ルネサステクノロジ、暗号化・復号化機能を搭載した32ビットSuperHファミリを製品化
業界初、IP放送の著作権保護と宅内ネットワークの著作権保護(DTCP-IP)に対応したSuperH(TM)ファミリ「SH7652」を製品化
- イーサネットコントローラを内蔵し、HD(High Definition)デジタルコンテンツを2チャネル同時にネットワーク伝送が可能 -
株式会社ルネサス テクノロジ(本社:東京都千代田区、会長&CEO 伊藤 達)は、このたび、ネットワーク機能を搭載したデジタルAV機器やOA機器向けに、今後開始が予定されている国内IP放送(注1)で採用予定の著作権保護機能及び宅内配信時の著作権保護規格であるDTCP-IP(注2)の両方に対応した暗号化/復号化機能を業界で初めて搭載し、イーサネットコントローラを内蔵した32ビットSuperH(TM)(注3)ファミリ「SH7652」を製品化しました。2007年1月からサンプル出荷を開始します。
本製品はDTCP-IP機能を搭載した当社従来品「SH7650(133MHz動作)」にIP放送で採用予定の著作権保護機能を追加、各種周辺機能を充実し、さらに約1.5倍の200MHz動作に高速化した製品です。
本製品の特長は、以下のとおりです。
(1)IP放送で採用予定の著作権保護機能と宅内配信時の著作権保護機能(DTCP-IP)、イーサネット接続機能を1チップ化し、HDデジタルコンテンツのセキュアなネットワーク伝送が可能
本製品は、IP放送等のコンテンツを復号化するためのエラー訂正機能や暗号復号回路を搭載しています。また、宅内でコンテンツ配信をするときに使用されるDTCP-IP規格に準拠した機能を搭載しています。これらの著作権保護のための認証機能とコンテンツ暗号化/復号化の機能を本製品とともに提供予定のファームウェアを使用し、実現します。
これらの機能により、ホストCPUに負担をかけずに著作権保護の処理とネットワークの処理を1チップで可能です。加えて、WM DRM10(注4)の著作権保護にも対応しています。
(2)高速イーサネットコントローラを搭載し、HDデジタルコンテンツを2チャネル同時伝送可能
IEEE802.3規格(注5)に準拠したメディアアクセスコントローラ(MAC(注6))を搭載しており、10M/100Mbps(bit per second)のイーサネットLANに接続が可能です。また、処理性能の向上によりIP放送等の著作権保護処理やDTCP-IP制御を行い、HDデジタルコンテンツを2チャネル同時に伝送することが可能です。
(3)USB、SDメモリカード(注7)、シリアルサウンドインタフェース等の充実したインタフェース機能を内蔵
USB2.0 High Speed に準拠したUSBホスト/ファンクションモジュールやSDメモリカードホストインタフェースを搭載し、メモリカードや無線LANモジュールとの接続が可能です。また、シリアルサウンドインタフェースを搭載しており、高性能なCPUによってMP3、WMA(Windows MediaR Audio)などのオーディオデータを余裕もって再生することが可能です。
また、本製品を他のマイコンやCPUに容易に接続できるホストインタフェース機能を搭載しています。本機能により、システムの制御を行うメインマイコンなどから、本製品をSRAM相当としてデータの送受が可能です。これにより、イーサネットコントローラとして制御することができるため、ネットワークに関係した機能開発を独立して行え、機器の開発を容易にします。
< 製品化の背景 >
近年、DLNA(注8)などの規格に対応した家庭内の機器をホームネットワークに接続する取り組みが進んでいます。また、インターネットを使ったデジタル放送サービス、いわゆるIP放送の開始が予定されており、家庭の内外でデジタルコンテンツの配信が始まる見込みです。
一方、著作権保護されたデジタルコンテンツをネットワーク経由で転送を行うためには、ネットワーク上のコンテンツデータを不正アクセスから保護するために、機器間の認証とコンテンツの暗号化処理が必須となります。
当社は、今まで、宅内配信時の著作権保護規格であるDTCP-IP対応機能とイーサネットコントローラを内蔵した「SH7650」を製品化しています。今回さらに、今後拡大すると見込まれるこのような市場向けに、IP放送等の著作権保護機能を追加し、宅内コンテンツ保護規格のDTCP-IP対応機能と、イーサネットコントローラを内蔵した32ビットSuperHファミリ「SH7652」を製品化しました。
< 製品について >
「SH7652」は、32ビットのCPUコア「SH-2A」に倍精度FPUを搭載した「SH2A-FPU」とイーサネットコントローラを内蔵しています。最大動作周波数が200MHzで、480MIPS(million instructions per second)の処理性能を実現しており、著作権保護対応機能を備えているため、ネットワーク機能を搭載したデジタルAV機器やOA機器に最適です。
本製品の著作権保護機能は、ハードウェアの暗号復号回路部、および暗号復号回路部の制御とコンテンツデータの転送を制御するファームウェアで構成しています。
「SH7652」はMPEG-2(注9) TS(Transport Stream)及びMPEG-2 PS(Program Stream)のフォーマットを高速転送可能な動画像ストリームポートを2チャネル内蔵しており、本ポートはMPEG-2のエンコーダ/デコーダ用チップに接続できます。これにより、ネットワーク経由で受信した暗号コンテンツを復号化し、MPEG-2 TSフォーマットの動画像データとしてMPEG-2のチップに高速転送することが可能です。また、内蔵された暗号回路によってコンテンツデータを高速に暗号化してネットワーク上に送信することで、HDデジタルコンテンツを2チャネル同時にセキュアなネットワーク転送を可能にします。
