富士経済、産業分野のエネルギー市場調査結果を発表
産業分野のエネルギー市場調査を実施
-47都道府県のエネルギー源を分析 自家発電装置の停止と系統電力への回帰が進行-
総合マーケティングビジネスの(株)富士経済(東京都中央区日本橋小伝馬町 代表取締役 阿部英雄03-3664-5811)は7~9月にかけて、脱石油、系統電力回帰などが進む産業分野のエネルギー需要動向について調査を行い、その結果を報告書「エネルギー需要家別マーケット調査要覧2006 下巻:産業分野編」にまとめた。今回の調査で需要家別3分野すべてのエネルギー需要について調査を終えた。7月発表の「住宅分野編」におけるオール電化住宅市場の動向、8月発表の「業務分野編」における省エネ関連ビジネスの動向と併せ、エネルギー需要家側からのマーケット分析を行い、住宅・業務・産業の各需要家分野の注目動向をまとめた。
<調査結果の概要>
産業分野におけるエネルギー源構成の変化
1990年度
1980年代半ば頃までは、オイルショック、イラン・イラク戦争の影響による原油価格高騰の経験から、石炭へシフトしたが、その後石炭は13%に減少した。石油系燃料は、全体の38%を占め、基礎素材型産業から加工組立型産業へと産業の中心が変化したことにより、かつての50%以上から減少に転じている。一方の電力は、製造工程の自動化や加工組立型産業の増加によって、44%までエネルギー消費に占める割合が大幅に増加した。
2004年度
石油系燃料は、1990年度以降も引き続き減少し、35%となった。原油価格高止まりの影響により、今後はさらに減少していくと思われる。また、電力の比率も44%に上昇して、今後もこの傾向が進展すると予測される。ガス系燃料は7%ながら各エリアで都市ガスのインフラ整備が進むため、増加傾向が続くと予測される。石油代替の電力・ガス系燃料の構成比は50%を超えており、04年度以降もこの傾向は継続し、さらに加速する。
2010年度予測
原油価格高止まりの影響により、電力系比率はさらに増加しガス系燃料も増加する。また、工場の電化・ガス化が進展する。
これまでの経過とこうした環境を踏まえて、今回の調査ではエネルギー需要の有望業種として以下の5業種を抽出した。
輸送用機械器具製造業、一般機械器具製造業、電気機械器具製造業、食料品製造業、化学工業の5業種の内、前3業種は加工組立型産業である。エネルギー源における電気・ガスの構成比が高い。また食料品製造業も、ガスの占める割合が高い。
2010年度にはこれら業種が更に進展して、電力及びガス比率が増加し、石油系燃料の比率の低下が予想される。さらには、近年の原油価格高止まりから、これまで石油系燃料を使用していた施設も、エネルギー源のガス化(燃料転換)、自家発電の系統回帰需要が増加している。こうした要因により2010年度におけるエネルギー源の構成は、電力・ガスの比率が高まり、電化・ガス化がさらに進展していく。
<調査の背景>
経済産業省発表のエネルギーバランス表によると、産業分野のエネルギー消費量は、4分野のなかで最も省エネ・効率化が進んでおり、ほぼ横ばいで推移している。これに業務分野・住宅分野・運輸分野のエネルギー消費量増加の影響が加わり、1985年頃から産業分野が占める構成比は50%を切る水準に低下した。エネルギー消費の中心は、鉄鋼業、紙・パルプ、化学工業といった基礎素材型産業であり、全体の70%程度を占めている。しかし、製品出荷額・事業所数などは加工組立型産業が圧倒的多数を占めている。
現在エネルギーソリューションビジネスの主要ターゲットは、これら加工組立型産業である。自家発電設備の導入は、1970年代は基礎素材型産業が中心であった。その後、機器の高効率化や機種のラインナップ増加が進むにつれ、対象施設は小規模施設へとシフトした。1995年4月の電気事業法改正もあり、自家発電設備やESCOなど省エネビジネスのターゲットは加工組立型産業(一部生活関連型産業も含む)となり現在の市場構造が形成された。
現在、これらの施設において、原油価格の高止まりへの対応策、京都議定書対応のCO2排出量削減、企業PRのための環境対応などに伴う自家発電設備の停止・系統電力回帰やLNGの導入など、脱石油、電化・ガス化といった動きが加速している。とりわけ、現代産業の中核を担う輸送用機械器具製造業、電子部品・デバイス、一般機械器具などの業種においては、大手企業を中心にこうした動きが加速しつつある。
このような環境変化による今後の各エネルギー源の動向や有望業種・有望エリアの状況などを明らかにすることを目的として調査を行った。さらには、産業分野のエネルギー市場を取り巻く重要な要素である、企業立地状況、関連インフラの状況についても考察を試みた。
<有望業種に対する自家発電設備の導入>
今回の調査で、輸送用機械器具製造業、一般機械器具製造業、電気機械器具製造業、食料品製造業、化学工業を大規模エネルギー需要業種として抽出した。これらの業種に対するエネルギービジネスとして注目されたのが自家発電設備であった。当初は基礎素材型産業を中心に導入が進んだ。その後、機器の効率化や自家発電サービス事業者の営業拡大を背景に加工組立型産業においても導入率、導入数で上昇した。
自家発電の原動機であるST(蒸気タービン)は基礎素材型産業を中心に導入が進んでおり、GT(ガスタービン)については導入数が「化学工業」で特に高く、次いで加工組立型産業に属する業種群が続く。DE(ディーゼルエンジン)においてもST、GTと同じく「化学工業」で多数の導入実績がある。GE(ガスエンジン)では「鉄鋼」「輸送用機械器具」において導入数が比較的高い。今後は環境対応・エネルギー調達のリスク分散を背景としたLNG輸入の増加やそれに伴うガスインフラの整備、電力・石油・ESCO会社等によるLNG・ガスの供給も盛んになってきており、GEは増加が見込まれる。
