IBM、障害を持つユーザーがより多くのコンピューター・プラットフォームで支援技
術を最大活用できるようサポート
業界標準として保つためにFree Standards Groupに新しいテクノロジーを提供
Freedom Scientific、GW Micro、Mozilla、オラクル、SAP、およびサンがいち早く支持
IBM(本社:米国ニューヨーク州アーモンク、会長:サミュエル・J・パルミサーノ、NYSE:IBM)は14日(現地時間)、障害を持つ人々が支援技術を利用して、編集機能、ハイパーリンク、図表、メニューなどのソフトウェア・プログラムの先進機能を容易に利用できるようにするための、ソフトウェア・インターフェースを開発したことを発表しました。こうした機能は、DHTML、AJAX、およびWAI-ARIAを採用したリッチ・ブラウザー・アプリケーションや、OpenDocument Formatを基盤とするデスクトップ・アプリケーションにおいて頻繁に使われているものです。
Windows (R)用に設計され、IAccessible2と呼ばれる新しいアプリケーション・プログラム・インターフェースは、すでにFree Standards Groupに承認されています。Free Standards Groupは、このインターフェースを誰でも使えるオープン・スタンダードとして開発・維持していきます。Freedom Scientific、GW Micro、IBM、Mozilla Project、オラクル、SAP、およびスクリーン・リーダーは、このテクノロジーの支持をいち早く表明し、業界標準として開発することに携わるか、あるいは自社が手がける製品に採用していきます。
スクリーン・リーダー(画面読み上げソフト)をはじめとする障害者向けの支援技術は、Webブラウザーやワープロ文書などのアプリケーションが提供するテキストやグラフィック・コントロール情報を読み上げることで、視覚障害者がコンピューターを利用できるようにします。これまで、こうした支援技術プログラムは、ソフトウェア・アプリケーションが新バージョンになったり、新しい文書フォーマットやオペレーティング・システム(OS)、あるいは電子情報に対する新たなインタラクション手法が追加されたりすると、それらに対応するために常にかつ個別に変更する必要がありました。
その上、こうしたタイプのアプリケーションへのアクセスを提供するには、アプリケーション間あるいは同一アプリケーションのバージョン間で差異があり、エラーが発生することも珍しくないような、標準化されていない方法を必要としていました。リッチ・テキスト文書に含まれる機能および情報の中で、障害を持つ人々にとって利用が困難な例として、表の見出しやキャプション、フォント、テキストの色、カット&ペーストで選択するテキスト、ハイパーリンク、カーソルの位置の特定などがあります。
ブラウザー・ベースのRich Internet Applicationや、AJAXをはじめとするWeb 2.0テクノロジー(Webページ上での爆発的な量の情報、コメント、ライブ・アップデートを可能にする技術)の大半は、支援技術と通信するための標準化されたプログラミング・インターフェースを備えていません。そのため、画面上で起きていることや、Webページの静的な部分の相互作用が「動的な部分にどのような影響を及ぼすかを音声で表現するのは容易ではありません。
インターフェースを標準化するとともにFree Standards Groupの監修を受けることで、支援技術のベンダーは、より低コストで一貫性のある方法で自社のソフトウェアを新しいテクノロジーやOSに合わせて容易に拡張することができます。同様に、主要ソフトウェア・アプリケーション・ベンダーも、自社のプログラミング・インターフェースが支援技術と通信できるよう拡張することが、いっそう容易になります。
IAccessible2はMicrosoft Active Accessibility(MSAA)と呼ばれる独自仕様のアプリケーション・プログラム・インターフェースを補完するもので、企業が引き続きWindowsへの投資の恩恵を受けることを可能にします。IAccessible2はもともと、障害を持つ人々がJavaおよびLinux?を利用できるようにするため、IBMがサンと共同開発したオープン・テクノロジーを基盤としています。これをWindowsに実装すると、個別のアクセシビリティ・アプリケーションを他のOSに適用することが容易になり、マルチプラットフォームのアプリケーション開発者としてのビジネス機会を開拓することができます。
こうした取り組みが進展したのは、ODF(OpenDocument Format)などのオープン・スタンダードを使用するよう義務付けている米国マサチューセッツ州をはじめとする各自治体の要請に応えて、ODFに基づくアクセシビリティを備えた生産性ソフトウェアを製作する必要性が生まれたためです。このテクノロジーによって、FirefoxなどのブラウザーやODFをはじめとするフォーマット(OpenOffice.orgなどのオープン・ソースの生産性製品群や、IBM (R) Workplace(TM)などの商用メッセージング環境に使用されるフォーマット)が、JAWS、MAGic、Windows Eyesといった障害者向け支援技術と、さらに自動的かつ全面的に関連付けられるようになります。
