NTTインフラネットと大成基礎設計、「全周画像を用いたトンネル検査システム」を開発
「全周画像を用いたトンネル検査システム」による検査業務開始について」
~トンネルの効率的な維持管理と点検費用の大幅なコストダウンに向けて~
エヌ・ティ・ティ・インフラネット株式会社(本社:東京都中央区,代表取締役社長:米重太平、以下 NTTインフラネット)と大成基礎設計株式会社(本社:東京都文京区、代表取締役社長:平山光信,以下 大成基礎設計)は、「全周画像(360°レンズ)を用いたトンネル検査システム(略称 Tunnel Inspection System with 360 degrees:TIS360、以下 本システム)」の共同開発を完了し、平成18年11月27日(月)より検査業務を開始致します。
1.背 景
1999年に発生した山陽新幹線のトンネル覆工崩落事故以来、道路・鉄道トンネルなどでは点検を強化し、変状の有無や劣化状況をデータベース化する動きが目立ってきております。従来のトンネル点検では、人間が目視で観察しスケッチする方法が主体であったため、変状であるひび割れ・漏水・ジャンカ※等を記録・分析する上で客観的な評価や精度の面で不十分であるとの指摘がされていました。
本システムは、このような背景の中、トンネルの変状の有無や変化を的確に捉える必要があるとの認識から、共同開発したものです。
※ジャンカとは、打設されたコンクリートの一部に粗骨材(砕石等)が多く集まってできた空隙の多い構造物の不良部分をいう。コンクリートを打設するときの材料分離、締固め不足、型枠下端からのセメントペーストの漏れなどによって生じる。
2.概 要
本システムは、トンネル等空間構造物を撮影し画像処理により劣化状況を診断するものです。また診断結果はデータベース化することが可能です。
(1)撮影機器
1)高解像度のデジタル一眼レフカメラに360°全方位を撮影することの出来る特殊なレンズを装着し、周囲に8台のストロボを装備しています。(写真-1参照)
2)一人でも運搬できるほど軽量でコンパクトです。(写真-2参照)
(2)撮影方法
1)撮影機器を搭載した台車をトンネル軸方向に動かすことで自動的にシャッターが切れ、順次、トンネル全周を撮影して行きます。(写真-3参照)
2)撮影スピードは、歩行速度程度です。
3)ある区間のトンネル全周をワンショットで画像として取り込み、それらの画像を展開・貼りあわせすることで、トンネル全体の画像展開写真を得ることになります。
(1)画像処理方法
1)撮影された画像は円形をしているため、今回開発したソフトを使用して展開し、トンネル形状に合わせた歪み補正を行い、短冊状の写真を取得します。(写真-4・写真-5参照)
2)その短冊状の画像を半自動貼り合わせソフトを使用し接合することにより、トンネル全体の画像を取得できます。(写真-6参照)
3)その貼り合わされた画像からひび割れの半自動認識ソフトを介してコンクリートのひび割れ幅・長さ・パターンを取得できるほか、漏水・ジャンカなどの欠陥部の位置・面積などの情報を得ることが出来ます。また、ソフトを介して3次元画像としても表現できます。(写真-7参照)
4)このように取得されたトンネルデータは劣化することなくデータベースとして保存することが可能であり、経年変化に伴う変状を的確に把握することが出来、効率的な維持管理が可能となります。
3.特 長
従来の画像点検システムと比較して大幅な点検費用のコストダウンを実現しています。
(1)点検費用はデジタルビデオカメラシステムに比較して1/2程度の大幅なコストダウンを実現しています。
(2)一人で持ち運びできる程度の軽量・コンパクト化を実現しました。
(3)画像展開・歪み補正・画像貼り合わせ・ひび割れ認識などソフトが充実しているため、点検結果報告までスピーディに業務を行うことが出来ます。
(4)点検結果はデジタル納品であり、市販ソフトを使用したデータ出力・管理も可能です。
4.業務費用
業務費用については、1kmで300~500万円程度ですが、対象構造物の規模および撮影距離により大きく変動がありますので、お問い合わせください。
5.検査業務開始日
平成18年11月27日(月)
6.適用分野
片側1車線の道路トンネル、単線鉄道トンネル、導水路トンネルなど
7.その他
本システムは、NTT通信トンネルで3件、道路トンネルで3件の実トンネルへの適用実績を有しており、その有効性は立証されています。また、一連の開発については,特許出願中です。
*参考図は、添付資料をご参照ください。