東北大学、超伝導線の新しい特性向上法を発見
超伝導線の新しい特性向上法を発見,実用化に目途!!
-弱い超伝導線を曲げて鍛える,超伝導磁石作製に活用‐
国立大学法人東北大学金属材料研究所強磁場超伝導材料研究センター淡路智助教授,渡辺和雄教授のグループは,多くの強磁場超伝導磁石に用いられている実用ニオブ3スズ(Nb3Sn)超伝導線を繰り返し曲げることで,超伝導特性の大幅な向上ができることを世界で初めて発見しました。今回,コイル形状でこの現象を確認することで,実用超伝導機器に本手法が提供できることを示しました。この結果は,ニオブ3スズ超伝導線を用いた超伝導機器のさらなる高性能化とコストダウンにつながると見込まれます。
すでに多くの超伝導機器に用いられているニオブ3スズ超伝導線は,磁気共鳴画像診断装置(MRI)などの低磁場超伝導磁石で用いられているニオブチタン(NbTi)超伝導線と比べて,2倍以上の高い磁場まで用いることができるため,多くの強磁場超伝導磁石で使用されています。しかし,わずかな歪みで超伝導特性が大幅に低下してしまうため,ニオブ3スズ線を用いる場合は,コイル巻線での歪みが加わらないように超伝導磁石を作製してから熱処理を行う方法がとられていました。それでも,超伝導線を使用する低温(摂氏-269度)に冷却したときに発生する熱歪みにより,超伝導特性が低下することは避けられないと考えられてきました。ところが,実際にニオブ3スズ線を繰り返して曲げると超伝導特性が大幅に向上する事を,世界で初めて発見しました。すなわち,繰り返し曲げることで線材を鍛えてトレーニングすると,本来歪みに弱いニオブ3スズ超伝導線が,これまでの定説を覆して特性を向上させるというものです。実際に,図1の装置を作製して,ニオブ3スズ線に繰り返し曲げを加えた結果,図2に示したように臨界電流(注1)が向上し,20Tの磁場中では2倍以上となることがわかりました。そこで最近,この手法を実際のコイル巻線プロセスに応用して,超伝導線をコイル形状にした実験でも,超伝導特性が向上することも確認しました。この結果,ニオブ3スズ線を用いた超伝導磁石のさらなる高磁場化が可能となり,例えば核磁気共鳴装置(NMR)の高性能化などが実現できる他,特性向上と作製行程の簡略化の相乗効果によって,超伝導機器にかかるコスト減が見込まれます。本手法は,ほとんどのニオブ3スズ線材に適用できると考えられるので,より特性の高い線ではさらに高特性が得られると期待できます。
※本研究開発は,新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の平成16-18年度産業技術研究助成事業による援助及び古河電工(株)との共同研究により実施しました。
※以下、詳細は添付資料を参照