サカタのタネ、F1品種の新シリーズ「よく咲くスミレ」10色を開発
新シリーズ開発
パンジーの華やかさとビオラの強さを併せもったまったく新しいコンセプトの画期的なパンジー・ビオラ
F1品種の新シリーズ『よく咲くスミレ』10色を開発
2007年7月から種子販売を開始、10月より本格的に花苗の市場出荷される予定
サカタのタネでは、パンジーの華やかさとビオラの強さを併せもったF1品種の新シリーズ『よく咲くスミレ』10色を開発いたしました。新シリーズ『よく咲くスミレ』は、小さな花がたくさんつき、寒さや雨、風に強く育てやすいビオラ本来の性質、それに花色が華やかで豊富というパンジーの性質、さらに秋から春まで咲き続ける当社育成パンジーがもつ性質を併せもつまったく新しいコンセプトのパンジー・ビオラです。同シリーズ名は、花径4cmほどの小輪の丈夫な花をけなげにいつでも実によく咲かせるその開花習性のよさとパンジーでもビオラでもないまったく新しいコンセプトの花の意味を込め、あえて「スミレ」の名を加え命名したものです。各色の品種名は「よく咲くスミレ・クランベリー」「同ミルクセーキ」「同ブルーハワイ」「同スイートポテト」など、花色からイメージされる果物やドリンク、スイーツの名前をつけ、親しみやすいネーミングとしました。
同新シリーズは、生産者には、通常わい化剤を用いなくても草丈がコンパクトに保たれる特性による生産コストの削減や無理な早まきをしなくてもよく咲くので、8月中下旬にまいて10月上中旬の出荷適期に期待感のある花苗を出荷できるなどのメリットがあります。流通小売業には、草丈のコンパクトによる店もちのよさが販売ロスの削減につながり、さらに、造園緑化業者には、小輪で分枝性が極めてよく多花性のため面倒な花摘みの手間が軽減され、従来のビオラより花色が華やかなためより一層魅力的な植栽が可能です。そして、消費者には、丈夫でかわいい色合いの花を、冬を通し秋から春まで楽しめるメリットがあります。
なお、『よく咲くスミレ』シリーズの種子販売は2007年7月から開始する予定(現時点で価格は未定)で、また、花苗の一般市場での流通は10月から本格化する予定です。
ビオラ(Viola 学名:Viola×wittrockiana)は、花色が豊富なスミレ科の耐寒性一年草で、一般的に花径4cm以下のパンジー(Pansy)の小輪品種が「ビオラ」と呼ばれています。
パンジーは花が大きくゴージャスで花色が豊富で華やか、ビオラは花が小さいもののたくさんの花を咲かせ(多花性)で、本来、丈夫で育てやすいという特長をもっています。近年、丈夫なビオラが注目され、ビオラの市場への出荷割合は2001年が15%だったのに対し、2006年は22%にまで伸び※1、着実に普及してきています。逆にパンジーは、その生産量を次第に低下させているとはいえ現在でも78%のシェアがありその華やかさには根強い人気があるともいえます。
このような状況に対し、当社では、パンジーの華やかさとビオラの強さという双方のよい特性を併せもった今までにない高品質の新品種開発に着手し進めてきました。さらに、開発過程で当社が得意とする秋・冬・春のスリーシーズンを休まず開花するロングラン(LR)※2性の付与や雨冬の寒さにも傷みにくい強い花弁をもたせるなど、長年の育種研究開発を経て完成したのがF1品種の『よく咲くスミレ』シリーズです。
当社の育種テーマのひとつである「消費者の方々に本当にご満足いただける高い品質の実現」を掲げ、研究開発の段階から鉢植えや庭植えなどさまざまな植栽方法や、冬場の野外の寒さなど厳しい気温変化など、消費者の方が実際に花を楽しまれる場合に想定される状況をシミュレーションしながら育種を実施しました。それにより、一般消費者がさまざまな環境下でガーデニングする際に安定して花を咲かせるための性質を保持させることに成功しました。
『よく咲くスミレ』シリーズの花色は、全部で10色あり(今後とも順次新色を開発予定)、花径4cmほどのかわいらしい小さな花をたくさん咲かせます。栽培は、8月上~中旬まきで10月上~中下旬に出荷、8月下旬~9月上旬まきで11月上旬~12月上旬に出荷となる早生種ですが、草姿をコンパクトに保ち、かつ基部分枝性が抜群によく初期から同時開花性が極めてよい(写真)ので、通常の環境下ではわい化剤を使用しなくてもある程度の早まきに対応できる性質をもっています。
花苗出荷時の適合ポットサイズは9~12cmとなっており、コンパクトな性質を生かして9cmポットでかわいらしく仕立てたり、性質の強さを生かして一株で12センチポットで仕立てたり、用途に応じて幅広い花苗生産ができます。
現在、パンジー、ビオラ合わせて世界で約1,700品種が流通し、日本でも1,300品種以上の品種が紹介されています。2006年度の農林水産省の「平成17年産花きの作付(収穫)面積及び出荷量」によると、日本では鉢もの花壇苗は約8億ポット出荷され、そのうち約24%がパンジー、ビオラ類です。これらのことから、日本のみならず世界で一番愛されている植物はパンジーやビオラといえます。今回、新開発した『よく咲くスミレ』シリーズは、このように全世界に巨大な規模をもつパンジー、ビオラ市場に向けた2007年度における当社最大の戦略品種であり、国内ならびに海外に向け積極的に販売展開を推進していく計画です。
『よく咲くスミレ』シリーズ10色のラインナップ
品 種 品種特性
クランベリー 黒目(ブロッチ)のないクリアなスカーレットカラー
ピーチ 小さな黒目(ブロッチ)が入るピンクからローズのシェードカラー
マーマレード クリアタイプで人目を引く濃く鮮やかなオレンジカラー
パイナップル 黒目(ブロッチ)がない黄色で冬のメインカラー
レモンスカッシュ 上弁が薄く花弁が濃い鮮やかなライトイエローカラー
ミルクセーキ 白系の中では比較的寒さに強い白に黄色目で色幅が広い
ソーダ 白地に外縁に向かうにしたがい青さが増すフラッシュカラー
ブルーベリーパイ 黄色地に外縁部がパープルなユニークなカラー
スイートポテト 上弁がパープルで花弁がイエローのバイカラー
ブルーハワイ 草姿はよりコンパクトで、小さな黒目(ブロッチ)が入る青色
種子販売および花苗の出荷予定
種子:2007年7月から全国の種苗店ルートで販売開始予定
※種子販売価格は現時点では未定
花苗:2007年10月から市場を経由して全国の種苗店、園芸店、ホームセンターなどを通じ発売開始予定
※1:日本花普及センターの大田花き、FAJ,豊明、なにわ花市場の各市場の出荷数データによる。
※2:ロングラン(LR)
本来、パンジーの開花習性は、冬の低温条件で花芽が形成され、春の高温・長日で花を咲かせることから、パンジーは春の花であった。しかしながら、1960年代、当社が、花芽の形成に低温を要求しないパンジーを開発したことから、今ではパンジーはすっかり秋の花になり、秋植え花壇用の商材として広く普及している。それでも真冬の短日期は、花数が減少あるいは止まってしまうなどの問題が残ったが、当社ではさらに短日期でも開花が休まないパンジーでは秋・冬・春の3シーズン開花するロングラン(LR)品種を開発した。
読者の方からの『よく咲くスミレ』シリーズに関するお問い合わせ先
株式会社サカタのタネ 花統括部 電話045-945-8804