富士経済、加工食品市場調査(2)結果を発表
2006年の加工食品市場調査(2)を報告
総合マーケティングビジネスの(株)富士経済(東京都中央区日本橋小伝馬町 代表取締役 阿部英雄03-3664-5811)は、06年8月から今年の食品産業界について調査を行っている。その第2、3回目の結果を報告書「2007年 食品マーケティング便覧No.2、No.3」にまとめた。
来年2月まで5回に分けて食品産業界の動向と今後の展望、有力企業のマーケティング分析などをまとめて順次報告する。
< 注目加工食品 >
ビール関連市場
国産ビール、国産発泡酒、ビール風味アルコール飲料(第三のビール)、プレミアムビール、ビアテイストアルコール飲料と関連するアルコール飲料を含めた市場の流れは、90年代、ビール市場は成熟して横ばいを続けていたが、94年に登場した発泡酒がビールに代わり実績を大きく伸ばした。01年にはアサヒビールが発泡酒に新規参入してヒットさせ、ビール類の販売量はわずかに伸びたが、販売額は前年を超えなかった。03年には焼酎、チューハイ、ビアテイスト飲料などに需要を奪われて、ビール類は前年比93%に減少した。04年は猛暑の影響に加え、ビール風味アルコール飲料の市場が本格的に立ち上がり、発泡酒需要も取り込んで前年を大きく上回る販売量を記録した。しかし、ビール類の販売額は安価なビール風味アルコール飲料が増加したため前年を超えるには至らなかった。05年はキリンビール「のどごし生」、アサヒビール「新生」などビール風味アルコール飲料が新たに加わり活性化したが、発泡酒が前年比75.3%と大幅に縮小、ビールも微減となったため、販売額では95%と引き続き減少した。減少要因のひとつはメーカーから提案された新取引制度が導入された影響もあった。06年は酒税法改正によりビール風味アルコール飲料が値上がりし、夏場の天候不順もマイナス要因となった。一方で、景気の回復とともに高付加価値のプレミアムビールの需要が高まっている。
* ビール類は、国産ビール、発泡酒、ビール風味アルコール飲料、輸入ビール類を加えた市場
新取引制度の定着や酒税法改正などが市場に微妙な影響を与えているが、低価格のビール風味アルコール飲料市場の成長と、プレミアムビールの好調ぶりから、需要の二極化が鮮明になって来た。チューハイなど栓を開けてグラスに移しかえず飲む低アルコール飲料(RTD) も市場がほぼ飽和しつつあり、ビール類からの需要流出も一段落した感がある。長期的には、さまざまな商品構成で需要を拡大しているRTD市場や焼酎に需要を奪われていくと見られる。
●国産ビール
06年見込み1兆4,134億円(前年比99.4%) 07年予測1兆4,002億円(前年比99.1%)
国産ビールは、97年以降、発泡酒に続きビール風味アルコール飲料の台頭で減少を続けて06年の見込みは98年の販売額の60%を下回る。05年は大手量販店をはじめ交渉が難航した新取引制度導入と、ビール風味アルコール飲料の伸びにより減少。06年は税制改正に伴い、国産ビールは350ミリリットル当たり77円で0.7%減税され、トップブランドの「スーパードライ」が前年クリアで推移していること、昨年新取引制度に伴う影響から販売競争を抑えていた反動もあり、市場は微減に留まると見られる。価格面ならビール風味、品質面ならビールといった棲み分けにより市場の縮小に下げ止まりが見られ、景気の回復もあり、市場が安定してくることが予想される。
●発泡酒
06年見込み4,131億円(前年比85.8%) 07年予測3,782億円(前年比91.6%)
94年にサントリー「ホップス」の参入によって、ビールの代替として急成長を遂げてきた。01年にアサヒビールが4大メーカー最後の参入を果たして同年の年間販売量は200万キロリットルを突破し、日本における代表的なアルコール飲料として地位を固めた。02年もキリンビール「淡麗」のサブブランドとして糖質70%カットタイプの「淡麗グリーンラベル」が投入され、初年度で1,300万ケースを超える好業績を挙げた。「極生」に端を発した、各社10円値下げキャンペーンなどの活性策により、数量ベースで15%も増加した。03年の税制改正によって発泡酒が増税されたことと、冷夏が重なって市場は初めてマイナスに転じ、04年はビール風味アルコール飲料が発売されて大きなダメージを受けた。05年は新取引制度による影響、キリンビール、アサヒビールの参入によりビール風味アルコール飲料の市場が拡大したことが影響して大幅な減少を続けた。06年5月の税率アップでビール風味アルコール飲料が値上げされ発泡酒との価格差が縮まって一時的に前年比をクリアしても勢いは続かず、通年では各社前年割れの推移を辿っており、今後も市場全体では減少が続くものと見られる。
