米ファイザー、「リピトール」で慢性腎疾患患者の心臓発作と脳卒中発症に抑制効果
リピトール(R)による積極的脂質低下療法により慢性腎疾患(*)の患者さんの心臓発作と脳卒中発症の三分の一が抑制される。
-大規模臨床試験の再解析で証明-
・ 心疾患既往のある慢性腎疾患の患者さんの心臓発作と脳卒中のリスクが、リピトール(80mg)を用いた積極的脂質低下療法で、低用量(10mg)群に比べて32%低下。
・ 慢性腎疾患の患者さんは米国で2千万人、世界で5千万人いると推定されており、これらの患者さんは、腎不全を発症するよりも心疾患で死亡する確率のほうが高い。
・ 治験責任医師のコメント「リピトールによる積極的な治療により、腎疾患のある患者さんの心臓発作と脳卒中のリスクが低下し、腎機能が改善しうるということです。この解析では、経時的に予想された腎機能の低下が、リピトール10mg療法で停止可能であり、さらにリピトール80mg療法では腎機能を改善させる可能性があるということです。リピトールの慢性腎疾患に対する用量依存的な効果はこの試験で初めて明らかにされました」。
イリノイ州シカゴ、2006年11月15日-新たな解析結果によると、リピトール(一般名:アトルバスタチン・カルシウム水和物)80mg錠を服用した心疾患既往のある慢性腎疾患の患者さんの心臓発作と脳卒中のリスクが、リピトール10mg錠を服用した患者さんのリスクに比べて32%低下しました。この解析は5年間におよぶTNT(Treating to New Targets)試験に参加した患者さんのサブ解析に関するものであり、本試験終了後に設計され、解析が完了しました。今回のデータは、本日、米シカゴで開催されているアメリカ心臓協会(AHA: American Heart Association)の年次学術大会で発表されました。
TNT試験の一次エンドポイントは、心疾患死、非致死的心臓発作、心停止後の蘇生、および致死的/非致死的脳卒中などの主要な心血管イベントの抑制でした。今回の新たな解析では中等度から重度の慢性腎疾患(腎機能の標準的な基準によって定義)のある患者さん3,107名が解析対象となりました。この解析において示された有効性は基本的には心臓発作と脳卒中の減少によってもたらされたものです。
TNT試験の開始時に慢性腎疾患がある患者さんは、リピトール10mgでも80mgでも腎機能の改善を経験しました。また、リピトールの忍容性はいずれの用量でも良好でした。
TNT運営委員会のメンバーでグラスゴー大学医学校の病理生化学部門で臨床学術コンサルタントをつとめるジェームス・シェファード博士は次のように述べています。「リピトールによる積極的な治療により、腎疾患のある患者さんの心臓発作と脳卒中のリスク低下、および腎機能の改善につながる可能性があるということです。この解析が示唆するところは、経時的に予想される腎機能の低下はリピトール10mg療法で停止可能であり、さらにリピトール80mg療法では腎機能を改善させる可能性があるということです。リピトールの慢性腎疾患に対する用量依存的な効果はこの試験で初めて明らかにされました」。
慢性腎疾患、もしくは外傷や疾患に起因する恒久的な腎損傷の患者さんは米国で推定2千万人、世界では5千万人にのぼります。慢性腎疾患の患者さんは血中の毒素を効果的にろ過することができません。慢性腎疾患が進行して腎不全に至ると人工透析または腎臓移植が必要となります。近年、慢性腎疾患は心血管疾患の重要な危険因子と考えられるようになっています。心血管疾患は腎疾患の患者さんの死亡・疾病の最大の要因です。慢性腎疾患のある人々においては、腎不全を発症するよりも心疾患で死亡する確率のほうが高くなっています。
ファイザー世界メディカル部門のシニア・ヴァイス・プレジデントであるマイケル・ベレロウィッツ博士は次のように述べています。「この解析はリピトールが広い範囲の患者さんの治療において心臓発作や脳卒中などの予後をいかに改善するかということについての臨床情報をさらに充実させるものです。リピトールは、ハイリスク患者および中等度から低リスクの患者さんにおける有効性と安全性を確立しており、今後もそのことを示し続けていくでしょう」。
ベレロウィッツ博士は付け加えて次のように述べています。「慢性腎疾患の患者さんはその他の病気のための様々な薬剤を服用しがちになりますので、患者さんと医師にとって薬剤間相互作用および投薬量の調整が重要な臨床的配慮の対象となります。国立腎臓財団のガイドラインによると、腎機能障害のある患者さんにおいてリピトールの投薬量を調整する必要はありません。それゆえ、このサブ解析の結果は、ハイリスク患者母集団にとって極めて重要なのです」。
心疾患は米国最大の死亡原因であり、コレステロール値の高い米国人の過半数はコレステロールの治療目標レベルを達成していません。高いコレステロール値は心臓発作の主要な原因の一つです。「全米コレステロール教育プログラム」で提示されている最新のガイドラインでは、心血管疾患のリスクのある患者さんについて、食生活の改善と運動に加えてリピトールのようなコレステロール低下剤で治療することが推奨されています。
TNT (Treating to New Targets)試験について
TNTは治験医主導型の大規模試験であり、独立した運営委員会によるコーディネートのもとに、ファイザー社が資金を拠出して行なわれました。リピトール80mgの有効性と安全性を評価するために行なわれた試験としては過去最大であり、参加者は14ヶ国の35歳から75歳までの冠動脈心疾患のある男女合わせて10,001名で、平均5年間のフォローが行なわれました。
(*)慢性腎疾患として、eGFR(推定糸球体濾過率)<60mL/min/1.73m2の患者さんを対象