東北大学など、ケミカルリフトオフによる縦型発光ダイオードの作製プロセス技術を開発
ケミカルリフトオフ技術を用いた
高輝度縦型発光ダイオード(V-LED)用の作製プロセスの開発に成功
東北大学学際科学国際高等研究センターの八百隆文教授と金属材料研究所のCHO Meoungwhan(チョ・ミョンファン)助教授の研究グループは、昨年(平成17年)4月に、窒化物半導体のデバイスプロセス技術に革新をもたらす金属バッファー層技術とケミカルリフトオフ技術を開発した。さらに、昨年12月にはこの金属バッファー層技術とケミカルリフトオフ技術を産学連携して展開することを目的としたケミカルリフトオフ技術基盤活用コンソーシアム(幹事会社:(株)東北テクノアーチ)を設立した。最近、同研究グループは、世界に先駆けて、この金属バッファー層を利用したケミカルリフトオフによる縦型発光ダイオードの作製プロセス技術の開発に成功した。これによって、高輝度発光ダイオード作製プロセスの大幅な改善が期待される。
ケミカルリフトオフ技術は、先ずサファイアー基板上に堆積した金属バッファー層上に良質な窒化ガリウム(GaN)膜及びGaN膜を用いた光デバイス及び電子デバイス構造を成長する。その後に、金属バッファー層を選択化学エッチングすることによって、基板から光デバイス構造あるいは電子デバイス構造を分離する。このようにして、縦型の光デバイス、あるいは電子デバイスを作製する工程数を大幅に減少させることが出来る。
縦型発光ダイオード(V-LED)は、現在主流となっている表面電極構造のLEDよりも更に高輝度化が可能なデバイス構造である。そのため、次世代高輝度白色LEDを実現するための本命の構造とみなされている。現在の縦型発光ダイオード(V-LED)の作製プロセスでは、レーザ光を用いてデバイス構造を基板から分離するレーザ・リフトオフ技術が主流となっている。しかし、この技術は、(1)レーザー光によってGaN層が損傷を受ける、(2)レーザ・リフトオフの前にサファイア基板の研磨プロセスが必要である、(3)ウエハーを一枚一枚処理する、いわゆる枚葉処理であり、多数枚一挙に処理できるバッチ処理が困難、等のデバイス作製プロセス上の問題があり、歩留まりが低く、VLEDの低価格化が難しい。これに対して、ケミカルリフトオフ技術は予め埋め込んでおいた金属バッファー層を化学的にエッチングして基板から分離するという非常にシンプルなプロセスであり、プロセスコストの大幅な低減、高い再現性、歩留まりの大幅な改善が期待できる。さらに、ウエハーを多数枚一挙に処理できるバッチ処理に適しているため、レーザ・リフトオフ法等の従来技術と比べて量産化に適している。これらの特長のために、高輝度LED素子作製の工程数の大幅な減少が可能になり、高輝度LEDの低コスト化を実現し、更には高輝度LEDの応用範囲を拡げるものと期待される。なお、今回開発したケミカルリフトオフ技術による縦型発光ダイオード(V-LED)の実現は、本技術のデバイス作製プロセス開発の第一歩であり、今後更に高周波電子素子やパワー素子等の窒化物半導体電子デバイスのプロセスへの応用も可能であることを強調したい。
*添付資料あり。