アンリツ、第3.5世代携帯電話HSUPA方式対応のW-CDMAシグナリングテスタを発売
W-CDMAシグナリングテスタMD8480C機能拡充
業界初 第3.5世代携帯電話HSUPA方式規格に完全対応
アンリツ株式会社(社長 戸田 博道)は、W-CDMAシグナリングテスタ MD8480Cの機能を拡充。第3.5世代携帯電話システムHSUPA方式に対応したMD8480Cの販売を9月11日から開始いたします。
MD8480Cは、HSUPA方式基地局シミュレータ機能を実現。業界で初めて、3GPP規格Release6※1上の最大通信速度である上り(端末から基地局)5.76Mbps※2によるパケットデータ転送試験が可能となり、現在の基地局では作り出せないさまざまな通信状態で多様なHSUPA機能試験が行えます。また、すでにリリースしているMD8480CのHSDPA基地局シミュレータ機能を併せて利用することで、HSPA(HSUPA/HSDPA)方式携帯電話端末の試験環境の構築が可能。さらに、回線品質やユーザ配分に応じてより高速なデータ転送を行うHSPA方式に対応するために、1台で最大4つの基地局の信号出力を実現。携帯電話端末の開発・検証作業の効率向上に貢献いたします。
[開発の背景]
世界的な第3世代携帯電話サービスの普及とともに、モバイル環境におけるパケットデータ通信の高速化が急速に進んでいます。W-CDMAでは下り通信速度を高速化したHSDPAを用いた高速パケットデータ通信の商用サービスが各国で開始されていますが、上り通信速度の高速化を可能とするHSUPAも商用化に向けた研究開発が本格化しています。
このため、業界では、HSDPAに加えHSUPAに対応した基地局シミュレータ機能が強く求められていました。アンリツは、2005年3月に、HSDPA方式携帯電話端末の試験環境の構築を可能とするW-CDMAシグナリングテスタMD8480Cを開発。世界各国の携帯電話メーカやチップセットメーカに提供してまいりました。さらに今回、業界で初めて、3GPP規格Release6上の最大通信速度である上り5.76Mbpsによるパケットデータ転送試験を可能とし、HSUPA方式への完全対応を実現いたしました。これにより、HSPA(HSUPA/HSDPA)方式携帯電話端末開発における投資効率の高い試験環境の構築が可能となり、携帯電話端末の開発・検証作業の効率向上に貢献いたします。
HSUPA:High Speed Uplink Packet Access
W-CDMA第3世代携帯電話システムのパケット通信速度を高速化した方式。3GPP規格Release 6で規格化された。下り(基地局から端末)最大14.4Mbpsの高速データ通信が可能なHSDPAに対して、上り(端末から基地局)最大5.76Mbpsの高速データ通信が可能。回線品質やユーザ配分に応じてより高速データ転送可能なパラメータが自動的に選択される。2007年ごろからHSUPAを用いた商用サービス開始が予定されている。
[製品概要]
W-CDMAシグナリングテスタMD8480Cは、W-CDMA/HSDPA/GSM/GPRS基地局と同様な働きをする基地局シミュレータです。今回新たに機能を拡充し、HSUPA方式への対応を実現しました。上り最大5.76Mbpsでのデータ転送が行えるとともに、3GPP TS25.306※3に規定されたHSUPA方式の全てのUEカテゴリ※4をサポート。3GPP規格Release 6に準拠したHSUPA対応携帯電話端末の試験が可能です。
HSDPA機能と併せて利用することで、HSDPA/HSUPA方式に対応した携帯電話端末やチップセットの総合動作試験およびプロトコルシーケンス(端末と基地局の接続手順)試験が可能となります。
また、海外で幅広く用いられている第2世代携帯電話システムGSM/GPRS方式の高速パケット通信方式であるEGPRS※5基地局機能への対応も新たに実現しており、各種高速パケット通信サービスに対応した携帯電話端末の試験が1台で行えます。
[主な性能・機能]
□上り最大5.76Mbpsの高速パケットデータ転送速度を実現
W-CDMAより約15倍の高速パケットデータ転送(アップロード)を実現する第3.5世代携帯電話システムHSUPAの最大通信速度に対応。上り5.76Mbpsでのデータ転送試験が可能です。
□最大4基地局構成によるダイバーシチ※6状態でのハンドオーバ※7試験に対応
HSPA端末では、過酷なモバイル環境において安定した通信品質と高速パケット通信を実現するためにダイバーシチ受信機能を備えたデータカード端末が主流となっています。MD8480Cでは、オプション追加により、最大4基地局構成まで機能拡張が可能。ダイバーシチ受信機能を搭載した端末を評価するための機能を充実し、1台で実環境に近いローコストな試験環境を構築できます。
□HSUPA方式の6種類のUEカテゴリをカバー
業界で初めて、3GPP TS25.306に規定されたHSUPA方式の全てのUEカテゴリをサポート。将来機能追加が予定される3GPP規格Release 6に準拠したHSUPA対応携帯電話端末の総合動作試験やプロトコル試験が可能です。
□HSPA(HSDPA/HSUPA)とEGPRSシステム間ハンドオーバ試験に対応
HSUPA機能とEGPRS機能の追加により、実際のパケットデータ通信を継続した状態でのHSPAとEGPRSシステム間のハンドオーバ試験が可能です。
[対象市場・用途]
□携帯電話端末メーカ、チップセットメーカ
HSPA(HSUPA/HSDPA)、UMTS、W-CDMA、EGPRS、GSM携帯電話端末の開発市場
[営業情報]
□受注開始日 :9月11日
□予定販売台数(初年度1年間) :国内/海外計 200セット
□価 格 :・HSUPA方式携帯電話試験最小構成価格 1,300万円から
[用語解説]
※1 3GPP規格Release 6:3rd Generation Partnership Project 規格Release 6
第3世代(3G)携帯電話システムの国際的な標準化プロジェクト。規格策定時期によりRelease 99、Release 4、Release 5などがある。Release 6では、W-CDMA方式第3世代携帯電話システムの上り通信速度を高速化したHSUPAが規定された。
※2 Mbps:メガbits per second
デジタル通信で用いるデータ速度をあらわす単位。bpsは、1秒間に転送できるビット数であらわし、1M(メガ)bpsは、100万(10の6乗)ビットを1秒間に転送できる速度。文中の転送速度は全て規格上の理論値。
※3 3GPP TS25.306
3GPP規格でUE(User Equipment)の通信状態や設定条件を規定している規格。TS25.306 UE Radio Access capabilities
※4 UEカテゴリ:UE Category
3GPP TS25.306で規定されているHSDPA/HSUPA方式におけるUE(User Equipment)の通信状態や設定条件の種類。
※5 EGPRS:Enhanced General Packet Radio Access
GSM第2世代携帯電話システムのパケット通信方式GPRSを拡張し、高速化したパケット通信方式。欧米を中心に既にサービスが行われている。
※6 ダイバーシチ
複数のアンテナで受信した同一の無線信号について、電波状況の優れたアンテナの信号を優先的に用いる技術。あるいは、受信した信号を合成し、ノイズを除去する技術。
※7 ハンドオーバ:
携帯電話が接続する基地局を切り換える動作。ハンドオーバには、複数の基地局と同時に通信しながら瞬断なく切り換えるソフトハンドオーバと、瞬間的に通信周波数や通信システムを変更し瞬断が生じるハードハンドオーバがある。