また、本製品は豊富な周辺機能を搭載しています。10/100MbpsのイーサネットLANと容易に接続できるイーサネットコントローラを1チャネル搭載しています。本イーサネットコントローラは、IEEE802.3に準拠したMAC層を内蔵し、加えて、TCP/IPのチェックサムをソフトウェアの介在なしに自動的に演算するアクセラレータも内蔵しているため、CPUの負荷を軽減します。
さらにUSBやSDメモリカードホストインタフェースを内蔵しており、外部ストレージや無線LANモジュールなど外部デバイスとの接続が可能です。また、デジタルAV機器やOA機器で使われるシリアルサウンドインタフェースやI2Cバスを内蔵しているため、システム設計が容易で、加えて、機器制御用のメインマイコン等との接続を容易にするホストインタフェース機能を備えています。本インタフェースは、16ビットバスでメインマイコンやCPUと本製品との間を接続し高速なデータやコマンドの通信を実現します。さらに本インタフェースを使用することにより、機器本来の機能開発とネットワーク接続機能の開発を並行して行え、開発期間の短縮を図れます。
これらの機能により、メインマイコンやCPUに負荷をかけずにネットワーク処理と複数の著作権保護処理を1チップで実現し、HDデジタルコンテンツを2チャネル同時に配信することが可能です。
本製品に対応したIP放送やDLNA対応のミドルウェアは、株式会社ユビキタス、エルミック・ウェスコム株式会社、株式会社アクセスなどからサポートされる予定です。
パッケージは、240ピンCSP(13mm×13mm)を採用しています。
また、オンチップデバッグ機能を搭載しており、エミュレータは、小型のPCカードサイズの「E10A-USB」を使用できます。
本製品は、11月15日から17日の期間、パシフィコ横浜で開催している「Embedded Technology 2006/組込み総合技術展」に出展します。
今後、更なるCPU性能の高速化や無線LAN対応、周辺機能強化など、イーサネットコントローラ搭載製品のラインアップ拡充を図ります。
■ 注記
(注1)IP放送はTV放送をインターネット等経由して配信する放送です。
(注2)DTCP-IPはDigital Transmission Content Protection over Internet Protocolの略で、DTLA(Digital Transmission Licensing Administrator)により規格化されたIPネットワーク上のコンテンツ保護のための規格です。尚、本LSIのDTCP-IP対応に関する部分は、株式会社日立製作所が開発した技術を用いて、当社が製品化したものです。
(注3)SuperH(TM)は、(株)ルネサステクノロジの商標です。
(注4)WM DRM10はWindows Multi Media DRM10の略で、Microsoft Corporationによって開発されたデジタル著作権技術です。Microsoft、Windows、Windows Mediaは米国Microsoft Corporationの米国及びその他の国における登録商標または商標です。
(注5)IEEE802.3: IEEE802は、IEEE(米国電気電子技術者協会)が、LANの標準化を目的に発足した委員会名。IEEE802.3は、CSMA/CD方式の10M/100MbpsのイーサネットLAN仕様規格。CSMA/CDは、Carrier Sense Multiple Access with Collision Detectionの略で、送信前にキャリアの有無を検出し、送信中に衝突を検出すると一定時間待機して再送信します。
(注6)MACはMedia Access Controlの略です。データリンク層内の下位副層で、フレームの送受信方法、フレームのフォーマット、データの誤り検出などを規定しています。
(注7)SDメモリカードは、3C (松下電器産業株式会社、株式会社東芝、SanDisk Corporation)で原型規格化、SDA(SD Card Association)にて発展的に拡張規格化されている小型メモリカードです。
(注8)DLNA(Digital Living Network Alliance)は、PCやデジタル家電機器などを相互接続するためのガイドラインを策定している業界団体です。 DLNAガイドラインは、DLNAにより策定されたホームネットワーク環境での機器間の相互接続を行うためのガイドラインです。
(注9)MPEG-2(Moving Picture Experts Group phase 2)は映像データの圧縮方式でMPEG規格の一部です。
* その他記載の製品名、会社名、ブランドは、それぞれの所有者に帰属します。
■ 応用機器例
ネットワーク接続機能を搭載する以下の機器
●デジタルAV機器:DVDレコーダ、薄型テレビ、オーディオコンポ等
●OA機器:プリンタ等
■ 価格
製品名 (型名) SH7652 (R5S76520B200BG)
最大動作周波数 200MHz
パッケージ 240ピンCSP(13mm×13mm)
サンプル価格(円)<税込> 2,000
■ 製品提供の条件について
本製品の購入に際しては、DTLA(Digital Transmission Licensing Administrator)のライセンスを取得済みであることが必要です。
■ 仕様
(※ 関連資料を参照してください。)
< お客様からの問い合わせ先 >
株式会社ルネサス テクノロジ
汎用製品統括本部 マイコン事業部 MCU製品技術部
〒100-0004 東京都千代田区大手町二丁目6番2号(日本ビル)
電話 03(5201)5214 (ダイヤルイン)
以 上