●ビール風味アルコール飲料(第三のビール)
06年見込み2,965億円(前年比119.3%) 07年予測3,336億円(前年比112.5%)
ビール風味アルコール飲料は「第三のビール」と呼ばれ、酒税法上、「リキュール類」や「その他雑酒」に分類される。ビールや発泡酒規格に属さない商品の開発が進められ04年にサッポロビールが「ドラフトワン」、サントリーが「麦風」を発売したことに端を発する。「ドラフトワン」は大ヒットとなり半年余りで一気に一大マーケットを築いた。05年はキリンビール「のどごし生」、アサヒビールも「新生」で追随し、大幅な躍進を果たした。「のどごし生」は大規模な宣伝活動を継続的に展開し、トップに踊り出る急成長をした。今年は酒税法改正でビール風味アルコール飲料は増税された。上半期はサッポロビール「ドラフトワン」が苦戦を強いられたものの、参入各社は「ぐびなま」、「ジョッキ生」など新商品を次々に投入するなど販売に最も力を入れており、引続き好調に実績を拡大していく見込みである。
●プレミアムビール
06年見込み783億円(前年比123.5%) 07年予測847億円(前年比108.2%)
サッポロビール「ヱビス」が古くからレギュラー品と同様の認知度を維持しつつプレミアム性の高いブランド力を誇ってきた。05年にサントリーの「ザ・プレミアム・モルツ」がビール部門で日本初のモンドセレクション最高金賞を受賞したのを機に、前年比200%超の実績を記録し、市場を牽引するまでに成長した。また、サッポロビール、アサヒビールの商品も続伸して、トータルでは前年比8%増となった。市場はビール風味アルコール飲料など低価格ゾーンの市場が大きく伸びる一方で、高価格のプレミアムビール市場が活況となり、消費の二極化傾向が鮮明になった。06年は参入各社が次々に新商品を投入して、贈答品向けの拡大や業務用市場の販売に注力する動きが目立っており、大幅な伸びを続けると見られる。
* モンドセレクション最高金賞:世界的に権威のある食品品評会の最高賞。1961年ベルギー政府とECが共同して食品の品質向上を目的として始めた。
●ビアテイスト飲料
06年見込み74億円(前年比89.2%) 07年予測77億円(前年比104.1%)
86年、宝酒造が「バービカン」を市場に投入したことに端を発する。ビールとの味覚差や商品訴求が消費者に十分伝わらず小規模のまま推移していた。02年の道交法改正により飲酒運転の罰則が強化され、外食店やゴルフ場などの引きあいが増えて前年比倍増の64億円となった。03年は市場の活況を背景にビールメーカーが一斉に参入して前年比倍増の132億円に成長した。ビアテイスト飲料の需要は業務用に留まらず、ビール・発泡酒の消費者などから"休肝日"向けの飲料、女性のダイエット目的に飲用されるなどの新たな需要創出が見られた。04年に入ってからはブームが急速に縮小し、ビール・発泡酒などと比較して味覚面で厳しい評価を受けて市場は減少を余儀なくされた。05年は各社とも再び需要を喚起するために商品のリニューアルや大々的なTVCMを積極的に展開した。業務用の需要は減少が続くものの、一定のニーズを保つことが出来た。市販用の需要が大きく減少して、トータルでも実績を大きく落とすことになった。06年は飲酒運転への取締りがますます強化され、レストランやホテルを中心に引き合いを強めており、業務用の回復により一定の需要を保つ見込みである。
●低アルコール飲料(RTD)
06年見込み1,800億円(前年比101.8%) 07年予測1,875億円(前年比104.2%)
チューハイやカクテルドリンク、水割り洋酒をRTD市場(低アルコール飲料)とする。消費者のライト志向を反映し、参入各社が新規商品を次々に投入して市場が活性化し拡大を続けてきた。01年にキリンビールが発売した「氷結」は"すっきり感"、"果汁感"が消費者から圧倒的に支持され、大ヒット商品となった。「氷結」は市場のトップブランドとなり、低価格チューハイはアルコール市場の中でも伸長余地のある市場として注力度が高まった。05年は引続き各社の新商品の投入や販促活動によるマーケティングの大型投資の結果、市場は前年比106.3%に拡大した。06年はプレミアム商品の積極的な展開の他に、「サントリー チューハイ沖縄シリーズ」(サントリー)に始まった"地域"を切り口とした商品が好調である。また、「カクテルパートナー」(アサヒビール)も引き続き伸びており、トップブランドである「氷結」が伸び悩みを示しているものの、市場全体では前年クリアが見込まれる。
