キリン、造血幹細胞移植前治療薬「ブスルフェクス」の輸入承認を取得
造血幹細胞移植前治療薬
「ブスルフェクス(R)点滴静注用60mg」の輸入(製造販売)承認を取得
キリンビール株式会社(社長 加藤壹康)は、2006年7月26日に同種造血幹細胞移植の前治療薬として、「ブスルフェクス(R)点滴静注用60mg(一般名:ブスルファン)」の日本での輸入(製造販売)承認を取得しました。
「ブスルフェクス(R)」は、米国PDLバイオファーマ社によって製造販売されているブスルファンの注射用製剤で、1999年に米国で発売して以降、現在までにカナダ、イスラエル、EUで販売されています。アジア地域においては当社が2000年に販売権を取得し、既に韓国、台湾および中国の子会社を通じて販売しています。日本においては2002年より開発を開始し、2003年9月には希少疾病用医薬品※1の指定を受けています。長年使用されてきた経口のブスルファンによる治療上の問題点を解決することが期待されている薬剤です。
※1 希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ):国内での対象患者数が5万人未満、難病・重篤な疾患を対象とするなど、薬事法が規定する指定基準の要件に該当するものが厚生労働大臣により指定される。薬事法上、開発に係る経費の助成金の交付、承認申請の優先的な審査、再審査期間の延長など、いくつかの優遇措置を受けられることが規定されている。
同種造血幹細胞移植とは、悪性腫瘍等の患者さんの体内に残っている腫瘍を除去することや、正常な機能を持たない幹細胞を正常な細胞に置き換えることなどを目的として、健康な人(ドナー)から採取した多能性造血幹細胞※2を輸注することにより、造血能力や免疫能力を再構築する治療法です。白血病、悪性リンパ腫、骨髄腫などの悪性血液疾患や遺伝性疾患などを対象として、世界各国で実施されています。
※2 多能性造血幹細胞:すべての血球成分の元となる細胞で、白血球や赤血球、血小板、リンパ球などに分化する能力を持っている。造血幹細胞には自己再生能力があるため枯渇しない。骨髄中に多く含まれているが、さい帯血中や末梢血中にも含まれている。
同種造血幹細胞移植を行なう際には、移植した細胞を拒絶することなく無事に生着させるために、移植前に大量の抗がん剤や強力な放射線療法を用いて、徹底的に腫瘍細胞や異常細胞を除去します。しかし、放射線療法は甲状腺機能の低下や代謝異常、白内障などを起こす可能性があります。
一方、移植前の治療薬として今まで使用されてきた経口のブスルファンは腸管から吸収されるために個人差があり、正確な薬剤吸収量が把握できないことから、過少投与による生着不全や再発、または過剰投与による重篤な副作用の問題があります。今回承認を取得した「ブスルフェクス(R)」は注射剤にすることにより、経口のブスルファンでの問題点を克服し、吸収量を適正な範囲に維持することが可能となりました。これにより、造血幹細胞移植における生着率の向上や再発リスクの低減などが期待されています。
なお、当社では上市後に全投与例を対象とした使用成績調査を行う予定です。また、適正使用の観点から「ブスルフェクス(R)」の有効性と安全性に関する情報提供を医療関係者に適切に行っていきます。
当社はがん化学療法や造血幹細胞移植時に使用される白血球減少症治療薬「グランR(G-CSF製剤)」を販売しており、今回「ブスルフェクス(R)」の承認取得により、当社の重点領域のひとつであるがん領域における商品ラインアップの充実を図り、情報提供活動を強化します。
当社の医薬事業は、「腎臓」、「がん(血液分野を含む)」、「免疫・感染症」の3領域を重点領域として展開しており、今後も新たな医療価値を創造することにより最先端の医療に貢献していきます。
【 ブスルフェクス(R)の概要 】
製品名:ブスルフェクス(R)点滴静注用60mg
一般名:ブスルファン
輸入販売承認年月日:2006年7月26日
効能・効果:同種造血幹細胞移植の前治療
用法・用量:他の抗悪性腫瘍剤との併用において、ブスルファンとして0.8mg/kgを生理食塩液又は5%ブドウ糖液に混和・調製して点滴静注する。
本剤は6時間毎に1日4回、4日間投与する。なお、年齢、患者の状態により適宜減量する。
