グラクソ、「睡眠薬の服用と“うつ症状”に関する調査」結果を発表
~睡眠薬服用者を対象とした「睡眠薬の服用と“うつ症状”に関する調査」より~
20~50代の睡眠薬服用者の36.7%が“うつ症状”あり
グラクソ・スミスクライン株式会社(社長:マーク・デュノワイエ、本社:東京都渋谷区、以下GSK)は、東邦大学医学部心身医学講座教授 坪井 康次 先生監修のもと、2006年1~2月にかけて睡眠薬の服用と“うつ病”の関連性を明らかにするために、20歳以上の男女を対象としたアンケート調査*を行いました。
その結果、20~50歳代の睡眠薬服用者308名のうち、“うつ症状”を伴う人は36.7%であり、睡眠薬を服用していない同年代の人(15.6%)と比べて有意に高いことが明らかになりました。
本調査では、睡眠薬服用の経緯、医師の診断や問診の状況、服用期間、服用頻度、不眠以外の精神面の不調の状況などについて尋ねました。なお、“うつ症状”のスクリーニングには、精神疾患簡易構造化面接法である、M.I.N.I(The Mini-International Neuropsychiatric Interview)*の内容を自己チェック式として用い、DSM-IV*の大うつ病性障害の診断基準を満たした群を「うつ病」、診断基準は満たさなかったが“うつ症状”の項目に該当した場合を「うつ状態」とし、「うつ病」および「うつ状態」の該当者を「うつ症状」該当者として集計しました。
(調査方法の詳細は文末の参考欄に記載)
今回の調査結果により、主に以下の点が明らかになりました。
■20~50代の睡眠薬服用者のうち36.7%は“うつ症状”あり
20~50代の睡眠薬服用者308名のうち、“うつ症状”該当率は36.7%であり、睡眠薬を服用していない人(557名)の“うつ症状”該当率(15.6%)と比較して有意に高いことが明らかになりました。年代別にみると30代が50.8%と最も高く、20代45.2%、40代44.9%と続きました。また、集計対象から「うつ病の診断を受けている人」および「抗うつ薬を服用している人」を除外した場合(214名)でも、20~50代の睡眠薬服用者の32.2%は “うつ症状”に該当し、同条件での睡眠薬非服用者の“うつ症状”該当率(14.8%)と比較して有意に高い結果となりました。これらの結果は、睡眠薬服用者には“うつ症状”該当者が高い確率で潜んでいることを示唆しています。
■睡眠薬を「ほとんど毎日服用」と回答した人では“うつ症状”を伴う人は48.0%
睡眠薬の服用頻度について聞いたところ、20~50代の睡眠薬服用者214名(睡眠薬服用群から「うつ病の診断を受けている人」および「抗うつ薬を服用している人」を除外)の23.4%は「ほとんど毎日」と回答し、66.4%が「週に1回以上」と回答しました。 また、服用頻度別のうつ症状の割合を見ると、「数ヶ月に1回服用」と回答した人では“うつ症状”を伴う人の割合は26.9%と低値であったのに対し、「ほとんど毎日服用」と回答した人では“うつ症状”を伴う人は48.0%と高値でした。これらのことは、“うつ症状”を伴う人ほど、服用頻度が高い傾向にあることを示しています。
■“うつ症状”を伴う人では「いつも自分から睡眠薬の処方を依頼する」割合が高い
「現在服用している睡眠薬について、自分から医師に処方を頼んだことはあるか」の問いについて、20~50代の睡眠薬服用者214名(睡眠薬服用群から「うつ病の診断を受けている人」および「抗うつ薬を服用している人」を除外)のうち、“うつ症状”を伴う人の56.8%は、「いつも自分から睡眠薬の処方を依頼」と回答しているのに対し、“うつ症状”のない人では、その割合が28.7%と有意に低くなっていました。このことから、うつ症状を伴う人は睡眠薬の処方を自ら医師に依頼する傾向があることが示唆されました。
■“うつ症状”該当者は、睡眠薬を服用しても、「なかなか寝付けない」「熟睡できない」「朝早く目が覚めてしまう」 傾向あり
