新日鉄エンジなど、木質バイオマスを原料とする高効率ガスエンジン発電システムを開発
木質バイオマスを原料とする高効率ガスエンジン発電システムの開発
新日鉄エンジニアリング株式会社(代表取締役社長:羽矢惇)、中部電力株式会社(代表取締役社長:三田敏雄)、および新潟原動機株式会社(代表取締役社長:橋本伊智郎)の3社は、木質バイオマス等を燃料とした高効率ガスエンジンの開発・実証試験に成功しました。
3社は、新潟原動機(株)のガスエンジン(※1参照)を低カロリーガス用にチューニングし、平成18年5月より2ヶ月間、中部電力(株)新名古屋火力発電所構内にて実証試験を実施しました。
ガスエンジンの燃料ガスは、同発電所構内に建設した新日鉄エンジニアリング(株)製の噴流床型ガス化炉により木質チップを原料として製造した低カロリーガス(H2、COを主成分とする合成ガス)であり、ガス熱量の範囲を800~ 1,300kcal/Nm3(都市ガス(=11,000kcal/Nm3)の1/10程度)として運転データを収集しました。
本実証試験において、ガスエンジンは充分に安定した運転が可能であること、およびガス熱量1,300kcal/Nm3 の条件で発電効率は最大38%(ガスエンジン単体効率)が確認されました。これは、低カロリーガスを燃料とする同クラスのガスエンジンとしては世界最高の水準です。
なお、ガス化ガス利用で問題となるタールや煤塵による燃料供給設備・フィルター等の閉塞トラブルは発生しておらず、停止後の開放点検においても、タール・煤塵の影響は確認されませんでした。
バイオマスは再生可能エネルギーであり、化石燃料の代替や地球温暖化防止の観点からも注目されています。今後は木質バイオマスのみならず、食品残渣、建築廃材等の多様なバイオマスを対象に、高効率ガスエンジン発電システムを用いたエネルギーソリューション事業の拡大を目指していきます。
※1 新潟原動機株式会社と関西電力株式会社の共同開発ガスエンジン
新日鉄エンジニアリングのバイオマスガス化事業への取り組み
新日鉄エンジニアリングは、従来より新日本製鐵と共同で噴流床ガス化によるガス化技術の開発に取り組んでおり、既に、石炭(低圧)、廃プラスチックガス化の基本技術については実証試験を終え、商業プラント化の目処をつけております。バイオマスについても、石炭、廃プラスチックのガス化で培った技術をベースに商業化を目指した取り組みを進めてきており、今般、ガスエンジンと連動した実証試験を成功裏に完遂できたことから、バイオマスの受入れ、ガス化およびガスエンジンコジェネによる発電までの一連のプロセス実証が完了し、商業化への準備が整ったことになります。
生産したガスの用途としては、1)ガスエンジン等による発電、2)化学原料としてのH2、COの製造等、顧客のニーズに合わせた多様なソリューションを提案していく所存です。
当面は、木質バイオマスを中心に、食品残渣、建築廃材等の多様なバイオマスを原料として、10~200トン/日(水分50%の木質バイオマス換算)程度の規模のプラントをターゲットとして商業プラントの受注を目指して参ります。
新日鉄エンジニアリングの噴流床型ガス化炉の特長
(1)熱化学的変換技術
バイオマスを酸素不足の雰囲気中で部分酸化することにより合成ガスを製造する。
ガス熱量としては2,000kcal/Nm3 以下の任意の熱量のガスを製造可能。
C、H、O、[Ash] +O2 → CO + H2 + CO2 + H2O +[Ash]
木質バイオマス 合成ガス
(2)コンパクトで高効率な噴流床型ガス化炉による高い冷ガス効率〔*1〕を実現
冷ガス効率:70~80%
〔*1〕冷ガス効率=ガスとして利用出来るエネルギー/原料の保有するエネルギー
(3)ガス化炉内で1,100℃以上の高温状態、且つ還元雰囲気にて均一な反応を促進するため、後段のガス利用設備に悪影響をおよぼすタール発生を最小限に抑制できる。
(4)同上によりダイオキシンの発生を抑制
(5)廃プラスチックの混入にも対応可能(MAXはプラスチック100%)