鹿島と芦森工業、新しい切削可能部材「SZパイル」「SZセグメント」を実工事に適用
新しい切削可能部材「SZパイル」「SZセグメント」実工事への適用
奈良県信貴山シールドトンネル発進立坑の土留め及び
首都高速中央環状新宿線シールドトンネルセグメントへの適用
鹿島(社長:中村満義)と芦森工業(社長:側島克信)は、シールドマシンの発進・到達用の土留め芯材やセグメントの一部として、シールドマシンで直接切削が可能な新部材を開発し、このほど実工事に適用しました。この新部材はガラス繊維強化プラスチック製の積層板であり、従来の切削可能な材料よりも、施工性が良好で、コスト面でもメリットがあることを確認しています。
【 開発の背景 】
シールドマシンの発進・到達に際しては、発進・到達部に地盤改良を施工し、土留め止水して、土留め壁を人力で撤去後、地盤改良体を掘削しながら発進・到達する方法、あるいは、シールドマシンのカッタヘッドで直接切削が可能な炭素繊維、ガラス繊維を用いた土留めの芯材を直接掘削しながら発進・到達する方法が用いられてきました。
近年では、コストダウン、工期短縮のニーズから後者の直接切削による発進・到達が主流になりつつあります。
そうした中で、従来材料よりもさらにシールドマシンで切削しやすく、かつ、コストメリットもある切削可能部材の開発が求められていました。
そこで、鹿島と芦森工業は、図-1に示すように、ガラス繊維の長繊維(直交配置も可能ですので、荷重条件に合わせて積層を最適設計することにより、部材厚の低減も可能です)と短繊維を組み合わせ、熱硬化性樹脂(不飽和ポリエステル樹脂)を含浸することで、任意の形状に製作でき、かつ写真-1のように切削性能のよい切削可能部材を開発しました。
適用対象には、まず、図-2に示すように、シールド工事で、発進・到達立坑の土留め芯材のうち、シールドが通過する部分に設置して、掘進機でそのまま切削しながら、発進・到達するものがあります。
また、図-3に示すように、あらかじめセグメントの一部として工場でセットして、シールド施工時に組み立て、さらにシールド坑内から曲線パイプルーフで直接切削しながら、発進・到達させるものがあります。
このたび、奈良県の信貴山トンネルの発進・到達工としてH形鋼型の「SZパイル」を、また、首都高速中央環状新宿線富ヶ谷出入口工区の曲線パイプルーフ工法における、パイプルーフ推進機の発進・到達のセグメントの一部にセグメント形の「SZセグメント」をそれぞれ適用しました。
【 工事への適用 】(画像入りの詳細は、添付資料をご参照ください)
1.奈良県流域下水道信貴山シールド土留め材直接切削発進到達
本工事では、H形鋼と同じ形状の「SZパイル」を、発進の土留め芯材として適用しました。コストについては、従来の切削可能部材を用いた工法とは同等ですが、写真-2,3のようにH形鋼と同じ形状のため、現場でH形鋼と通常の方法で、接合することも可能で、作業性も非常に良好です。
H形形状ですので、矩形形状の材料で懸念されるSMWなどの掘削機のオーガと部材とが接触する心配もありません。
また、切削中の騒音についても従来の切削可能部材よりも小さく、切削片も微細であることが確認されました(写真-4,5)。
2.首都高速中央環状新宿線 シールドセグメント直接切削発進・到達
首都高速中央環状新宿線富ヶ谷出入り口工事は、内回り、外回り2本のシールドトンネル間を非開削で施工して、ランプ躯体を構築する工事です。
施工の一段階で、片方のトンネルからもう一つのトンネルに向かって下方に太径曲線パイプルーフを掘進する工事があります。
そこで、パイプルーフ掘進機が発進・到達するセグメントの一部分に、本材料を用いたセグメント型の切削可能部材「SZセグメント」が適用されました。
本工法により、発進・到達に用いられる地盤改良が不要となり、工期を短縮することができ、さらに施工の安全性も大幅に向上しました。また、多室形状に成形しており、その空間にモルタルなどを充填することで、材料費の低減、切削性能を向上することも可能になりました。
【 今後の展望 】
今回、開発・実用化した切削可能部材は、任意の形状に製作が可能であり、シールドトンネルの発進・到達工の土留め芯材として、また、分岐・合流するシールドトンネルなどの接合部のセグメント部材として積極的に展開を図る予定です。さらに、小口径推進用の発進・到達、中間にあるマンホールの通過部材などへの適用も可能です。
現在、適用可能なシールドマシンの口径は6m以下としていますが、今後は日鉄コンポジットとも共同で、大口径化を目指し開発を進めています。
本製品の販売に際しても、日鉄コンポジットの協力を得て、積極的に進めていくことにしています。