20~50代の睡眠薬服用者で、“うつ症状”該当者(69名)は非該当者(145名)と比較して、睡眠薬服用後も「なかなか寝付けない」(37.7%:22.1%)、「熟睡できない」(24.6%:13.1%)、「朝早く目が覚めてしまう」(23.2%:9.0%)などの症状発現率が有意に高い結果が示されました。
■“うつ症状”該当者の66.6%が睡眠薬服用開始時に自ら“うつ”を疑っているものの、44.9%は「不眠以外」の精神面の不調を医師に相談したことがない
睡眠薬服用開始時に“自分のことをうつかもしれない”と「強く感じた」あるいは「なんとなく感じた」割合は、“うつ症状”該当者(69名)が非該当者(145名)と比較して有意に高く(66.6%:39.3%)なっています。また、“うつ症状”該当者のほぼ全員(97.1%)が不眠以外の精神面の不調の改善を望んでいるものの、44.9%は不眠以外の精神面の不調について医師と相談したことがないと回答しました。
本調査を監修した東邦大学医学部心身医学講座 教授 坪井 康次先生は、「不眠はうつ症状の重要なリスクファクターであり、うつ病の典型的な随伴症状であることはよく知られています。今回の調査結果でもそのことが明らかになりました。また、うつ症状を伴う人は、実際にうつを自覚している人が多い一方で、主治医にそれらの症状を相談していないこともわかりました。睡眠薬を服用している患者さんは、不眠以外の精神面の不調についても主治医とよく相談することが重要です。医師と患者の十分なコミュニケーションは、漫然とした睡眠薬の服用を防ぎ、うつ病の早期発見・早期治療につながります」とコメントされています。
<参考>
*本調査について
本調査は、2006年1月20日~2月13日の期間に、調査会社(Ipsos日本統計調査株式会社)の全国モニターパネルの20歳以上の男女のうち、睡眠薬服用者を対象として実施した。睡眠薬の種類は、処方薬、OTC薬を問わなかった。20~50歳代ではインターネット調査を、60歳代以上ではインターネットでの回収率が低いことが懸念されたため、郵送調査を用い、睡眠薬服用の経緯、医師の診断や問診の状況、服用期間、服用頻度、睡眠薬に対する満足度、不眠以外の精神面の不調の状況などについて尋ねた。
また、うつ症状のスクリーニングには、簡易構造化面接法であるM.I.N.I.の大うつ病エピソードの内容を自己チェック式として使用した。DSM-IVの診断基準を満たした群を「うつ病」、診断基準は満たさなかったがうつ症状の項目に該当した場合を「うつ状態」とし、「うつ病」および「うつ状態」の該当者を「うつ症状」該当者として集計した。
なお、睡眠薬服用者のうつ症状の該当率は、60代以上に比べて20~50代で著明に高かったため、本研究では20~50代に焦点を当てて解析を進めることとした。コントロール群として、同じ全国モニターパネルから人口構成比に基づいて、睡眠薬を服用していない20~50代の男女を抽出し、「うつ症状」該当者の割合を睡眠薬服用者と比較した。また、統計学的検定は正規近似法を用い、有意水準は5%未満とした。
*M.I.N.I.(The Mini-International Neuropsychiatric Interview)とは
南フロリダ大学のSheehan教授らによって作成された、うつ、パニック障害、強迫性障害など19の精神障害の診断を行うための構造化面接法である。M.I.N.I.は約15分で施行でき、妥当性に関しては欧米の精神科医と一般臨床医が共同で検証し、感受性、特異性はともに高く、重要な下位分類まで肥えられることが証明されている。また、日本国内でも検証が行われ、臨床現場における信頼性、妥当性ともに証明されている
*DSM-IVとは
DSM-IVとは、アメリカ精神医学会の『精神障害の診断・統計マニュアル』(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)の第4版である
GSKは、うつ病啓発ウェブサイト「こころのくすり箱」(http://utsu.jp)を開設しています。本サイトでは、うつ病やうつ病の治療に関する理解をより深めていただく情報を提供しています。
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