富士キメラ総研、国内20業種のIT投資の市場調査結果を発表
国内20業種のIT投資を調査
― 国内景気回復基調と輸出好調から、2007年IT投資額は前年比5.9%増の9兆6,520億円予測 ―
マーケティング&コンサルテーションの株式会社富士キメラ総研(東京都中央区日本橋小伝馬町 社長 表 良吉 03-3664-5841)は、このほど国内20業種の主要企業及び関連団体等を対象にIT(情報技術)投資や投資におけるキーファクター、IT戦略などを調査した。その結果を報告書「国内IT市場 2007-2010<業種編>」にまとめた。
<業種別IT投資額ランキング 2007年度予測>
※ 関連資料参照
<IT投資におけるキーファクターと関連業種>
●NGN(Next Generation Network:次世代ネットワーク)
NGNとはIP技術を活用した大容量・高品質の通信基幹網である。既に2006年12月より実証実験が行われており、電話局などに専用設備を設置し、2008年初めにも大都市圏での商用サービスを開始する予定で進められている。NGNの特徴としては、利用者に対して通信速度を保証したり、セキュリティ機能を大幅に高めたりできることが特徴となっており、ハイビジョン映像によるTV会議や、高音質IP電話などが可能となる。これにより通信のIT投資拡大が期待される。
通信(非製造業)は2004年で企業数が約2千社(総務省「事業所・企業統計調査」)、売上高16兆円(総務省「平成17年度 通信業基本調査」)規模の業界である。2007年度は全設備投資額3兆4千億円で、IT投資額はその42.6%にあたる1兆4千5百億円が予測される。2006年度に続き大手企業は、NGNの商用設備の導入に数百億円規模の投資を計画している。IT投資の主体は、NGN構築に関しての各種ハードウエアやコアネットワーク機器などの「設備」と、各種レイヤとしてTelecom Management(ネットワーク管理/サービス管理等)やBusiness Support System(CRM/課金システム/顧客サポートシステム等)の「開発」であり、投資は拡大すると予測される。
●グローバリゼーション
今後あらゆる業界において国内需要の大幅な拡大は見込めない状況にあり、海外事業の強化が課題となっている。海外拠点に対して積極的なIT投資が見られる業種は、電気機器、輸送用機器、一般機械、鉄鋼/非鉄金属/金属、金融、通信、印刷/同関連業、精密機器、繊維、建設、運輸、卸売である。
電気機器(製造業)は2004年で企業数が約2万2千社(総務省「事業所・企業統計調査」)、出荷額50兆円(経済産業省「工業統計表」)規模の業界である。国内需要は産業用機械で"国内電力会社による設備投資"、民生用電気機器では"薄型テレビ"といえるが、全般的に低迷基調に変わりはなく、産業用は"北米やアジアなどの電力会社"、民生用は"中国を中心とする海外市場"といった海外需要が業界を牽引している。2007年度の全設備投資額は4兆5千5百億円で、前年比6.5%増は製造業の中で特に高い増加率である。IT投資額はその28.6%にあたる1兆3千億円が予測される。中堅から大手の企業層では、引き続き好調な外需を背景として、国内外拠点に対するIT投資が一層活発化すると予測される。
鉄鋼/非鉄金属/金属業も海外進出でIT投資が積極的な業界である。鉄鋼/非鉄金属/金属業界(製造業)は2004年で企業数が約4万2千社(総務省「事業所・企業統計調査」)、出荷額34兆円(経済産業省「工業統計表」)規模の業界である。2007年度は全設備投資額2兆5千億円で、IT投資額はその15.2%にあたる3千8百億円が予測される。需要家の海外生産拡大に伴い、鉄鉱石等材料のグローバル調達体制の強化や、海外拠点を本社で一元管理し、グローバルシステムとしての全体最適化を図り国際競争力強化を目指す取り組みが、大手企業を中心に拡がっている。また、多品種少量発注、コスト要求、納期短縮に迅速に適切に対応するため、材料調達から生産、物流に至るサプライチェーンの強化、関連取引先企業との情報共有によるシステム連携などが、大手企業を中心に進められており、IT投資拡大が期待されている。
<調査結果の概要>
1.国内IT投資のトレンド
1)国内IT投資額
●国内IT投資額 2006年度 9兆1千1百億円 2007年度予測 9兆6千5百億円(前年比5.9%増)
小売業や印刷など特に市場の低迷が顕著な一部業種においてIT投資はいまだ不振であるのに対し、国内需要より輸出が好調で、業績が概ね良好に推移している輸送用機器や一般機械などの業種においては、2006年度よりIT投資の増加が見られた。2007年度は、国内景気の回復や好調な輸出などにより、需要拡大に対応した生産設備増強などの設備投資を進めると同時に、より積極的なIT投資が進んだ結果、国内IT投資額は前年比5.9%増の9兆6,520億円と予測される。2009年度に一旦市場は縮小するものの、2010年度は再び拡大へと転じると予測される。
