三井住友海上、国内台風リスクに関わる証券化を実行
台風リスクの証券化を実行
三井住友海上火災保険株式会社(社長 江頭敏明)は、再保険の調達手段の多様化・安定化とこれによる経営健全性の向上を目的に、国内台風リスクに関わる証券化を実行しました。
米国のハリケーンを初めとする大規模自然災害の多発を背景に再保険市場の不安定性が増すなか、当社では、リスク・スワップや証券化を活用して国内自然災害リスクの効率的な削減を図りつつ、再保険子会社を通じた海外自然災害リスクの引受を進めるなど、総合的な再保険戦略をグループ全体で推進しています。
1.取引の概要
今回の取引は、次の図解のとおり、本件専用に設立された特別目的会社AKIBARE Limited(本社ケイマン)が機関投資家に対して債券を発行して資金を調達し、この資金を引当に当社が国内台風リスクに関わる再保険をスイス再保険会社に設定したものです。
〔発行時点〕
添付資料をご参照ください。
〔対象台風発生時〕
添付資料をご参照ください。
AKIBAREの発行した債券は、大型台風の上陸後、気象庁で観測された風速に基づいて所定の方法で算出された指数が一定の水準を越えた場合に投資家への元本償還を一部または全部減額し、スイス再保険から当社への再保険金の支払いに充当する仕組みになっています。元本の減額が発生する台風の規模は概ね100年に1回レベルに相当しますが、所定の規模の台風が発生した場合にそれ以降の元本減額の発生条件が50年に1回レベルに下がるドロップダウン条項付きの債券も一部含まれています。
なお、AKIBAREは総額500百万ドルまで追加発行が可能な発行枠(ノート・プログラム)を設定しており、当社が必要に応じて機動的に証券化を実行できる態勢を整えています。
今回の取引にあたり、AKIBAREの設立を含めた債券の組成・販売はスイス再保険の証券子会社であるスイス・リー・キャピタル・マーケッツ・コーポレーションに、台風リスクの計量分析およびそれに基づく債券の条件設計はリスク・マネジメント・ソリューションズおよびRMS Japanに、それぞれ委託しました。
〔発行証券の概要〕
発 行 体:AKIBARE Limited
発行金額 :総額120百万ドル
満 期 :2012年 5月(期間5年)
格 付 :BB+(スタンダード&プアーズ)
利 回 り :LIBOR+295bp(ドロップダウン条項付きは315bp)
2.取引のねらい・背景
当社では、さまざまな保険契約の引受を通じて、地震や台風など自然災害に対する補償をお客さまに提供しています。大規模な自然災害が発生しても経営の健全性を損なうことなくお客さまの保険ニーズに安定的にお応えできるよう、再保険を活用して保有リスク量を削減し適正なリスク管理に努めていますが、国内の自然災害リスクについては巨額の再保険を毎年調達していることから、伝統的再保険市場に内在する不安定性にどう対応するか、依存度の高さをどうコントロールするかが重要な課題になっています。
欧米の大手保険会社・再保険会社も同じ課題に直面し、解決策のひとつとして証券化の手法が徐々に広がってきました。特に、ハリケーン・カトリーナに代表される近年の大規模損害の続発とその後の再保険市場の動揺を契機として、2006年は証券化市場が一気に拡大することになりました。2007年も引き続き高水準の起債が見込まれますが、再保険需給が逼迫した米国ハリケーンを中心に証券化案件が欧米リスクに集中している結果、ポートフォリオ分散の観点から投資家の間で他のリスクへの選好が大幅に高まり、当社に有利な市場環境が生じました。この好機をとらえ、今回、好条件で期間5年の再保険キャパシティを確保することにしたものです。
今回の取引は、再保険の調達の代替・補完手段として証券化を実行したものですが、当社ではかねてより、再保険子会社MS Frontier Reinsurance Limited(本社バミューダ)において再保険の引受の代替・補完手段として欧米自然災害リスクの証券化への投資を行ってきています。 伝統的再保険をリスク・スワップや証券化で補完しながら、本社では国内自然災害リスクの削減、再保険子会社では海外自然災害リスクの引受を進め、グループ全体でのリスク構造の改善と経営健全性・安定性の向上を図っています。
以 上