米IBM、中小企業の特許についてのオンライン・フォーラム「Inventors' Forum」を発表
IBMが年間米国特許取得件数で最多記録を更新
中堅・中小企業とのコラボレーションに向けた「Inventors' Forum」を発表
IBM(本社:米国ニューヨーク州アーモンク、会長:サミュエル・J・パルミサーノ、NYSE:IBM)は11日(現地時間)、特許制度のあり方についての中小企業の見解や中小企業が特許の質の向上などに対してどのような貢献が可能かについてのアイデアを討議し、共有するための「Inventors' Forum」というオンライン・フォーラムを開設し、主催していくと発表しました。
IBMの今回の発表は、IFI CLAIMSによる米国特許商標庁(United States Patent and Trademark Office:USPTO)の年間上位リストの公表を受けて行なわれました。IBMの米国特許取得件数は3,621件で、自社の従来の記録を上回るとともに、14年連続で世界最多を記録し、2位の企業を1,170件も引き離す結果となりました。
多くの熱力学関連の発明に関する特許の権利を有し、Super Soakerという名称の水鉄砲の発明で最もよく知られている発明家のLonnie Johnson(ロニー・ジョンソン)氏をはじめ、多くの個人や中堅・中小企業がすでにフォーラムへの参加に同意しています。また、中小企業の発展に一役買うベンチャー・キャピタリストなどに対して、今年第2四半期に開催される同フォーラムに参加し、知的財産マーケットプレイスへの彼らの参加に影響を及ぼす課題について意見を交わすように呼びかけています。IBMは、そのニーズが十分に満たされないことが多いグループとのこうした対話が、特許改革の成功を促す上で役立つと考えています。
ワシントンDCに本拠を置くIntellectual Property Owners Association(知的財産権所有者協会)のエグゼクティブ・ディレクターであるHerbert Wamsley(ハーバート・ウォムズレー)氏は、次のように語っています。「特許改革を意義あるものとするには、すべての当事者のニーズを取り組まなければなりません。このInventors' Forumでは、健全な知的財産マーケットプレイスに適したソリューションを共同で開発するために多種多様な意見を集約することにより、特許改革の促進に貢献することができます。」
企業および政府が経済成長を生み出すためにイノベーションに重点を置く中、個人やあらゆる規模の企業による特許出願件数が急増しています。U.S. Small BusinessAdministration(米国中小企業局)によると、中小企業の方が大企業に比べて従業員1名当たりでほぼ15倍もの特許を取得しています。特許は知識ベースの資産を生み出し、利用する者が価値を確立するための主要な手段となっています。特許がIBMのような大企業にとって必要不可欠のものであるのと同様に、中小企業にとってもそれはまさに必須のものとなっています。それは、中小企業の事業や目標が比較的少数の特許を中心として構築されているからです。
IP管理ソフトウェア・ソリューションを提供するPatentCafeのCEOであるAndyGibbs(アンディー・ギブス)氏は、次のように語っています。「中小企業は、発明の世界において長い間『サイレント・マジョリティー(声なき多数派)』でした。中小企業が生み出す特許の件数だけ見ているのでは、中小企業には発明制度の中で現実に声をひとつにして協業し、参加する手段がないという現状を見失いがちになってしまいます。こうした企業は、Inventors' Forumを通じて、特許システムの改善に向けたアイデアを出し、世界各国で同様の立場にある企業とブレーンストーミングを行なう機会を提供します。」
こうした中小企業は多くの場合、特許を取得し、特許権を維持し、特許を市場性のある製品やサービスへと転換するためのプロセスやルールを効果的に、また生産的に運用するためのリソースを欠いています。さらに、個々の発明者や中小企業は地理的にも、技術的にも、また産業としても異なるグループを形成していることから、こうしたIPの利益や課題に関してコラボレーションする機会がほとんどありません。
