NTT都市開発など、屋上サツマイモ栽培でヒートアイランド対策効果の実証実験結果を発表
屋上サツマイモ栽培によるヒートアイランド対策効果の実証実験結果
~サツマイモの蒸散作用により太陽からの正味エネルギーの約80%を吸収~
NTT都市開発株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:三田清)と株式会社NTTファシリティーズ(本社:東京都港区、代表取締役社長:森勇)は、8月29日に報道発表させていただいたとおり(別添参照)、アーバンネット三田ビルの屋上において、サツマイモの水気耕栽培システム(以下、本システム)導入によるヒートアイランド対策効果の共同実証実験を実施してまいりましたが、測定の結果、サツマイモの蒸散作用により太陽からの正味エネルギー(*1)約80%を吸収する等高い効果があることが確認できましたので公表させていただきます。
1.測定結果
主な測定結果は、予定緑被率の70%以上で、かつ天候が比較的安定していた8/13~19の週のデータで示します。なお、測定はサツマイモで緑化している「サツマイモ緑化区」と、緑化していない「無処理区」との比較実験を行ないました(図1)。
【図1】比較実験概要図
※添付資料を参照
(1)蒸散作用により太陽からの正味エネルギーの約80%を吸収
日照時間(6:00~18:00)の熱収支(*2)を集計した結果、無処理区は太陽からの正味エネルギーの約90%が顕熱(*3)となり、ヒートアイランドの要因となっていることが確認されました(図2-1)。
一方サツマイモ緑化区は、今年の日照時間が平年に比べ7割程度と低く、サツマイモの生育が遅れたにもかかわらず、太陽からの正味エネルギーの約80%がサツマイモの蒸散作用により吸収されていることが確認されました(図2-2)。
【図2-1 無処理区の熱収支】
【図2-2 サツマイモ緑化区の熱収支】
※添付資料を参照
(2)屋根表面温度を最大27℃低下
無処理区の屋根表面温度は最高温度55℃となり、屋根コンクリートがヒートアイランド現象の要因となっていることが分かりました。一方サツマイモ緑化区は最高温度28℃にとどまり、最大温度差が27℃であることから高いヒートアイランド緩和効果が確認されました(図3)。
サーモカメラで撮影した画像からも、サツマイモ緑化区が屋上温度上昇を緩和していることがわかりました(図4)。
【図3 サツマイモ緑化区と無処理区の温度変化】
【図4 サーモカメラ画像】
※添付資料を参照
(3)100m2のサツマイモ緑化区から約100kgの芋を収穫(見込み)
芋の収穫用に設置したプランターを試し掘りしたところ、1プランターあたり約5kgの収穫がありました。
100m2の緑化(21プランター設置)で約100kgの収穫を見込んでいます。
2.今後展開
今回の実証実験の結果を踏まえ、NTT都市開発はヒートアイランド緩和対策として自社所有ビルへの本システムの展開を検討するとともに、地球温暖化の抑制や自然環境との共生など、環境保全活動を積極的に推進してきます。
NTT ファシリティーズはシステムの改良、コストダウンの検討を行い、市場から広く受け入れやすくヒートアイランド対策に有効なソリューションの一つとして開発を進め、他の対策と合わせ、各々のビルに最適なヒートアイランド対策の一環として提供していきます。
3.用語解説
*1 正味エネルギー
正味放射量のこと。太陽から地上に降りそそぐエネルギー量から地表面反射された分を差し引いた正味の太陽正味エネルギー量
*2 熱収支
ある面への入力エネルギー(太陽からの正味エネルギー:正味放射量)と出力エネルギー(顕熱・潜熱・伝導熱)とのバランス。一般的には次式で示される。
「太陽からの正味エネルギー(正味放射量)=顕熱+潜熱+伝導熱」
*3 顕熱
ヒートアイランド現象の大きな要因である気温を上げる熱。
( ⇔ 潜熱サツマイモの葉の蒸散作用で気化熱として消費される熱であり気温上昇を緩和)
*4 伝導熱
屋上面から建物に伝わる熱。プラス(+)が建物への蓄熱、マイナス(―)が建物からの放熱を表す。
※詳細は添付資料を参照