野村総研、「ユーザー企業のIT活用実態調査2006」を発表
「ユーザー企業のIT活用実態調査2006」を実施
~ IT活用テーマは業務改善が主流、今後は新たな企業価値創出へ ~
株式会社野村総合研究所(本社:東京都千代田区、社長:藤沼彰久、以下「NRI」)は、2006年11月~12月に日本国内の有力企業のCIOや経営企画担当役員を対象に実施した「ユーザー企業のIT活用実態調査」の分析結果をまとめました。この調査は、2003年度からNRIが毎年実施しているもので、今回が4回目の調査です。
今回の調査結果からは、新たな顧客価値とビジネス価値を創出するために、ITを活用した社内改革に取り組んでいる企業は少なくないものの、あまり効果が出ていないと認識されていることが明らかになりました。従業員構成や顧客、市場の多様化など、企業を取り巻く環境が変化する中、自社のIT資産を常に進化させながら、社内の知的資産を共通で有効活用するための施策を打つことが、新たな顧客価値とビジネス価値の創出につながると、NRIは考えます。そのためには、最高経営責任者(CEO)、最高情報責任者(CIO)、各事業責任者が三位一体となって改革を進めるべきであると提言します。
【 IT投資は増額傾向も、業務効率化・標準化支援が中心 】
今回の調査では、2006年度のIT投資を前年度と比較すると、「ほぼ同額」が42.4%、「増額した」が37.6%でした。2003年実施調査以降を経年比較すると、「減額した」と回答した企業の割合は減少傾向にあります。さらに、2007年度においては、44.2%の企業が増額を見込んでいます。(図1)。
最重視または重視するIT活用テーマとして挙がったのは、「業務効率化支援」(40.7%)と「業務プロセス標準化支援」(36.4%)が回答割合として多く、これらは前年比でも割合が上がっています。「事業・サービス創造支援」をIT活用テーマとして重視する企業は16.0%で、2004年から減少傾向にあります(図2)。IT活用目的の達成度合いでも、「業務効率化支援」と「業務プロセス標準化支援」は達成 度が高い一方、「事業・サービス創造支援」はそもそもまだ実施していない企業が44.9%もあることがわかりました(図3)。
企業のIT活用は、効果が見えやすい現状の延長上の改善テーマに当面は絞り込んでいるように見受けられます。
【 ビジネス価値創出のためのIT活用だけでは、効果に結びつかず 】
同調査では、顧客価値とビジネス価値創出のためのITを活用した社内改革への取り組みについても聞きました。その結果、「顧客リレーション管理」、「顧客参加型マーケティング」、「顧客に関する情報開示を反映した経営」、「業務プロセスの改革・改善」に、何らか取り組んでいる企業の割合は、それぞれ36.1%、26.9%、28.1%、91.9%でした(図4)。
また、IT活用による社内改革の効果については、「顧客拡大や取引拡大などの顧客評価向上効果」、「情報活用力や知識活用力などの組織能力向上効果」、「増収やコスト削減などの財務的効果」が出ているかという質問に対し、「どちらともいえない」と回答した企業がそれぞれ55.5%、46.1%、50.3%と大勢を占めました(図5)。
NRIは、ビジネス価値を創出する改革を成功に導くための施策は、IT活用だけではないと考えています。今回の調査で、改革のための施策の実施状況について聞いたところ、「戦略整合性の確保」と「IT活用」はそれぞれ50.7%、46.9%の企業が何らか実施している一方で、「改革手法の整備」と「改革推進人材の育成」を実施している企業はそれぞれ24.4%、27.0%にとどまることがわかりました(図6)。
企業がIT活用による価値創出を成功させるためには、CEO、CIO、各事業責任者が連携を取りながら、「顧客との関係資産」、「ナレッジ資産」、「業務プロセス資産」の統合活用を進めるべきである、とNRIは考えます。具体的には、CEOが改革の重要性を理解し、トップダウンで経営戦略と改革の整合を図ると同時に、各社員の能力や改革意識を向上させる組織文化をボトムアップで醸成する必要があります。CIOは、ITサービスの提供責任者であるだけでなく、知的資産の創出、流通、改革への適用といったマネジメント分野での役割も期待されます。また、知的資産の有効活用の実践は、各事業責任者の責任です。
NRIでは今後も、企業のIT活用の実態を調査し、その結果に基づいて、ITを活用した企業の改革支援を行っていきます。
*参考資料あり。