今回の開発には、北京およびボストンを拠点とするLotus (R) のエンジニアや、IBMのエマージング・テクノロジー・グループおよびIBMの基礎研究所のアクセシビリティ専門家など、2大陸にわたるIBMのエンジニアが参画しました。こうしたエンジニアの多くは、支援技術の開発や、Java、Linux、Firefox、Rich Internet Applicationのアクセシビリティ向上に取り組んできました。IBMの開発者と緊密に協業してきたFreedom ScientificおよびGW Microによって、その成果は実証されています。Freedom ScientificとGW Microは全盲および弱視のユーザー向けに作られた製品でIAccessible2をサポートしていきます。
世界保健機関(WHO)によると、60億人といわれる世界の人口のうち、7億5,000万人から10億人の人々が、言語、視覚、運動、聴覚、認知障害を抱えています。
○ American Association of People with Disabilities:AAPD(米国障害者協会)
「American Association of People with Disabilitiesは、IBMがさまざまな障害を持つテクノロジー・ユーザーにより豊かなユーザー体験を提供する新たなAPI(Application Program Interface)であるIAccessible2を開発するとともに、それをFree Standards Groupに寄贈したことを、高く評価しています。またIAccessible2の設計、およびODFをサポートするLotusのProductivity Toolへの実装において、支援技術ベンダーに対するIBMの働きかけを喜ばしく思うとともに、IBMがFree Standards Groupと協力してオープン・スタンダードを通じたアクセシビリティの包括的なイノベーションに取り組んでいることを称賛します。IBMは引き続き業界でのリーダーシップを発揮して、障害を持つあらゆる人々の生活の質を高めるとともに、それを実現する開発者を支援していくことでしょう。」
-- AAPDプレジデント兼CEO、Andrew J. Imparato氏
○ American Foundation for the Blind:AFB(全米盲人基金)
「American Foundation for the Blindは、失明した人々にテクノロジーへの平等なアクセスを確実にするIBMの最新の取り組みを称賛します。IBMは、新しいテクノロジーがスクリーン・リーダーや画面拡大機能を利用する人々を疎外することがないよう、真の意味で尽力しています。IBMは、アクセシビリティはもちろん、新しいテクノロジーを創造することにおいてもリーダーシップを発揮し、責任ある開発業務において最高の水準を満たしています。AFBは、失明した人々の可能性を拡大し続けるIBMとの持続的なリレーションに感謝しています。」
--AFBプログラム・アンド・ポリシー・グループ担当バイス・プレジデント、Paul Schroeder氏
○ CAST
「IAccessible2は非常に先進的なソフトウェアであり、障害を持った学生に洋々たる前途を切り拓いてくれます。このソフトは、作成された資料を幅広い学生が利用できるようにするためにOpenDocument Format、Webアプリケーション、およびWebリソースを利用している学校にとって、必要不可欠のツールを提供します。このことは、こうしたコミュニティーに対する大きな貢献となります。
私たちはIAccessible2などのテクノロジーによって、オープン・ソースの教育ツールおよび資料へのアクセシビリティを土台から構築できます。例えば、読み上げ機能のあるブラウザーを提供するには課題があります。IAccessibility2を使えば開発者は、テキストを音声に変換するインテリジェントなテクノロジーを組み込んだオープン・ソースのブラウザーを実現することができるでしょう。そうなれば、あらゆる学生、とりわけ障害を持っている学生にとって本当に有用なソフトウェアの製作に、最初の段階から役立つこととなります。」
-- CAST, Inc. NIMAS Technical Assistance Center チーフオフィサー、ポリシー・アンド・テクノロジー担当ディレクター、Chuck Hitchcock氏
○ Freedom Scientific
「APIの設計およびIBMのオフィス製品群への実装フェーズでFreedom ScientificがIBMチームに合流できたことは、オープン・スタンダードの利点と可能性を周囲に示すのに役立ちました。アプリケーション開発者によるこのソリューション実装の成功によって、支援技術の全てのユーザーは、確実に恩恵を受けることでしょう。IAccessible2がもたらす利点によってアクセシビリティは大幅に改善され、MSAA単独の場合よりはるかに堅牢なインターフェースが提供されます。当社はこの機会を歓迎しており、ODFが今後提供するさまざまな選択肢において、将来はさらに速いペースで、使い勝手に重点を置き、JAWSおよびMAGic両方のアプリケーションへのサポートを拡大できるようになることでしょう。」
