日立、ナノインプリントの生産性を約100倍向上させる技術を開発
ナノインプリントの生産性を約100倍向上させる技術を開発
株式会社日立製作所(執行役社長:古川 一夫/以下、日立)は、池上金型工業株式会社(代表取締役会長:池上 恵蔵/以下、池上金型工業)、株式会社日立プラントテクノロジー(執行役社長:住川 雅晴/以下、日立プラントテクノロジー)と共同で、微細パターン転写加工の生産性を約100倍(当社比)向上するシートナノインプリント技術を開発しました。本技術は、被転写体となるフィルムを上下のベルト状に並べたナノ金型の間に挟んで搬送するもので、フィルムの加熱、パターン転写時の加圧、フィルムとナノ金型の剥離などプリント工程の連続処理を可能とするもので、大面積への転写と生産性の向上を実現することができます。
本開発は、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からの委託業務「ナノテク・先端部材実用化研究開発」の一環として行われたものです。
ナノインプリント技術とは、ナノスケールの微細な凹凸のある型のパターンを樹脂薄膜フィルムなどの被写体へ転写する成型加工技術であり、次世代のキーデバイス開発などの分野で応用されてきています。ナノインプリント技術は、半導体製造装置などの既存技術と比較してナノスケールの構造を低コストで製作することが可能ですが、従来は、平行平板方式のプレス機構によって成型していたため、大面積への転写や連続加工には不向きであり、微細パターンデバイスの大量生産面で課題がありました。
そこで、日立、池上金型工業、日立プラントテクノロジーは、平行平板方式に替わる新しいプレス機構として、ベルト状金型によるシートナノインプリント技術を開発しました。開発した基本技術の特徴は、以下の通りです。
1.ベルト状ナノ金型技術
薄板ステンレス製ベルトの表面に、アスペクト比2(直径200nm)を有するニッケルめっき箔で形成したナノパターンを配置し、ベルト状のナノ金型を開発しました。
2.シートナノインプリント装置技術
ベルト状に配置したナノ金型とフィルムとを同期搬送し、加熱、加圧、剥離の各工程を連続化する技術を開発しました。従来の真空引きや昇温・降温のための時間が不要となり、生産性の飛躍的な向上が実現可能です。
これら技術により、大面積への転写と生産性の向上を両立するナノインプリント加工を実現しました。また今回、本技術を用いて、高アスペクト比(直径200nm、高さ280nm)の柱状微細構造を有する長さ15mの長尺フィルムへの連続転写に成功しました。
今回開発した技術は、今後、ディスプレイパネル部材の光学シートや、燃料電池の電解質膜、ナノバイオ分野における細胞培養シートなどのプリント加工への応用展開が期待されます。
本成果は、11月15日から米国サンフランシスコで開催される「ナノインプリント・ナノプリント国際会議」において発表する予定です。
以上