STマイクロ、生体微粒子の調製と操作が可能なプロトタイプ・マイクロチップを発売
STマイクロエレクトロニクスは、
生体微粒子の調製と操作が可能なプロトタイプ・マイクロチップを発表
生体微粒子を選択的に収集・移動させるシリコン・チップにより、
低コストな臨床診断用の自動サンプルの調製を実現
世界をリードするマイクロ流体デバイスのサプライヤであるSTマイクロエレクトロニクス(NYSE: STM、以下ST)は、特定の生体微粒子を収集および操作することができる試作デバイスを開発したことを発表しました。STの研究プロジェクトは、実績のあるラボ・オン・チップ技術を応用し、医学的および法医学的な生体サンプルの迅速な調製、解析および評価を自動化する、低コストな使い捨てチップ開発に向けて研究を進めています。
STのIn-Check(TM)「ラボ・オン・チップ」など、最先端のバイオテクノロジー・プラットフォームによって、生体サンプルに含まれる特定の遺伝物質の素早い検出が可能になり、病気の診断あるいは食物や水の細菌汚染の監視が容易になります。しかしサンプルの調製は、今も熟練した専門家の技術を必要とする時間のかかるプロセスであり、特に少量のサンプルへの適用は困難なうえ、費用がかかります。STの研究プロジェクトの目標は、必要な生体微粒子を、唾液、血液、生検組織などの「生の」検査サンプルから素早く抽出し、ラボ・オン・チップで診断することができるようなサンプル調製自動化の新しい方法を探索することです。
STの先進システム技術担当ディレクタであるMaria Teresa Gattiは、次のよう述べています。「診断機器の市場は、完全自動化、低コスト、さらには必要な時にすぐに使用できるデバイスの実現に向けて発展しています。」
STのマイクロ流体部門のグループ統括責任者兼ジェネラル・マネージャであるAnton Hofmeisterは、次のように述べています。「サンプル調製技術をSTのIn-Checkラボ・オン・チップ・プラットフォームと組合わせることにより、専門の研究所以外、たとえば病院内あるいは診療所の中での診断解析さえも実施可能にする、低コストで使いやすいシステムを構築できるようになります。」
STの研究者が使用した技術は、誘電泳動と呼ばれる方法に基づくもので、この技術では、導電性の溶液中に含まれる生体微粒子を分離するために電界を利用します。そして、物理的および電気的な条件を細かく設定することで、対象微粒子の動きを精密に制御します。STのプロジェクトの目標は、この実用性を実証することでした。このデバイスの実現により、最小限のトレーニングを受けたオペレータによる現場でのサンプル調整を可能にするだけでなく、低濃度で存在する細胞の分離、溶液中の細胞の濃度増大、および細胞核からのDNA抽出のへの利用も可能になります。STの研究プロジェクトは、STとEvotec Technologies GmbH社との間で以前に行われた共同研究プロジェクトの成果に基づいています。
この研究プロジェクトの詳細は、イタリアのバリ工科大学で開催されたNANOMEC06ナノスケールにおける材料科学および材料機械学シンポジウムにおいて、STの先進システム技術(AST)組織のMarco Bianchessi、Sarah BurgarellaおよびAnna Zoccoにより論文発表されました。
■STマイクロエレクトロニクスについて
STマイクロエレクトロニクスは、多種多様な電子機器向けに半導体製品やソリューションを開発・提供する世界的な総合半導体メーカーです。STは、他社の追随を許さない高度なシリコン技術とシステムノウハウを擁しており、幅広いIP(Intellectual Property)ポートフォリオ、戦略的パートナーシップ、大規模な製造力との組合わせにより、SoC(システム-オン-チップ)技術に関し世界的リーダーとしての地位を確立しています。またSTの半導体製品は、市場における技術やシステムのコンバージェンス化を促進するために重要な役目を果たしています。STは、ニューヨーク証券取引所(NYSE:STM)、パリ証券取引所(Euronext Paris)とミラノ証券取引所に上場されています。2005年の売上は88.8億ドルで、純利益は2億6600万ドルでした。
さらに詳しい情報はSTのホームページをご覧ください。
ST日本法人:http://www.st-japan.co.jp
STグループ(英語):http://www.st.com
■お客様お問い合わせ先
〒108-6018 東京都港区港南2-15-1
品川インターシティA棟18階
STマイクロエレクトロニクス(株)
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■技術メモ
1.誘電泳動とは、不均一な電場内で非荷電粒子の電界誘起双極子に力が作用する現象です。懸濁媒体よりも分極が大きい粒子は正の誘電泳動を受け、電界の勾配が最も大きい領域に向かって移動します。周囲の媒質よりも分極が小さい粒子は、負の誘電泳動を受け、電界強度が小さい領域に向かって移動します。
2.この新システムは、STがIn-Check(TM)ラボ・オン・チップ・デバイスに使用している微小電気機械システム(MEMS)技術と互換性のある技術を使用して構築されました。プロトタイプのシリコン・チップには、長さ約1mm、幅0.1mm、深さ50μmの微小な溝(ヒトの毛髪の直径は約100μm)があり、興味のある分子を含んだ溶液で満たされています。溝の底では、多数の微小な白金電極(幅25μm、間隔25μm)により、溝の中の電界パターンを高精度に作りだすので、生体分子に作用する力が精密に制御されます。
3.プロトタイプ・システムの動作テストは、ヒトの白血球(Bリンパ球)およびこれとほぼ同じ大きさの極微小ポリスチレン・ビーズがリン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液中に懸濁した混合物を使用して行われました。電圧を印加しない場合、Bリンパ球とポリスチレン・ビーズは、溝の中で不規則に分散していましたが、電極アレイに電気信号を印加すると、白血球は電極の端に集まり、同じPBS溶液中に懸濁したポリスチレン・ビーズと分離されました。研究者は、ビデオ・カメラを取り付けた標準的な光学顕微鏡を用いて粒子の動きを観察しました。
4.この技術は、STとEvotec社による特許出願05108445.7(ヨーロッパ)
および11/531679(米国)により保護されています。