(04年度までのエリア別の導入状況)
中部エリアが318件(構成比:約26%)でトップとなり、関東エリアが213件(同:約18%)、関西エリアが181件(同:約15%)となっている。これまで自家発電市場において普及の牽引役となっていたエネサーブ、テス・エンジニアリングの導入実績も中部エリアに多い。これは中部エリアではトヨタ自動車の関連施設において、カイゼンの思想の下、コスト削減を図る意識が高く、新たな施策が受入れられ易かったことが要因の一つと考えられる。この意味においては燃料転換の流れ(重油→ガス)の中で大きなガス普及ポテンシャルを有するエリアとなる。
(2006年度を含むここ3年間の自家発電の電力系列回帰)
近年の原油価格の高止まりに伴い、安価な重油を燃料とした自家発電設備は、発電単価の上昇が問題とされるようになった。一方、系統電力は原子力・火力・水力など多様な燃料・発電方式を組み合わせて原油高の影響を受けにくく、電力単価は下降傾向が続いている。系統電力と比較して発電単価メリットを得ることが困難になるケースが見られるようになった。
各電力会社へのアンケートによると、産業・業務分野で、自家発電設備の稼動を停止し系統電力からの買電に切り替える、系統回帰需要が増加している。原油高と呼応するような形で増加しており、03年度から発生し始め、04年度には328件、05年度には972件発生した。06年度は、4~6月の間で454件に上っており、件数は加速度的に増加している。最近の調査では06年度上期(4~9月)の戻り需要は833件に上っている。
10電力会社中、最も多いのは九州電力であり、10電力の期間累計の17%を占めている。04年度に約10%、05年度には15%、06年度に入ってからは約24%のシェアを占めるまでに増加している。また、06年8月にはオンサイト発電最大手のエネサーブが同事業からの撤退を発表した。同社は中部・関東・東北エリアに多数の顧客を保有している。そのため、これら需要家の系統回帰需要がさらに加速して06年度末にかけてピークに達することが予想される。
<注目される県別エネルギー消費動向>
今回、47都道府県の産業構造と自家発設置導入動向を調査した。その中から、エネルギービジネスの面から、注目される県を取り上げる。
茨城県
高度成長期以降、鹿島臨海工業地帯の開発や筑波研究学園都市の建設、ひたちなか地区の開発など大規模開発が進められてきた。科学技術の面では、全国でも最先端の産業が育成されている。06年「元気いばらき戦略プラン」で5年間の総合計画を策定した。バイオ、ナノテク、半導体関連産業、ロボット、自動車などの機械産業を戦略分野産業に位置づけて育成、つくば市を中心に最先端科学技術拠点を形成し、国内有数の素材生産基地作りを行う。2010年には千葉~鹿島の都市ガスパイプラインが完成しガス化に拍車がかかる。
自家発電設備は、80、90年代に盛んに導入され、全体の半数以上を占めている。DEが57%、STが27%、そしてGTが16%となっており、化学工業の導入が最も多くなっている。鹿島臨海工業地帯では、共同火力発電設備を保有しており、そこからの電力供給により自家発電設備保有需要家は少ない。
栃木県
本田技研工業、富士重工業、日産自動車など自動車メーカーが多いため、産業構造として自動車部品を製造する中小企業の割合が高い。北関東エリアは、これまで都市ガス未整備地域が多いいわゆる「白地エリア」であった。近年はパイプライン整備が進みつつあることから、都市ガスの消費量が増加しており、02年に270,638立方メートルであった消費量が04年には533,961立方メートルとほぼ倍増している。11年には北関東自動車道 太田~栃木県境間が開通予定であり、交通インフラの整備による産業の活発化が期待される。
自家発電設備は90年代の導入をピークに、原動機種別ではDEが70%以上と圧倒的多数を占めている。しかし、近年の原油価格高騰により、石油系燃料を使用する自家発ユーザーの自家発稼動停止が増加していること、都市ガスパイプライン(栃木ライン)敷設完了による東京ガスの営業攻勢の活発化などが要因となり、今後はGEのシェアが拡大していくことが予想される。
大分県
05年初めに本格操業したダイハツ大分工場やキヤノン大分事業所などで、生産体制の拡大が進んでいる。近年の同県の設備投資額は九州エリアのトップとなっている。自動車関連産業への新規参入事業者を支援することで、県内の自動車関連産業の振興を進める。
自家発電設備は原動機種別ではSTが40%強と最も多く、GT、DEが次ぐ構成となっている。1990年代の導入が最も多く、1980年代・1970年代以前がそれに次ぐ。業種別に見ると、鉄鋼、パルプ・紙・紙加工品、窯業・土石製品などの素材系産業はSTやGTなどを多く導入している。
<調査概要>
調査目的 県単位で産業分野施設のエネルギー使用状況・設備動向・関連インフラ動向についての分析及び整理を行ない、その上で全国レベルでの現状、及び将来動向の把握を目的とした。
調査期間 2006年7月~9月
調査方法 弊社専門調査員による各事業者、業界関係者へのヒヤリング調査を中心に、公開データ・文献調査を併用した。
以上
資料タイトル:「エネルギー需要家別マーケット調査要覧2006下巻:産業分野編」
体裁 :A4判 279頁
価格 :95,000円(税込み99,750円)
上・中・下巻セット価格 270,000円(税込み283,500円)
3巻セット+CD-ROM版価格 285,000円(税込み299,250円)
調査・編集 :富士経済 東京マーケティング本部 第四事業部
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