セイコーエプソン、10倍の書き換え回数を実現した「強誘電体メモリ」開発
高速・高耐久の強誘電体メモリ(FeRAM)を開発
従来比10倍*1への書き換え回数の飛躍的向上を実現
セイコーエプソン株式会社(社長:花岡 清二)は、次世代メモリのひとつとして考えられている強誘電体メモリ(FeRAM)において、従来の製品と比べて10倍の書き換え回数の向上を実現することに成功いたしました。この成果を、11月15日から開催される「Embedded Technology2006/組込み総合技術展」*2に開発参考品として出展、次世代の組込み用途にも使用できる技術として提案し、早期の実用化をめざしてまいります。
FeRAMはEEPROMよりも10万倍以上速く動作し、15,000分の1程度の消費電力に抑えられることから、主に現在ICカードやモバイル用途の不揮発性メモリとしての用途にととどまらず、組み込み用途の半導体メモリを置き換える可能性を秘めております。
当社ではかねてから、FeRAM用材料のひとつであるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)の構成元素のうちのチタンを、従来の限界とされていた量の20~30倍強のニオブに置き換えたオリジナル強誘電体材料(PZTN)を開発し、メモリとしての実用化に向けた技術開発を進めてまいりました。
このたび当社では、0.35umCMOS技術ベースに、新材料を用いることで、高耐久なFeRAMの開発に成功いたしました。この成果を「Embedded Technology2006/組込み総合技術展」に開発参考品として出展する事を通し、市場の反応、要望を探り、早期の実用化に向けて開発を加速させてまいります。
本FeRAMは以下の特徴を備えています。
1)書き換え回数、耐久性の向上
EEPROMと比較して10万倍*3以上、従来比10倍以上の書き換えが可能であり3ミリ秒に一回のデータ更新を10年間に渡って連続で実施できるレベルの耐久性を実現しています。
2)不揮発メモリでの高速化を実現
不揮発メモリでありながらEEPROMと比較して10万倍*4早い書き込みサイクル時間、100nsecを達成。
3)モバイル用途向け超低消費電力を実現
エプソン独自の低消費電力CMOS技術により、従来比10分の1から100分の1*5のスタンバイ電流を実現
【 開発したFeRAM技術の概要 】
・製造プロセス:0.35um
・電 源:3V単一電源動作
・構 造:スタックド構造
・最大集積度:512Kbitを予定(開発参考品は64Kbit)
・動作温度範囲:-40℃~85℃
・アクセス時間:75nsec
・書き込みサイクルタイム:100nsec
・動作電流:5mA
・スタンバイ電流:1uA
*1、*3、*4、*5:市販品のカタログ値に基づく当社調べ
*2:組込みシステム技術に特化した世界最大級の展示会
名称 Embedded Technology 2006/組込み総合技術展
会期 2006年11月15日(水)~17日(金)
会場 パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)
以上
■用語解説
・強誘電体メモリ FeRAM:Ferroelectric Random Memory/強誘電体を利用した不揮発メモリの一種。
・EEPROM:電気的に書き込み、書き換えができる不揮発メモリ。バイトごとの書き換えが可能。書き換えには通常より高い電圧を必要とする。書き換え回数に制限があり、数十万回程度が限界である。
・不揮発メモリ:電源を遮断してもデータが記憶されているメモリ。
・チタン酸ジルコン酸鉛(PZT):チタン、ジルコンおよび鉛の酸化物からなる強誘電体材料。圧電体としてプリンタのヘッド等に広く用いられている。
・PZTN:上記PZTを形成するチタンの一部をニオブに置き換えたエプソンのオリジナル材料。PZTより、安定な結晶構造を形成する。
・スタックド構造:トランジスタ電極とキャパシタ電極を直接コンタクトで結んだメモリセル構造。配線を介した従来の構造(プレーナー構造)に比べ、面積、製造工程を削減することができる。