< 調査結果の概要 >
「2007年食品マーケティング便覧」では、29分野365品目の市場動向調査を5巻に亘って収載し、6巻目の「総括編・2007年のフードビジネス」では、新たな活路を見出す食品産業界の動向と今後の展望、有力企業50社のマーケティング分析などを報告する。
第2巻の「2007年食品マーケティング便覧 No.2」では、菓子、スナック菓子、アルコール飲料、スープ類の計4分野80品目の市場動向を収載した。
菓子では、チョコレートがビター系商品を中心とした無垢チョコレートの増加によって市場が拡大している。反面、これまで成長してきた「キシリトール」など機能ガムが減少しており、フィギュアブームを巻き起こして急拡大した玩具・雑貨菓子は04年からブームが去って深刻な需要減退が続いている。
アルコール飲料では、躍進を続けるチューハイによってRTD(低アルコール飲料)が好調である他、ワンランク上の需要を狙ったプレミアムビールが増加している。また、ビール風味アルコール飲料(第三のビール)は、本格的な市場の誕生から三年目を迎えても2桁成長を続けている。発泡酒は、これに需要を奪われて急速な減少を続けている。
第3巻の「2007年食品マーケティング便覧 No.3」では、チルドデザート、フローズンデザート、ドライデザート、乳油製品、米飯類、めん類、その他ステープルの計7分野68品目の市場動向を収載した。
06年、ヨーグルトでは消費者の健康志向の高まりを背景にメディアの強い影響力により、プレーンヨーグルトは好調な動きをみせハードヨーグルトもマイナス推移から一転してプラス成長を果たした。
フローズンデザートは、主力のアイスクリーム類が縮小する中で、企業の優勝劣敗が分かれている。基幹ブランドの強化に商品施策が集中する傾向が見られる一方で、昨年発売された森永乳業「PARM」は上質感、値頃感がヒットにつながっており、マルチパックアイスクリームの商品開発の切り口として注目を集めている。
乳油製品では、原料高からチーズ類の値上げが05年から06年にかけて実施されて数量ベースでは微減であったが金額ベースでは前年を上回る見込みである。
米飯類では、冷凍米飯類はピラフやチャーハンを筆頭に順調な推移をみせている。無菌包装米飯のうち、白飯商品は需要を拡大している。めん類では、全体的に飽和感が漂うなか、冷凍めんに勢いがあり、特に高価格帯の冷凍パスタが大幅に増加している。
その他ステープルでは、栄養バランス食(ソリッドタイプ)は大塚製薬の新ブランド「SOYJOY」投入によって市場は大きく拡大する見込みである。
調査方法
当社専門調査員による関係企業、官公庁の聞き取り、および関係各方面の公表データの分析結果を参考にしてまとめた。
報告書「2007年 食品マーケティング便覧No.2」の収載分野と品目数
<菓子>31品目 <スナック菓子>9品目 <アルコール飲料>28品目 <スープ類)>12品目 計80品目
報告書「2007年 食品マーケティング便覧No.3」の収載分野と品目数
<チルドデザート>9品目 <フローズンデザート>7品目 <ドライデザート>8品目 <乳油製品>13品目
<米飯類>9品目 <めん類>13品目 <その他ステープル>9品目 計68品目
調査時期:2006年8月~11月に実施
以上
資料タイトル(1):「2007年 食品マーケティング便覧 No.2」
体 裁 :A4判 229ページ
価 格 :85,000円(税込89,250円)
資料タイトル(2):「2007年 食品マーケティング便覧 No.3」
体 裁 :A4判 219ページ
価 格 :85,000円(税込89,250円)
調査・編集 :富士経済 東京マーケティング本部 第一事業部
TEL03-3664-5831 FAX03-3661-9778
発 行 所 :株式会社 富士経済
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