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ニュースリリースのリリースコンテナ第一倉庫

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2024'04.25.Thu
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2007'06.11.Mon

東北大学とNEC、音とびのない高品質なインターネットIP音楽放送技術を開発

高品質インターネットIP音楽放送が可能に

~東北大学の複数記述(MD)符号化方式とNECのマルチパスルーティング技術を
  融合したインターネットリアルタイム配信基盤技術を開発~


■ ポイント ■
・ 東北大学が開発した1つの音データを複数のデータに分割し、一部のデータ欠落があっても元の音データを復元できる「複数記述(MD)符号化方式」と、NECが開発した複数の独立したルートでデータ転送を行う「マルチパスルーティング技術」との融合により、原信号データ送信帯域をほとんど増加させることなく、従来法よりも大きく品質を向上
・ 従来のストリーミング配信技術の課題であったパケットロスに起因する著しい品質劣化の問題を解決し、音とびのない高品質なインターネットIP音楽放送が実現できる。
・ 本技術は、高品質なリアルタイム放送型サービス(IP放送)の実現に貢献できるものと期待される。

■ 概 要 ■
 東北大学【総長 井上明久】工学研究科【研究科長 内田龍男】の伊藤彰則助教授、牧野正三教授、電気通信研究所【所長 伊藤弘昌】の鈴木陽一教授らの研究グループ(以下「東北大」という)は、日本電気株式会社【社長 矢野薫】システムプラットフォーム研究所【所長 加納敏行】(以下「NEC」という)の岩田淳部長らと共同で、インターネット放送配信サービスに向けた高品質リアルタイム配信基盤技術である複数記述(Multiple Description; MD)符号化分割転送技術の研究開発を進めてきた。今回、IP音楽放送サービス向けのシステム実装が完了し、実証実験を行い、その有効性を確認した。今後、早期の実用化を目指す。

■ 新技術開発の背景 ■
 リアルタイム放送型サービス(IP放送)は新たな情報配信メディアとして注目されている。IP放送型サービスでは、パケット再送手段を有さないため、パケットロスに起因するデータ欠落により音飛び/画像飛びといったデータの著しい品質劣化の問題を解決することが要求されている。これに対して、ロスしたパケットを信号理論によって復元するFEC(注1)などの誤り訂正符号技術があるが、この技術ではインターネットで発生するバーストパケットロス(注2)に対応できないという問題がある。そこでパケットをコピーし2パスを用いて冗長に転送する二重化伝送技術の適用が望ましいと考えられるが、この技術で高品質になる一方で同一パケットを二重に転送するため約2倍の帯域が必要となる。そこで、実用化のためには所要帯域を効率化することが望まれていた。

■ 新規開発した技術ならびにその特徴 ■
 今回はIP音楽放送サービス向けシステム開発を行ったもので、複数記述符号化分割転送技術を使って、二重化伝送技術の所要帯域効率化を満足し、かつ音飛びのない安定的なIP音楽放送サービスを提供することができることを確認した。

 新規開発技術ならびにその特徴は次のとおりである。

1. 音などの配信データを一部のデータ欠落があっても元の音データを復元できる複数データに変換して符号化する「複数記述(MD)符号化方式(注3)」に注目し、新たにディジタル音信号を高品質・低ビットレートで伝送可能な「周波数ストライプMD符号化方式」を開発。
 (ア) 原データを周波数に変換し、周波数領域のデータを2つに分割すること によって、インターネットにおいて一部の周波数分割データに欠落が あっても再生可能であるため、IP放送サービスを安定的に提供可能。
 (イ) MD符号化における分割データ生成に際し、データ量増加分が無視できる ほど小さいため、帯域利用効率が従来に比べ、約2倍に増加。

2. 「周波数ストライプMD符号化方式」とインターネット上で独立したルートを生成可能な「マルチパスルーティング技術」を融合した「複数記述符号化分割転送技術」を開発
 (ア) パス毎にパケットロスを分散化させることで、IP放送サービスをより安 定的に提供可能。

 MD符号化とは、1つの音データを一部のデータ欠落があっても元の音データを復元できる2つ以上の音データに分割して符号化する技術である。今回のシステムでは、MD符号化を用いることにより、誤り訂正技術によるデータ再生やデータコピーを伴う二重化を施すことなく、安定的なIP音楽放送サービス提供を可能にしている。今回のシステムでは1つの高音質な音を2つの低品質な音に分割した上で、それぞれの音と復元用の符号データを2つのルートで独立に転送している。音を二つに分割する方法として、東北大で開発された周波数ストライプ分割法を採用した。この方式では、どちらか1つの音データが欠落した場合、残った音データと復元用の符号データとを使って元の音データにきわめて近い音を再生することができる。また、復元用符号を最適化することにより、160kbpsのMP3(注4)データに対してデータ量の増加をわずか7.8kbpsに抑えることができた。さらに、データ通信を2つのルートに分けるマルチパスルーティング(注5)機能と組み合わせることで、パケットの損失を分散させ、より安定したサービス継続を実現することが可能になった。 
 今後、より高品質かつ安定した複数記述符号化分割転送技術をさらに推進していく予定である。