-- Freedom Scientific, Inc. プロダクト・マネジメント・ソフトウェア担当バイス・プレジデント、Eric Damery氏
○ Free Standards Group
「IBMのIAccessible2の貢献によりFree Standards Groupは、障害を持ったコンピューター・ユーザーの圧倒的多数に対して、OSプラットフォームにかかわらずオープン・テクノロジーの恩恵を無償で提供することができます。ユーザーにとっては利用可能なアプリケーションの選択肢が増え、開発者は複数のオペレーティング環境をサポートすることが格段に簡単なものとなり、組織のIT部門はアクセシビリティに関する法的義務を果たすことが容易になります。IBMと協力してこの重要なオープン・スタンダードに取り組めることを非常に光栄に思っています。」
-- Free Standards Group エグゼクティブ・ディレクター、Jim Zemlin氏
○ GW Micro
「MSAAは、アプリケーションをアクセシブルにするための、重要な基盤を提供します。しかし時が経つにつれ、MSAAには一部の要素をアクセシブルにするための重要な情報が不足していることが明らかになってきました。IBMは、新しいIAccessible2インターフェースを使いMSAAの拡張をリードしてきました。IAccessible2はMSAAを置き換るのではなく強化することで、MSAAに残されていた大きな欠点を解決しています。MSAAからUIAをはじめとしたその他の標準へ移行するのは、将来的には可能ですが、非常に高コストになる可能性もあります。IAccessible2を使えば既存のMSAAサポートを維持したまま、MSAAでは不十分である分野の強化することができます。GW Microは、自社のスクリーン・リーダーであるWindow-EyesにIAccessible2を全面的に統合するため、IBMと協業してきました。Window-EyesのIAccessible2サポートにより、アプリケーション開発者は本格的なアクセシビリティ・ツールを使ったテストができます。IAccessible2によって、MSAAが完全なものとなるのです。」
-- GW Micro開発担当バイス・プレジデント、Doug Geoffray氏
○ IBM
「IAccessible2は、リッチなWebやデスクトップ・・アプリケーションを収斂させる、主要な構成要素です。そして、障害を持つ人々のWindows環境でのアクセスをサポートするとともに、他のOSでのアクセシビリティをサポートするための開発者の労力を削減します。Free Standards GroupがIAccessible2をオープ・・スタンダードにすることで、将来の業界のイノベーションにおけるアクセシビリティを加速するでしょう。」
-- IBMアクセシビリティ・アーキテクチャー・レビュー・ボード議長、ディスティングイッシュド・エンジニア、SWGアクセシビリティ・アーキテクト/ストラテジスト、スタンダード、Rich Schwerdtfeger氏
○ Mozilla Project
「IAccessible2によって、LinuxとWindowsの間の不必要なアクセシビリティAPIの差異が排除され、ひとつのコード・ベースが両方のプラットフォームをサポートできるようになりました。IAccessible2の完全性は、支援技術における回避策の必要性を解消します。また、開発者がHTML、XUL、JavascriptおよびAJAXといったMozillaをサポートするプラットフォーム横断的なテクノロジーをベースに、リッチでアクセス可能なデスクトップ・アプリケーションおよびWebアプリケーションを作成することを可能にします。こうした強みにより、Mozilla ProjectはIAccessible2を使ってテクノロジー基盤、およびWebブラウザーのMozilla Firefoxをはじめとするエンド・ユーザー製品に対して最高のアクセシビリティを実現していきます。」
-- Mozilla Foundation エグゼクティブ・ディレクター、Frank Hecker氏
■National Federation of the Blind in Computer Science:NFBCS (全米盲人連合)
「IAccessible2が、Web 2.0アプリケーションで必要不可欠な要件となる、リッチにフォーマットされた文書、複雑な表、およびオブジェクト間のリレーションへのアクセスを提供することを、嬉しく思っています。また、複数のプラットフォームにまたがる複雑な文書サポートのあるアプリケーションを開発しているその他の企業が、IAccessible2の実装に並々ならぬ関心を示しているのは喜ばしいことです。コンピューター・サイエンスにおいて全米盲人連合は、失明した人々が全面的にアクセスできるアプリケーションにおける主要なアクセシビリティ仕様として、IAccessible2が主流になる時を待ち望んでいます。IAccessible2の立ち上げおよび稼働のためにIBMがすでに完了した作業は、私たちの支持と称賛を受けるにふさわしいものです。」
