東大とNTT、Proprius21「情報通信分野のイノベーション創出」契約を締結
東京大学とNTTが
Proprius21 「情報通信分野のイノベーション創出」を締結
研究と人材育成での連携を強化
国立大学法人東京大学(東京都文京区、総長:小宮山 宏 以下、東京大学)と日本電信電話株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長:和田 紀夫 以下、NTT)は、東京大学の情報通信分野における研究成果の社会還元の更なる促進とNTTの研究開発業務の強化を図り、情報通信分野でのイノベーション創出を目指すこと、Proprius21プログラムの仕組みを活用した研究者間の討議を通じて、具体的な産学連携の課題を創出し協働でその解決にあたることを目的に、本日、Proprius21「情報通信分野のイノベーション創出」契約を締結しました。
【締結の背景】
東京大学は、大学の使命である教育と研究に加え、社会の進化に貢献すべく具体的な課題に取り組む社会との連携の重要性を認識し、新たな産学連携の仕組み「Proprius21」を構築して、多くの機関との研究交流を推進しております。Proprius21は産学連携の課題検討の初期段階から討議を重ね、課題の顕在化を行い、新しい価値の創造に繋がる共同研究を創出し、産学合意で実行計画を策定し、成果を見えるようにするプログラムです。
一方、NTTグループは、「NTTグループ中期経営戦略」に基づき、2005年11月にアクションプランを発表し、中期経営戦略の中核となる「次世代ネットワーク(NGN)」の研究開発を開始、2006年12月には、フィールドトライアルを開始しました。この中期経営戦略を早期に実現することで、ブロードバンドでユビキタスな社会を実現し、豊かなコミュニケーション環境の創造と個人やコミュニティへの提供、並びに企業活動の効率化・新たなビジネス機会の創出への寄与を目指しています。そのなかで、NTTは、NTTグループにおける横断的な基盤的研究開発を一元的に行っており、情報通信分野において世界で屈指の総合的な研究開発拠点として、確固たる地位を築いています。
両者は従来から、ブロードバンドネットワーク関連技術分野、ユビキタス関連技術分野、物性科学・情報処理の基礎的分野における共同研究や人的交流等を中心に連携を進めてまいりました。これらの活動の多くは、両者の研究者同士の個人的なつながりを契機に個別に企画・推進されて来たため、新たな組合せによる連携や複数分野を跨いだ分野融合的な連携の創出は困難でした。今回、双方の連携窓口を定めるとともに両者の産学連携推進担当者からなるProprius21推進委員会を設置して継続的な討議の場を設定し、これまでの友好的な関係を維持・発展させ、創造的な研究を目指した産学連携共同研究活動の一層の強化を図り、共同研究を通じて高度な研究開発力をもつ人材の養成等への貢献も期待して、本契約の締結に至りました。
【本契約の目的】
本契約では、東京大学の情報通信分野における世界トップクラスの研究者とNTTの研究・開発者が出合い、討議を通じて合意に至った共同研究において、価値創造を図ることを目的としています。創造された価値は、事業化をも視野にいれ、社会で受容される製品・サービスの創出へと昇華させることを目指します。情報通信分野において多様化する社会ニーズに対応するべく、多様かつ創造的な討議の過程で、互いのニーズおよびリソースのマッチングにとどまらず、これまでにない新たな組合せや新しいニーズの創出、それを実現するためのシーズ技術の創造・検証も共同で行っていき、独創的、分野融合的な技術発信のプラットフォームとなることを目指します。さらに、本連携を通じた共同研究への大学院生、ポスドクの積極的な参加の要請や、インターンシップ等による人的交流、技術交流によって、未来を担う若手研究者・技術者の育成への貢献も目指します。
【本連携の特徴】
(1)「Proprius21推進委員会」をプラットフォームとした連携の推進
