NECエレクトロニクス、多電源システムLSI用の静電気放電保護技術を開発
90ナノノード以降の多電源システムLSIにおける静電気放電保護技術の開発について
NECエレクトロニクスはこのたび、独立した電源系を有する回路を多数1チップ上に集積した多電源システムLSIにおいて必要となる静電気放電保護手法を開発いたしました。
新技術は、異なる電源系の回路間のインタフェース部を静電気放電(ESD:electrostatic discharge)から保護する技術で、(1)各電源系のESD耐性を向上させた新型の電源ESD保護素子、および(2)放電が発生した際に、異なる電源系の接地端子(GND: ground)間に流れる電流を検知して動作する2種類のESD保護回路をそれぞれ開発したものであります。
当社ではこの技術は、90ナノノード以降のシステムLSIの信頼性向上に大いに貢献すると考えております。
90ナノノード以降、プロセスの微細化に伴い、トランジスタのゲート絶縁膜も1.6ナノメートル程度になる薄膜化が進行し、静電気放電に対するトランジスタ耐性が著しく低下してきております。
このような状況のもと、特に携帯電話向けLSI分野において、機能ブロックごとに構成された回路への効率的な電源供給を行なうための低消費電力化対策として、多いものでは10個以上の独立した電源系を有する回路を1チップ上に集積するケースが増えてまいりました。また、それ以外の応用分野においても、高速インタフェースやアナログブロックのノイズ耐性向上を図るため、同様に1チップ上に複数の電源系を有する回路を集積するケースが多くみられるようになりました。
しかしながら、これらの多電源システムLSIにおいては、静電気放電経路の構築が複雑になり、異なる電源系を有する回路間のインタフェース部分における静電気放電保護は困難となり、市場からはこれらを解決する技術の早期開発が求められておりました。
当社は、かねてより先端微細プロセスを用いた多電源システムLSIの静電保護技術開発活動を推進してまいりましたが、このほど静電気放電時に異なるGND間に流れる電流に着目することにより、90ナノノード多電源システムLSIの静電保護を実現したものです。
新技術の主な内容は次の通りとなっております。
(1) 電源ESD保護素子
レイアウト技術を工夫することにより、電流制限用抵抗として、従来の拡散層を用いた抵抗素子を用いる代わりに、微細コンタクトの抵抗成分を利用することで、面積を最小限に留めかつ高い性能が発揮できる素子を実現した。同一面積で90ナノノードの1.6ナノメートルの薄膜トランジスタに対して、従来比3倍となるESD保護性能を確認している。
(2) 2種類のESD保護回路
静電気放電時のみ流れるGND間の電流により発生する電位差をNMOSトランジスタが検知し、インタフェース信号ラインの電圧上昇を抑える「GND電流トリガー(GCT)式インタフェース保護回路」、および同様にGND間の電流により発生する電位差をNMOSトランジスタが検知し、機能ブロック間のバイパス保護であるサイリスタ保護素子のトリガー回路となる「GCTトリガーSCRクロスクランプ式保護回路を開発した。「GND電流トリガー式インタフェース保護回路」により従来の1/7の面積でかつ、2.5倍の保護耐性となるMM規格で500V、HBM規格で7000Vを実現した。また、「GCTトリガーSCRクロスクランプ式保護回路」により従来必要であった分離された電源間のインタフェース保護が不要となるため、回路の小型化に貢献できる。
当社では電源ESD素子は90ナノノードの、2種類のESD回路は55ナノノードの製品より応用が可能だと考えており、今後もこれらの技術の開発を積極的に展開したいと考えております。
なお当社は、今回の成果を、9月10日から15日まで、米国アリゾナで開催される「EOS/ESDシンポジウム」において発表いたします。
以 上