住商ファーマインターナショナル、血漿増量剤「Hextend」の第II相臨床試験を開始
住商ファーマインターナショナルが血漿増量剤Hextend(R)の第II相臨床試験を開始
住友商事グループの住商ファーマインターナショナル株式会社(社長:佐々木雅啓、本社:東京都中央区晴海、以下SPI)は、BioTime Inc.,(Office of the President: Judith Segall, Hal Sternberg, Harold Waitz, 本社:米国カリフォルニア州、以下BioTime)から導入した血漿増量剤Hextend(R)を、丸石製薬株式会社(社長:井上慶一、本社:大阪市鶴見区、以下丸石)と共同開発しています。このたび、第I相試験において本邦健康成人男性に対する本剤の安全性と薬物動態学的ならびに薬力学的特性が確認されましたので、Hextend(R)の有効性及び安全性を検討することを目的として循環血液量不足に対する治療が必要な手術患者を対象とした第II相臨床試験を開始いたしました。
血漿増量剤は、手術や外傷による出血などによって循環血液量が不足した患者に投与して循環血液量を回復・維持させる目的で使用される輸液製剤で、代用血漿剤とも呼ばれています。「血液製剤の使用指針」(改定版)(平成17年9月厚生労働省医薬食品局血液対策課)によると、循環血液量が不足した際には、まず細胞外液系輸液薬(乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液など)が使用され、出血量が増えるにしたがって人工膠質液、アルブミン製剤が投与されることが推奨されています。
Hextend(R)は膠質物質として高分子のヒドロキシエチルデンプンを主成分とした人工膠質液で、1999年から米国で販売されています。高分子のヒドロキシエチルデンプンを含有することによって循環血液量維持作用の持続時間が長くなることが期待され、血漿に近い組成の乳酸電解質輸液であるため血液凝固系や腎機能に及ぼす影響が小さい、安全性の高い血漿増量剤として認められております。日本では低分子膠質物質を含有する人工膠質液が市販されていますが、循環血液量の長時間維持が可能な血漿増量剤が待望されています。
1999-2002年の日本麻酔科学会の認定病院(約800施設)に対する調査(日本輸血学会雑誌, Vol. 51. No.1 51(1): 23-31, 2005)において麻酔科医が関わった手術は約430万件と報告されており、少なくとも年間平均100万症例程度が本剤の対象患者と考えられます。Hextend(R)は、安全に長時間循環血液量を維持できることが期待されていることから、多くの循環血液量不足の症例において幅広い使用が予想され、血液製剤の使用量削減への貢献も期待されます。
SPIは住友商事の100%子会社で、医薬品研究開発関連の特化型商社として、世界最大の研究用遺伝子・細胞バンクである米国ATCC社 対日総代理店活動、HTS(High-Throughput Screening=創薬につながる化合物を高速で選別する技術)用化合物ライブラリー販売等の創薬研究の支援、また、国内外ベンチャー、製薬企業などの有望な医薬品(候補化合物)、基盤技術等のライセンス・共同研究案件の斡旋・仲介サービスを提供し、高い実績をあげてきました。そして、2005年4月の薬事法改正に伴って、製品を流通させるための品質保証体制および安全管理体制を確立し製造販売業許可を取得することにより、製造設備を持たなくとも医薬品を上市することが可能になることを見据え、2004年4月に医薬開発部門を発足させ、自らの手で医薬品の開発を実施することといたしました。SPIは、欧米で販売され医療ニーズがありながら、市場性等の観点から国内大手製薬企業が開発しないような医薬品を開発対象とし、医療現場で求められている医薬品をいち早く医療現場に届けることによって医療環境の向上に貢献し、医療・医薬産業界に確たる地位を築きたいと考えています。
Hextend(R)はSPIの開発第一号品となります。丸石との共同開発では、日本人での安全性および薬物動態を確認する第I相試験ならびに安全性及び有効性を探索的に検討する第II相臨床試験をSPIが主体で実施し、実際の臨床現場に近い形で有効性と安全性を検証する第III相臨床試験は丸石とSPIが共同で実施する予定です。
丸石は、1888年(明治21年)の創業以来、日本薬局方医薬品のリーディングカンパニーおよび殺菌・消毒関連領域のスペシャリティーファーマとして常に高い品質の製品を提供してきましたが、1990年には世界に先駆けて我が国で全身吸入麻酔剤セボフルランの承認を取得しました。今やセボフルランは100か国を越える国で使用される全身吸入麻酔剤のトップシェア製品に成長し、以来手術・麻酔関連領域のスペシャリティーファーマとしても積極的に研究開発を進めています。
BioTimeは、1990年に米国カリフォルニア州に設立されたベンチャー企業で、血漿増量剤や組織保存液、低温手術時の血液置換液などを開発しています。Hextend(R)はBioTimeの第一号品で、米国・カナダにHospira社が、韓国にCJ社が販売しています。
なお、SPIは今後も医療ニーズがありながら市場性等の理由で日本での開発が滞っている有望な医薬品を調査・探索し、導入していち早く医療現場へ届けるべく開発を進め、医療環境の向上に貢献いたします。
以 上