カルピス、マルコメと血圧降下作用を示す機能性味噌を開発
日本農芸化学会(3/26)にて発表
通常の味噌に比べて有意な血圧降下作用を示す機能性味噌を開発
- マルコメ株式会社との共同研究 -
カルピス株式会社(本社:東京都渋谷区、社長:石渡 總平)健康・機能性食品開発研究所は、当社が発見した食品由来のアンジオテンシン変換酵素阻害ペプチドであるVPP・IPP(「ラクトトリペプチド」)を味噌中に作り出す技術をマルコメ株式会社(本社:長野県長野市、社長:青木時男)との共同研究により開発しました。
味噌の仕込み過程でカゼインを添加して発酵させた『カゼイン味噌』について、「ラクトトリペプチド」を多く含むことを確認し、さらに動物試験によって血圧降下作用をもつことを確認しました。
この研究成果は日本農芸化学会(3/26)で発表します。
【背景】
当社は、「カルピス」の製造前段階の発酵乳「カルピス酸乳」の生理機能研究を1970年代より本格的に開始し、1980年には寿命延長効果、抗ガン作用を発表しました。その後、血圧降下作用、腎障害防止効果、疲労回復効果、免疫賦活効果など多くの生理機能を実証してきました。
血圧降下の研究では、「カルピス酸乳」の発酵過程で、乳たんぱく質のカゼインから得られるVal-Pro-Pro(VPP)、Ile-Pro-Pro(IPP)の2種類のペプチドが、血圧を上昇させるアンジオテンシン変換酵素(ACE)を阻害する作用があることがわかりました。この2種類のペプチドを「ラクトトリペプチド」と名づけ、現在までにこの成分を使用した研究で正常高値血圧者、軽症および中等症高血圧者への血圧降下作用や安全性などを実証してきました。
当社では、このVPP・IPP(「ラクトトリペプチド」)を当社独自の技術を活用し、乳カゼインを麹菌由来の酵素で分解することで作り出すことに成功しています。
今回の試験では他の方法でも「ラクトトリペプチド」を作り出すことができるのかどうか、血圧降下作用が得られるのかどうかを調べるため、麹菌を用いた発酵食品である味噌に着目し、味噌中の「ラクトトリペプチド」の生成についてマルコメ(株)と共同で研究しました。
【試験】
(1)カゼインを味噌の仕込み過程で添加して『カゼイン味噌』を作製、熟成させ、その『カゼイン味噌』に含まれる「ラクトトリペプチド」の量を測定しました。また『カゼイン味噌』に含まれる、血圧を上昇させるアンジオテンシン変換酵素(ACE)を阻害する強さを測定しました。
(2)『カゼイン味噌』の血圧降下作用を調べるため、『カゼイン味噌』を自然発症高血圧ラット(自然に高血圧になるラット)に経口投与し、投与前と投与5時間後の血圧値を測定、比較しました。
【結果】
(1)『カゼイン味噌』は通常の味噌(カゼインを添加しない味噌)に比べて約6倍の「ラクトトリペプチド」を含むことが確認されました(図1)。また添加するカゼインの濃度は10%以上が好ましいことが確認されました。さらに『カゼイン味噌』に含まれるACEを阻害する強さは通常の味噌よりも約8倍高いことが確認されました。
(2)自然発症高血圧ラットに経口投与したところ、『カゼイン味噌』は通常味噌に対して有意な血圧降下作用を持つことが確認されました(図2)。
【まとめ】
以上の結果から、味噌の仕込み時にカゼインを添加することで血圧降下作用を有する「ラクトトリペプチド」を多く含んだ機能性味噌を製造できることを確認しました。