IBMテクノロジー・知的財産担当シニア・バイスプレジデントのJohn E. Kelly III(ジョン・E・ケリー3世)は、次のように語っています。「世界中の発明のうち、個人と中小企業から生み出されるものが相当の割合を占めています。特許システム全般の健全性向上をはかろうと考えるならば、私たちが彼らの懸念や課題を理解するための場を提供するのは大切なことです。Inventors' Forumの目標は、発明界において広範な部分を占める分野の代表者がフォーラムに参加し、特許システムへの参加や特許システムが直面している課題解決に寄与する方法の向上について新しいアイデアを表明できるようにすることです。
■知的財産マーケットプレイスの考察
Inventors' Forumは、主として大企業に影響する問題に焦点をあてる1年前のプロジェクト「Building a New IP Marketplace(新しい知的財産マーケットプレイスを築くには)」に続く取り組みです。知的財産マーケットプレイス・プロジェクトにおいては、世界の知的財産の専門家によるオンライン・フォーラムで特許の質、透明性、ビジネス方法の特許の有効性など、いくつかの困難な課題をめぐる議論からコンセンサスを形成するためにwikiテクノロジーが用いられました。
こうした共同作業を通じてまとめられた文献が、IBMによる新しい特許に関する方針の導入につながりました。この新しい方針では、特許出願人は特許出願の質に責任を持つべきであり、特許出願は一般による審査に付されるべきであること、特許の権利帰属の透明性、技術的利点が欠落している純粋なビジネス方法は特許を受けるべきではないことを理念としています。
■特許の質に関するイニシアティブの機運
Inventors' Forumは、1年前にIBMが発表した特許の質の目標をさらに推し進めるものとなります。質の低い、または記述が不充分な内容の特許出願の増加は、かつてないほどの割合の未処理書類の山を生み出しており、新しくない、あるいは不必要に広範囲にわたる、あるいは自明なアイデアを保護する特許の付与につながっています。IBMは、特許の質が向上すれば、個人やあらゆる規模の学術機関と企業によるイノベーションへの継続的な投資が促進されるとともに、公共の利益に反する過剰な保護主義が抑制されることになると考えています。
昨年1月、IBMは「Community Patent Review(コミュニティー・パテント・レビュー)」や「Open Source as Prior Art(先行技術としてのオープン・ソース)」など、一連の特許の質に関するイニシアティブを立ち上げました。どちらのイニシアティブも、特許審査官が利用できる適切な情報の拡充を意図したものです。USPTOは、先ごろ発表した戦略的計画においてこれらのイニシアティブを取り上げました。USPTOはさらに、2007年に開始されるCommunity Patent Reviewの試験運用への参加を予定しています。
ニューヨーク・ロー・スクールのBeth Noveck(ベス・ノベック)教授がCommunity Patent Reviewの指揮を執っており、また、Community Patent Reviewの発表以来、複数の企業がこのプロジェクトへの支援を提供しています。
Open Source Development Labs(オープンソースデベロップメントラボ)は引き続きUSPTOとの協力のもと、Open Source as Prior Artに取り組むべく、オープンソース・ソフトウェア・コミュニティーのチームを率いていきます。このイニシアティブはすでに、先行技術の新しいツールとソースの特定というかたちで、USPTOにとっての利点を生み出しています。
一連のイニシアティブの最後に立ち上げられたのが特許の質のインデックスです。これは、特許の質に対する定量的な手法の定義を目的とするものです。テキサ
ス大学ロー・スクールのRonald Mann(ロナルド・マン)教授がこのプロジェクトのリーダーを務めます。
上記の結果およびランキングは、CLAIMSの特許データベースをまとめ、企業を対象として交付された米国特許件数を毎年公表しているIFI CLAIMS Patent Servicesから発表されました。IFI CLAIMSによると、IBM社内の発明者は、IBM以外を主たる譲受人として付与された30件の特許にも掲載されているため、合計で3,651件の特許に名を連ねていることになります。
以上
IBMは、IBM Corporationの商標。