2)コンソリデーション需要に活性化するハードウエア市場
ハードウエアの価格はこれまで一貫して、価格性能比の向上のみならず絶対金額においても低下が続いてきた。今後も大半は引き続き価格の下落が予測されるものの、ハイエンドクラスの製品に対する一部需要が伸長することにより、従来の低価格化一辺倒の価格動向に対して、若干変化が見られるものと見込まれる。これは主にサーバやストレージ(外部記憶装置)分野におけるコンソリデーション(集約・統合)の活発化によるものである。具体的には、複数の比較的小型なIAサーバで分散保有している各種システムを高性能サーバで集約したり、同様に分散したストレージを大型ストレージに集約したりして、性能向上や運用負荷とコストの軽減を図るといったソリューションに対するニーズが高まると予測される。また、市場を取り巻く外部要因についても、国内景気が持ち直してきたことなどから企業の業績は概ね好転し、ここ数年の状況に比べ大掛かりなIT投資とサーバなど重要な設備のリプレースが行われやすい環境に移行しつつあることも、ハードウエア市場の拡大にとってプラスに作用すると見られる。
3)大手企業への依存度が高まる
IT投資額を企業規模別にみると、絶対的に数が少ない従業員5千名以上の大手企業が、40%以上を占めている(官公庁/地方自治体を除く)。従って、大手企業が企業向けIT市場の牽引役として極めて重要な役割をはたしていると言える。IT投資の大手企業に対する依存度は、内部統制(日本版SOX法)への投資が必須であることから今後も一層高まるものと予測される。業種別には許認可業種である通信や生保・損保、銀行・証券、電気・ガス、大掛かりな装置を必要とする化学/石油・石炭/プラスチック/ゴムは参入障壁が高いことから、大手企業の占める割合が高く、IT投資額が高い業界といえる。また、電気機器では総合電機メーカー、輸送用機器では自動車メーカーは潤沢な資金力によってIT投資を実践し、またEDIシステムに代表されるような業界単位で整備するシステム化プロジェクトを率先する立場にある。
2.製造業/非製造業/公共の動向
1)製造業
●IT投資額 2006年度 3兆6百億円 2007年度予測 3兆3千億円(前年比7.8%増)
2006年度は全設備投資額、IT投資額共に二桁成長となった。電気機器業では薄型ディスプレイや電子部材により大幅増となり、輸送用機器業では燃料費の高騰により燃費の良い日本車の輸出好調により、生産能力を拡大する投資が増加し、連動してIT投資も増加した。2008年以降わずかに減少へ転ずると見られるが、IT投資比率は製品開発システムやICカードシステムの導入が増加し20%を維持するものと予測される。
2)非製造業
●IT投資額 2006年度 4兆9千8百億円 2007年度予測 5兆2千8百億円(前年比6.0%増)
2006年度は設備投資額の伸び以上にIT投資額が伸長し、2006年度以降のIT投資額は5兆円を超えると予測される。NGNの設備投資が始まった通信と業績が回復した銀行/証券が拡大を牽引している。
3)公共
●IT投資額 2006年度 1兆7百億円 2007年度予測 1兆8百億円(前年比0.9%増)
2006年1月より内閣府IT戦略本部(高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部)が「IT新改革戦略」を発表し、2010年までに世界最先端のIT国家になることを目標に掲げ推進しているため、IT投資額は持続的に増加すると予測される。医療では医療情報化に対する認知度の向上と法制度が主な拡大要因となる。
<調査対象>
1.業種:20業種(製造業9、非製造業9、公共2)
2.投資対象:
1)全設備投資金額
2)IT投資金額
〔1〕投資費目・・・設備、開発、運用
〔2〕ソリューション・・・ITガバナス、経営管理、エンジニアリング、サプライチェーン、販売支援、業務支援
<調査方法>
1.調査対象20業種における主要企業および関連団体、所轄官庁等に対して富士キメラ総研専門調査員による直接面接取材をベースに一部電話によるフォロー取材、並びに社内データベースの活用。
2.各調査項目の内容について適切な回答を有する調査対象先、部門の管理者並びに責任ある担当者に面接/情報収集。
<調査期間>
2007年3月~4月
以上
資料タイトル :「国内IT市場 2007-2010<業種編>」
体 裁 :A4判 179頁
価 格 :120,000円 (税込み126,000円)
調査・編集 :株式会社 富士キメラ総研 ビジネス・テクノロジー・オフィス
TEL:03-3664-5815 FAX:03-3661-5134
発 行 所 :株式会社 富士キメラ総研
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