 本研究成果は、3月20日~23日に開催される「電子情報通信学会 2007年総合大会」(主催:電子情報通信学会、会場:名城大学天白キャンパス)で発表する予定である。

■ 開発システムの概要 ■
 図1に、今回開発したシステムの構成を示す。送信側サーバにおいて、(a)のMD符号化を行い、蓄積されている音楽データを2つの系列に分離する。そのうえで、(b)により構築した複数のマルチパス経路に、(c)の拡張ソケットを通じ、分離した音楽データをそれぞれ受信して、(d)のMD復号化処理によって音楽を復元する。
(a)MD符号化:蓄積されたMP3音楽データの周波数情報を「偶数番目の周波数」と「奇数番目の周波数」2つに分離し、それぞれに復元のための符号情報を付加して送信する。
(b)ディスジョイント・マルチパス転送: 図に示すように、インターネット等のネットワーク内に複数のオーバレイルータ(注6)を配置し、オーバレイネットワーク(注6)を構築する。接続元クライアントはオーバレイルータと連携し、接続先クライアントとの間で、重なりのない経路(ディスジョイントになる経路)を複数設定して接続する。
(c)拡張ソケット: アプリケーションシステムからの接続要求を受け、オーバレイネットワーク上で、ディスジョイント経路を生成する。ネットワークからのパケット到着時は、バッファで到着タイミングのずれを吸収し、各パスからのパケットを同期させてアプリケーションシステムに転送する。 
(d)MD復号化:ネットワークから受信したパケットを音情報に戻す。ある特定の時刻に対して2つのパケットが対応するので、2つのパケットが両方受信できた場合は元の音を復元する。また、ネットワークの輻輳などにより片方のパケットが欠落した場合は、受信できたパケットとこれまで受信したパケットの情報を元にして音を復元する。


以上


<用語の説明 > 

(注1) FEC
 Forward Error Correction(前向きエラー訂正)の略。送信するデータに誤り訂正用の冗長データをあらかじめ付加することで、一部のデータが壊れた場合であっても、その程度が小さければ元のデータを完全に復元できる。

(注2) バーストパケットロス
 複数のパケットが瞬間的に連続して欠落すること。ルータやスイッチにおけるバッファが一杯になると、その後到着したパケットを格納する領域がないため、連続して欠落することに起因する。

(注3) 複数記述(MD)符号化
 あるデータを、複数の部分データ(Description)に分けて符号化する方式。いくつかある部分データのうち、どれか1つが受信できれば元のデータに近いデータを復元することができ、すべての部分データが受信できれば元のデータがほぼ完全に復元できる。音声や画像に対する従来の符号化方式では、データ送受信に少しでもエラーがあると急激に復元データの品質が劣化するが、MD符号化方式ではエラーの度合いに応じて少しずつ品質が劣化していく。

(注4) MP3
 MPEG-1 layer3の略。動画像・音声の符号化規格であるMPEG-1のうち、いくつかある音声符号化方式のうちの1つである。音楽データを高品質に圧縮することができることから、音楽の符号化方式として最も広く利用されている。

(注5) マルチパスルーティング
 通常、インターネット上の2地点間での通信は、1セッション中は全て同じルートでデータが転送されるのに対し、複数のルートでデータ転送を行う通信技術。これまでは、複数経路伝送による負荷分散技術や広帯域化技術として、あるいはネットワーク障害が生じたときにネットワーク通信を断絶させないための高信頼技術として着目され、研究開発が行われてきた。

(注6) オーバレイルータ/オーバレイネットワーク
 インターネット上に自由な仮想ネットワークを構築する装置のことをオーバレイルータ と呼び、またオーバレイルータによってインターネット上に形成される仮想ネットワークをオーバレイネットワークと呼ぶ。オーバレイネットワークでは、サービスの要求に応じて品質や経路を柔軟に最適化できる。オーバレイネットワークはインターネット上でのVoIP通話ソフトウエアや、ファイル交換ソフトウエア等に利用されている。本開発では、マルチパスルーティングに利用している。


<本件に関するお客様からのお問い合わせ先>
東北大学大学院工学研究科 助教授 伊藤 彰則
 〒980‐8579 仙台市青葉区荒巻字青葉6-6-05
 tel: 022-795-7084 fax: 022-795-7084
 E-mail: aito@makino.ecei.tohoku.ac.jp

NEC 研究企画部 企画戦略グループ
 http://www.nec.co.jp/contact/

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