NEC、一部のパケット観測で高精度にネットワーク品質を計測できる技術を開発
高速通信ネットワークに最適な品質計測技術を開発
~一部のパケット観測で、音声や映像配信のネットワーク品質を高精度に推定~
NECはこのたび、通信サービスで使われているさまざまなプロトコル(通信方式のルール)やその特性を考慮することにより、大規模化、高速化が進展する通信ネットワークにおいて、大量に流れるデータの一部(データ量1/100:注1)のみを観測するだけで、実際に利用する通信サービスの品質(通信量やパケットロス、遅延の発生有無など)を高精度かつ高効率に推定できるネットワーク品質監視手法を開発しました。
さらに、このたびの技術は、試験データを流す必要がないため、実際の通信サービスの品質に影響を与えることなく、通信サービスに適したきめ細かな品質監視を行うことができます。また、今後想定される大容量通信(ハイビジョン放送など)やその他の新サービスの登場に対しても容易かつ低コストで対応することができます。これによりNGN(次世代ネットワーク)に代表される大規模/高速ネットワークの高信頼化と安定性を実現することが可能となります。
このたびのネットワーク品質監視手法は、次の技術開発により実現しました。
(1)各通信サービスで使われるプロトコルの振舞いから、通信品質の監視で重要となる特徴を明らかにしました。そして、パケットサンプリング(注2)の際にその特徴が観測できる確率を解析的に明らかにしました。これにより通信量やパケットロス、遅延等の通信品質を統計的に推定します。
(2)上記通信品質推定におけるパケットサンプリングにおいて、ネットワークの負荷状況を監視するプロトコルであるsFlow(RFC3176)(注3)フォーマットを利用することができます。このため本技術のパッシブプローブ(注4)は、既存sFlowプローブの上位互換として機能させることができます。
近年、電子商取引やIP電話などの普及が示すように、IPネットワークは社会や多くの企業にとって重要なインフラとなっています。その中でも特にNGN(次世代ネットワーク)などで扱われる音声や映像配信などについては、パケットの遅延や欠落などによる品質劣化のない高品質なサービスを途切れなく利用できる環境が不可欠であり、ネットワークに求められる品質は一段と厳しくなってきています。そこで、ネットワークの品質と信頼性を維持するために、通信サービスの品質をきめ細かく把握することがますます重要となってきています。
一方、通信サービスの品質を詳細に把握するためには、従来はネットワークを流れる全てのパケットを監視する必要がありましたが、通信ネットワークが一段と大規模化、高速化する状況において、全てのパケットを監視することは今後運用管理コストの問題から、極めて難しくなることが懸念されています。さらに、NGN(次世代通信ネットワーク)の実現により期待される様々な新サービス(アプリケーション)に対して柔軟に適応できる新しい技術への期待も高まる中、このたびのネットワーク品質監視手法は開発されました。
NECでは、本成果が高速通信ネットワークの安定的な運用と運用コスト削減に大きく貢献すると考え、今後も研究開発を強化していきます。
本研究の一部は、総務省からの委託研究である「次世代バックボーンに関する研究開発」プロジェクトの成果です。
なお、本技術の成果を用いた運用管理ソリューションを、6月13日から15日まで幕張メッセ(千葉県・千葉市)で開催される「Interop Tokyo 2007」に出展します。
以 上
(注1)データ量1/100:測定条件に依存する。例えばパケットの先頭64バイト,サンプリング確率1/10でデータを観測した場合の数値。
(注2)パケットサンプリング:ネットワーク中を流れるパケットのうち一部を取り出して観測する方法のこと。
(注3)sFlow(RFC3176):インターネットの標準化団体(IETF)で規定されているパケットサンプリング技術のひとつ。パケットを特定割合で取得して、その一部分を取り出して観測する技術のこと。米国InMon Corp.によって情報公開されている。
(注4)パッシブプローブ:ネットワークを通過するパケットを受動的に観測する装置のこと。
【 本件に関するお客様からのお問い合わせ先 】
NEC 研究企画部 企画戦略グループ
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