村田製作所、境界弾性波を採用した超小型のシングルフィルターを開発
世界最小サイズ境界弾性波フィルタを商品化
-SAFAMシリーズ-
(株)村田製作所は、このたび世界最小のシングルフィルタSAFAMシリーズの開発に成功しました。
本フィルタは、伝搬波として境界弾性波(Boundary Elastic wave)を採用することで、SAWフィルタでは不可欠な中空構造を持たないシンプルなプレーナー型(平板の薄膜積層構造)デバイスの商品化に成功、小形化を実現しました。
サイズは0.8mm×0.6mm×0.365mmと、当社従来品(表面波フィルタ)と比較し、面積比で約31%の小形化を図っております。
中空構造を持たないことによりモールド耐性(注1)の実力向上を達成し、ICと同等の熱衝撃保証が可能な高信頼性を実現しました。又端子部には高密度実装に最適な非鉛はんだ対応BGA(Ball Grid Array)を採用しました。
従来のSAWフィルタでは、ICを組み込んだモジュールに搭載する際に、アンダーフィル(注2)の追加等、ICと同等信頼性を実現させるためのモジュール構造検討が必要ですが、本フィルタでは、デバイスの高信頼性達成により、モジュール構造検討の簡略化、開発期間の短縮が可能です。
本フィルタはGSM850、GSM900(EGSM)、GSM1800(DCS)、GSM1900(PCS)に対応しています。今後は、携帯電話以外の無線通信用途にも商品展開していく予定です。
【 背 景 】
携帯電話市場では、RF(無線通信)部のモジュール化が進んでおり、フィルタもモジュール搭載化が進んでおります。最近はRF ICとフィルタを1パッケージ化したモジュール開発が進んでおります。これらのモジュールに対応するためには、モールド耐性が高く、かつ、ICと同等の高信頼性デバイスであることが必要です。SAWフィルタでは原理上中空を維持するための構造が必要であり、上記要求を満たしたデバイスを小形・低背化することは非常に困難です。そのため業界では、FBAR(Film Bulk Acoustic Resonator:圧電薄膜共振器)を使用したフィルタ開発にも取り組んでいますが、アンバランス入力-バランス出力対応フィルタ(注3)の実現が困難等、課題が複数あります。今回、(株)村田製作所では、伝搬波として新たに境界弾性波を採用することで、中空構造を持たないシンプルなプレーナー型デバイスを開発し、高いモールド耐性、ICと同等の高信頼性を実現しかつ、SAWフィルタの同等のフィルタ特性を持った小形、低背のフィルタを商品化しました。
注1)トランスファーモールドは、金型に高温樹脂を高圧で充填することで樹脂形成します。
そのため内蔵される素子は、120度以上で2気圧以上の高温高圧に長時間耐えられることが必要です。
注2)アンダーフィルとは、トランスファーモールドを行う際に内部の素子保護のためにモールド前に、塗布される樹脂の事です。
注3)アンバランス(不平衡)-バランス(平衡)型フィルタ
近年のRF-ICは、受信側入力端子がバランス(平衡)入力で、一方アンテナ側はアンバランス(不平衡)です。これを接続するには、バラン等の変換部品を使用する、又は変換機能を持ったSAWフィルタを使用することが必要です。近年は、バランス対応SAWフィルタを使用するのが主流になっています。
*以下、詳細は添付資料をご参照ください。