岩谷産業、関西電力と車載式の「液化水素型移動式水素ステーション」を開発
車載式の"液化水素型移動式水素ステーション"を共同で開発
―"水素の出前"で水素エネルギー時代への橋渡し―
岩谷産業株式会社(本社/大阪・東京、社長/牧野明次、資本金/200億円)は、関西電力株式会社(本店/大阪、社長/森詳介、資本金/4,893億円)と共同で、完全車載型の"液化水素型移動式水素ステーション"を開発し、関西圏での運用を開始します。
水素需要がわずかしか見込めない水素エネルギー社会の黎明期においては、小規模の水素需要に対して、いきなり実用規模の水素ステーションが建設されることは難しいと考えられます。まず移動式水素ステーションや小型の簡易ステーションが普及し、需要に見合った水素供給網が、地域ごとに段階的に整備されていくというのが、現実的な考え方です。
今回開発した"液化水素型移動式水素ステーション"は、水素エネルギー社会の初期段階の水素供給インフラを実現するために、以下の用途を想定しています。
(1) 水素需要場所を巡回し、水素利用機器へ直接水素を充填する、出前方式による移動式水素ステーションとして。
(2) サテライト水素ステーションと呼ばれる蓄圧器とディスペンサーだけからなる簡易型水素ステーションへの水素の補給。
尚、JHFCプロジェクト(*1)において整備されるサテライトステーションへの水素供給等において、当移動式水素ステーションを活用する予定で、運用実証を通して液化水素の有用性等を検証することとなっています。
【主な特徴】
1.主要構成機器をコンパクト化し、セミトレーラー上にすべての必要機器を搭載することで、水素供給時間を短縮し、機動的な水素供給が可能なシステムとなっています。
2.同一車両上にすべての機器(液化水素タンク、充填設備、ユーティリティ設備)が積載された移動式水素ステーションは国内初です。
3.液化水素型なので、圧縮水素に比べて貯蔵密度が高く、水素貯蔵スペースが小さい。
4.2000Lクラスの液化水素タンクの積載により、燃料電池車15台程度に充填できます。
5.35MPaの圧力で水素燃料車両に直接充填できる他、40MPaの圧力でサテライトステーション等の蓄圧器に水素充填することができます。
6.トラクタヘッドを切り離し、留め置きすることで、定置式水素ステーションとして利用できます。
(但し、高圧ガス保安法に基づく都道府県への届出が必要)
*1:JHFCプロジェクト
JHFCプロジェクトは、正式名称を「水素・燃料電池実証試験(Japan Hydrogen and Fuel Cell Demonstration Project)」といい、経済産業省の「燃料電池自動車等実証研究」の一環として、燃料電池自動車(FCV)と、多種多様な水素製造方式による水素ステーションを運用して行われる大規模な実証試験です。平成14年から4年間JHFCプロジェクト・第1期として首都圏を中心として水素ステーションの建設・運用とFCVの実証走行が行われ、実用化に向けての基礎データが収集されてきました。平成18年度からはJHFCプロジェクト・第2期として、実用化に向けたより一層の安全性の向上、経済性、長期信頼性の検証を目的として、平成22年まで5年間実施されるものです。
JHFCプロジェクト・第2期では、これまで実施されていた首都圏から、中部地区、大阪地区にも実証エリアが拡大されます。大阪地区での実証は、これまでのようなFCVと水素ステーションの運転実証に留まらず、より広範囲な水素利用機器にスポットを当て、燃料電池車いすや燃料電池アシスト付自転車等の小型移動体のモニター試験も行われます。