-- NFABCS プレジデント、Curtis Chong氏
○ OpenDocument Format Alliance
「新しいソフトウェア・インターフェースが提供する、さらなるアクセシビリティ機能により、世界中の政府はますますODFを支持するようになるでしょう。」
-- ODF Alliance マネージング・ディレクター、Marino Marcich氏
○ オラクル
「オラクルは、エンタープライズ・アプリケーションのアクセシビリティを著しく推進する、IBMのIAccessible2アクセシビリティ技術のFree Standards Groupへの貢献を賞賛します。その努力は、オラクルが、オープン・スタンダードでお客様の要望に対応していることや、障害を持つ人々にITソリューションを提供するためにW3Cのようなオープン・スタンダード・フォーラムで行っている取組みと一致します。FSGのプラチナ・メンバーとして、IAccessible2を進化させ、AJAX対応のユーザー・インターフェースの品質と使い勝手を改善するために、業界のパートナーやアクセシビリティ・コミュニティと協業していくことを楽しみにしています。」
-- オラクル アクセシビリティ・プログラム・マネジャー、Connie Myers氏
○ Royal National Institute of the Blind:RNIB (英国王立盲人協会) 「Royal National Institute of the Blindは、IBMのFSG へのIAccessible2寄贈について、誇りを持って支持します。IAccessible2はWindowsアクセシビリティをより拡大し、マルチプラットフォームにおける機会をもたらします。IAccessible2の設計には開発者と支援技術ベンダー(Assistive Technology Vendor:ATV)の双方が貢献しているため、どちらの層にもIAccessible2のおかげでゆとりがもたらされると思います。設計にはこういった背景があるため、IAccessible2によって開発者とATVは現在のWindowsアクセシビリティへの投資拡大が可能になるとともに、FSGを通じて、両者が将来の業界イノベーションに対して早期にアクセシビリティを提供できるようになります。
マイクロソフトの多大な働きにより、マイクロソフト製品のユーザーが享受するのと同様の利点を全てのプラットフォームに提供するというマルチプラットフォームのアクセシビリティの理念は、いっそう身近なものになりました。私たちはこのアライアンスの活動を支持するとともに、いっそう緊密なコラボレーションとさらなる開発が継続されることを願っています。」
-- RNIB デジタル・テクノロジー担当シニア・ストラテジック・マネジャー、Steve Tyler氏
○ SAP
「SAPは、IAccessible2におけるIBMの取り組みを評価します。このAPIが、支援技術やアプリケーション・ソフトウェアのベンダー、さらにはエンド・ユーザーから、複雑さを削減するからです。このインターフェースにより、特にリッチ・ブラウザー・アプリケーションの領域で、最終的にソフトウェア・ベンダーはより優れて堅固なアクセシブル・アプリケーションを開発することができるでしょう。さらに、私たちは、削減されたコストで、支援技術を必要とする全てのユーザーのために、アプリケーション・ソフトウェアや支援技術の互換性を強化できるものと考えています。」
-- SAPユーザー・エクスペリエンス担当ディレクター、Gisbert Loff
○ サン
「サンはIBMがMicrosoft (R) Windows用のリッチで拡張可能なアクセシビリティ・フレームワークをFree Standards Groupに寄贈することを称賛します。この動きは、すでに進行中であるUNIX (R) 向けアクセシビリティ標準化プロセスと合流することでしょう。こうした動きは、障害を持つ人々によるJavaおよびGNU/Linuxへのアクセスを実現することを目指すサンとの共同開発を端緒として、進められてきました。これにより、今後あらゆるOSにおいて、各アプリケーションへのアクセシビリティの導入が大幅に進むことでしょう。」
--米国サン・マイクロシステムズ社 テクノロジー・アンド・パートナー・マーケ
ティング担当バイスプレジデント Juan Carlos Soto氏
以上
IBM、Lotus、Workplaceは、IBM Corporationの商標。
Microsoft,、Windowsは Microsoft Corporationの米国およびその他の国における商標。
UNIXはThe Open Groupの米国およびその他の国における登録商標。
その他の製品名および会社名は、それぞれ各社の商標または登録商標です。