NECなど3社、量子アルゴリズム実行が可能な回路技術を開発
結合制御が可能な量子ビットの実証に世界で初めて成功
~量子アルゴリズム実行が可能な回路技術を開発~
日本電気株式会社(以下、NEC)、独立行政法人科学技術振興機構(以下、JST)、独立行政法人理化学研究所(以下、理研)の三者(以下、本グループ)は、ビット間結合を制御可能な量子ビットの実証に世界で初めて成功しました。
量子コンピュータの実現には、その構成要素である量子ビットの量子状態の制御技術と、量子ビット間の情報のやり取りをダイナミックにオン/オフするビット間の結合制御技術の二つが必要となります。これまで本グループは、集積性に優れた固体素子を用いた世界初の量子ビットの実現や2量子ビット制御の成功など量子ビットの量子状態制御技術を確立してきました。今回の成果は、新たに開発した可変式結合回路により、量子ビット間の結合制御に世界で初めて成功したものです。この開発により、量子アルゴリズムに従った量子演算が初めて可能となり、量子コンピュータの実現に向けて大きな前進となります。
本研究成果の詳細は、米国の科学雑誌『Science』(5月4日号)に掲載されます。
量子コンピュータは飛躍的に高い計算能力を持つ将来の計算機として期待されています。量子コンピュータによる計算は、量子アルゴリズムに従い、複数の量子ビットの状態を時系列的に外部から変化(制御)させることで行います。
固体素子では、個々の量子ビットの物理的な配置が固定してしまうなどの理由で、量子ビット間の結合の制御を量子ビットの量子状態を乱さずに行うことは極めて難しいとされています。本グループは、結合を制御するメカニズムとして、量子ビット間の結合を新たなもう1つの量子ビットを用いて実現するという、オリジナルな原理を考案しました。回路パラメータを最適化することで、結合用量子ビットを、量子ビット間の磁気結合をオン・オフ切り替えできる非線形な磁束トランスとして動作させます。オン・オフ切り替えは、マイクロ波を入力するだけで可能で、量子ビットの状態を乱すことなく結合を制御できます。また、結合回路は量子ビットの形式をとっているため、この結合制御量子ビットを用いた量子コンピュータ回路の物理的構成は量子ビットの繰り返し構造となり、ビット数に対してスケーラブルな回路とすることができます。今回は、以上の結合用量子ビットの動作原理・回路設計・物理配置などの結合制御コンセプトの実証を目指し、2つの量子ビットと1つの結合制御用量子ビットからなる最小単位の回路で、ビット間結合を制御しながら量子ビットの制御を実現することに成功しました。本成果により、量子アルゴリズムに従った量子演算が初めて可能となり、固体素子量子コンピュータの領域において、世界に先駆けてデバイスレベルから回路レベルへの質的なステップアップを果たしたと言えます。
今回作製した量子回路構成方法をもとに、本グループは今後、量子ビットの集積化と量子アルゴリズムの実証に取り組み、量子コンピュータの実現を目指していきます。
なお、この研究成果はJSTの戦略的創造研究推進事業チーム型研究(CREST)の研究領域「量子情報処理システムの実現を目指した新技術の創出」(研究総括:山本 喜久)の研究課題「超伝導量子ビットシステムの研究開発」で進めている研究によるものです。
本成果の詳細については、別紙をご参照下さい。
以上
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