東京大学とNTTの産学連携研究に関して合意を形成するプラットフォームとして、「Proprius21推進委員会」を設置します。メンバーは東京大学とNTTの産学連携を推進する委員からなり、本委員会での議論を通して、取り組むべき研究・開発課題等を抽出し、双方の研究者へ提案を行うことで、広範な領域に渡る多様かつ創造的な連携関係を構築します。
具体的な課題の抽出については、研究者が参加する研究会方式の「検討ワーキング」を設置して、情報通信分野における技術潮流や社会的課題も視野にいれた形で行い、討議を通じて連携テーマの創出に努めるとともに、ニーズの顕在化や産学の研究シーズの発掘を通して、課題の解決に取り組んでいきます。
従来から繋がりのあった研究連携についても、「Proprius21推進委員会」の活動を通じて一層の強化・緊密化を図るメリットを勘案しつつ、互いのニーズおよびリソースのマッチング・融合を進め、新たな連携や複数部局に跨る分野融合的な連携の創出の契機として支援していきます。
両者の研究推進担当者は共同で各研究プロジェクトの目標とする成果やスケジュール等を取りまとめ、定期的に開催されるProprius21推進委員会において、より大きな成果に結びつくよう、必要な見直し等を提案して参ります。
(2)研究活動の強化
本連携では、当面は、情報通信分野、特にブロードバンド通信分野、ユビキタス分野、メディア情報処理分野、および、ITを使いこなすための技術開発分野など、より豊かなIT社会の実現に向けた研究分野を中心に、共同研究等を推進します。これらの分野は、政府が掲げるIT新改革戦略※1の根幹を成す技術分野であり、急速な技術の発展、社会ニーズの多様化に対応し、広範な分野の知識を結集した研究開発、事業化が求められています。これらの社会的要求に対応するべく、同分野で両者がこれまでに培って来た高度な研究・開発力を結集したプロジェクトの企画・推進にも取り組むことで、イノベーションの創出と社会への還元・展開を図ります。
(3)大学院生、ポスドクの共同研究等への参加
本連携においては積極的にポスドク等が共同研究に参加する機会を提供するとともに、インターンシップ等による人的交流、東京大学とNTTの幅広い分野の研究者による技術交流など、それぞれの強みを活かす相互補完的な教育・人材育成活動にも積極的に取り組んでいきます。
【具体的な連携内容】本連携では、以下の取り組みを予定しています。
(1)中長期的将来戦略の検討
「Proprius21推進委員会」において、東京大学とNTTの研究者が、情報通信分野における技術潮流、社会的課題、事業的課題について討議、検討を行う場を設定し、新たな課題の明示化・共有を行い、それを解決するための研究シーズ発掘を通した、産学連携テーマ創出を図ります。このため技術面での研究連携にとどまらず、必要に応じて、社会、経済学分野の研究陣参加による横断的研究会の開催や、国際標準化活動なども視野に入れた検討を行います。
(2)共同研究等の実施
短中期的なネットワーク課題の研究に加え上記(1)で明確になった解くべき課題を具体的に共同研究として立ち上げます。同時に情報通信分野での当面の課題全般の解決についても「Proprius21推進委員会」活動を通じて取り組んで行きます。
(3)人材育成プログラムの推進
共同研究への積極的なポスドク、大学院生の参加の機会の提供、インターンシップ等を利用した人材交流、各種セミナの開催等を推進していきます。
<用語解説>
※1:IT新改革戦略
2006年1月に、政府IT戦略本部において策定された2006年以降のIT国家戦略です。「世界最先端のIT国家」を目指して取り組んできたe-Japan戦略の5年間の成果と課題を受けて策定されたもので、「構造改革による飛躍」、「利用者・生活者重視」、「国際貢献・国際競争力強化」の三つを基本理念とし、世界に先駆けて2010年度にはITによる改革を完成し、我が国が、持続的発展が可能な、自律的で、誰もが主体的に社会の活動に参画できる協働型のIT社会に変貌することが宣言されています。また、2007年4月には、「IT新改革戦略 政策パッケージ」が策定され、<1>効率性・生産性の向上と新価値の創出、<2>健全で安心できる社会の実現、<3>創造的発展基盤の整備を全体目標として、11の政策が策定されています。