飛島建設、産業副産物を活用した次世代型吸遮音パネルを開発
環境騒音対策に、環境・価格に優位性を持つ次世代型吸遮音パネルを開発
― ゴミ溶融スラグ、石炭灰(クリンカアッシュ)等の産業副産物を活用 ―
飛島建設(株)(社長・池原年昭)では、工場や道路・鉄道等の交通騒音対策として吸遮音技術の開発と展開を図ってきました。このたび、主要材料に有害物質の溶出などがなく二次使用が可能な溶融スラグや石炭灰(クリンカアッシュ)などの産業副産物を用いたコンクリート系吸遮音材の製造技術を確立し、既存のコンクリート二次製品工場やオンサイトで製造可能な循環型社会に対応した「次世代型吸遮音パネル」を開発いたしました。
・「次世代型吸遮音パネル」設置イメージ図
・技術研究所音響実験棟にて,様々な音響性能の確認試験を実施
(※ 関連資料を参照してください。)
【 開発の背景・経緯 】
都市域は、ほとんどの地面は舗装され、建物もガラスやコンクリートなど音をほとんど吸収しないため、様々な騒音が反響し騒がしい空間となっています。そのため騒音に係わる環境保全の観点からは、遮音壁などの音をさえぎる対策ばかりでなく、反射音を低減する吸音対策も求められてきています。
一方、都市域で排出されるゴミ溶融スラグや石炭火力発電所からの石炭灰(クリンカアッシュ)は、有害物質の溶出などがなく二次使用が可能であっても、素材として使用するために必要な分級などの前処理や運搬に掛かる費用がネックとなり廃棄処分されているものも多く、新たな有効利用先が求められています。
これまでにも特定の産業副産物を利用した吸音材は開発されていますが、特定の産業副産物供給元や特定の製造工場が必要なことや、運搬コストなどに課題がありました。
今回、弊社独自技術である「吹付型吸音工法」の技術を応用し、二次使用が可能な産業副産物を分級などの処理をせず、また特別な設備を用いずにコンクリート系吸遮音材を製造するノウハウを開発したことにより、「(1)主要材料として入手しやすい産業副産物を利用可能、(2)コンクリート二次製品工場やオンサイトで製造でき、製造拠点を固定せず利用場所の近郊に確保可能、(3)材料調達→製品製造→設置使用に係る資材・製品の移動距離を短縮できることにより、材料・流通コストの低減可能」という新しい環境保全対策を可能としました。
【 特徴 】
◇粒度分布が安定しない(ばらつく)産業副産物を使用でき、副産物の地域特性(廃瓦・陶器・ガラス、ゴミ溶融スラグなど)にも対応可能です。
◇特別な装置を必要としませんので、産業副産物排出事業所や建設工事現場にて簡易製造設備を用いたオンサイト製造も可能です。
◇製品の廃棄は主要材料である産業副産物と同様の扱いとなりますが、粉砕し汚れを落としセメント分・細骨材に分類することにより、再利用可能になります。
◇パネルの厚さと製造条件(設計空隙率、配合)の組み合わせにより、吸音性能がコントロールできます。
◇吸遮音パネルとして必要な最低強度の製品から歩行に耐える強度の高いものまで対応可能です。
【 その他 】
使用する細骨材(産業副産物,リサイクル骨材など)の比重により製品重量が大幅に変化することがあげられます。比重の比較的大きい溶融スラグを用いた場合、5cm厚さの平均的な吸音性能の製品で 60~70kg/m2の重さとなるため、低層吸遮音塀や低層擁壁、植栽枡(路上に置かれるコンクリート製プランターのようなもの)など使用場所の選定には注意が必要となります。
【 今後の展開 】
総合評価型入札制度における騒音対策提案など、自社案件での使用実績蓄積を図ると共に、環境騒音対策への社会的需要が大きい都市圏を中心に、外部展開(製造委託・販売委託など)を進めていく予定です。
【 参考:コンクリート二次製品工場での製造試験事例 】
(※ 関連資料を参照してください。)