entacapone (Stalevo(R)) with levodopa/carbidopa in patients with Parkinson's disease with no or minimal, non disabling motor fluctuations presented at Movement Disorders Society's 10th International Congress of Parkinson's Disease and Movement Disorders in Kyoto, Japan. Poster 437 2. Nissinen H, Kuoppamaki M, Leinonen M. Early vs. delayed initiation of levodopa/DCCI/entacapone leads to superior 5-year efficacy in Parkinson's disease patients, initially receiving traditional levodopa/DCCI therapy. Poster presented at Movement Disorders Society's 10th International Congress of Parkinson's Disease and Movement Disorders in Kyoto, Japan. Abstract 520
3. EPDA Website: http://www.epda.eu.com/patientGuide/LWP_1_01_whatIsPD.shtm last accessed 16.10.06
4. Anthony H. Timing of treatment initiation in Parkinson's disease. A need for reappraisal? Annals of Neurology. Feb 2006; 559-562.
5. Rinne UK, Larsen JP, et al. Entacapone enhances the response to levodopa in parkinsonian patients with motor fluctuations. Nomecomt Study Group. Neurology 1998; 51 (5): 1309-14.
6. PSG. Entacapone improves motor fluctuations in levodopa-treated Parkinson's disease patients. Parkinson Study Group. Ann Neurol. 1997; 42 (5): 747-55.
7. Poewe WH, Deutschl G, et al. Efficacy and safety of entacapone in Parkinson's disease patients with suboptimal levodopa response: a 6 month randomized placebo-controlled double blind study in Germany and Austria (Celomen study). Acta Neurol Scand 2002; 105 (4): 245-55.
8. Larsen JP, Worm-Petersen J, et al. The tolerability and efficacy of entacapone over 3 years in patients with Parkinson's disease. Eur J Neurol 2003; 10 (2): 137-46
9. Stocchi F. When and how to administer levodopa. Focus on Parkinson's disease 2006;18 (1): 2-4.
10. Olanow CW, Obeso JA and Stocchi F. Continuous dopamine-receptor treatment of Parkinson's disease: scientific rationale and clinical implications. Lancet Neurol 2006; 5: 677-87.
11. Poewe WH, Deuschl G, Gordin A, et al. Efficacy and safety of entacapone in Parkinson's disease patients with suboptimal levodopa
response: a 6-month randomized placebo-controlled double-blind study in Germany and Austria (Celomen study). Acta Neurol Scand. 2002;105:245-255.
12. Brooks DJ, Sagar H, and the UK-Irish Entacapone Study Group. Entacapone is beneficial in both fluctuating and non-fluctuating patients with Parkinson's disease: a randomised, placebo controlled, double blind, six month study. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2003;74:1071-1079.
13. Rinne UK, Larsen JP, Siden A, Worm-Petersen J, and the Nomecomt Study Group. Entacapone enhances the response to levodopa in parkinsonian patients with motor fluctuations. Neurology. 1998;51:1309-1314.
14. Parkinson Study Group. Entacapone improves motor fluctuations in levodopa-treated Parkinson's disease patients. Ann Neurol. 1997;42:747-755.
15. Larsen JP, Worm-Petersen J, Siden A, Gordin A, Reinikainen K, Leinonen M, and the NOMESAFE Study Group. The tolerability and efficacy of entacapone over 3 years in patients with Parkinson's disease.Eur J Neurol. 2003;10:137-146.
16. August 2006. Do we have a full ref for this