富士経済、エンベデッドシステム市場の調査結果を発表
エンベデッド(組込み)システム市場の調査を実施
デジタル家電、携帯電話機器で採用が進む組込みLinux 2009年に45億円(06年比140%)
総合マーケティングビジネスの(株)富士経済(東京都中央区日本橋小伝馬町 代表取締役 阿部英雄03-3664-5811)は、FA関連、産業分野、航空・宇宙分野をはじめ、家電製品・携帯機器や鉄道・交通などのインフラシステムにも採用され、社会的にも重要な位置付けとなっているエンベデッドシステムの調査を実施した。その結果を報告書「エンベデッドシステムマーケット 2007」にまとめた。
本報告書では、「エンベデッドプロセッサ」、「エンベデッドボード」、「エンベデッドOS」、「エンベデッドミドルウェア」、「開発環境/ツール」の5分野35品目の各要素市場と主要応用分野別のSI市場を調査分析した。
<注目エンベデッドシステム市場>
●組込みLinux市場
分野 2006年 2009年予測 伸長率
業務/産業用 20億円 28億円 140.0%
民生用 12億円 17億円 136.4%
合計 32億円 45億円 138.6%
Linuxは従来サーバやPC向けのOSとして使われることが多かったが、機器のネットワーク化、オープンソースといった点から組込みOSとして使われるようになっている。2000年頃から市場を形成し急拡大してきたが、2005年以降二桁成長を続けているものの市場はやや落ち着いてきている。リアルタイム性の向上や関連ツールの整備などもありデジタル家電機器、携帯電話機器などでの採用が進み、2005年に件数ベースで615件、金額ベースで28億円の市場となり、2006年は件数ベースで前年比17%増の720件、金額ベースで同15%増の32億円の市場と見込まれる。
業務/産業用分野では、キャリア向けの通信機器などを中心とした通信・ネットワーク関連が主力販売分野で業務/産業用分野の約45%を占める。次世代通信網(NGN)関連の需要もあり、キャリア向けの通信機器・設備での需要が拡大傾向にある。また、OA・業務用分野での複合機や自動車関連分野で採用が広まりつつある。民生用分野では情報家電関連が中心で、今後もデジタルテレビ、HDDレコーダ、ホームサーバ等を中心に組込みLinuxの採用が増加すると考えられる。
機器のネットワーク化の進展から、ネットワーク関連に強い組込みLinuxの採用が進んでおり、またオープンソースであることも採用のキーワードとなっている。課題は、Linux技術者の不足、起動時間の長さ、応答性の問題、グラフィック関連ミドルウェアの移植が難しいことなどである。組込みOSで最終製品の差別化を図るのは難しく、特定機器向けのOS開発としては効率化が求められているため、組込みLinuxでもプラットフォーム化の動きが出ている。
【 エンベデッドSI(組込みシステムインテグレート)市場 】
●2006年 7,200億円 2009年予測 9,400億円(伸長率130.6%)
エンベデッド市場において大きな位置付けとなる『擦り合わせ』市場をエンベデッドSI市場として捉えた。エンベデッド市場では、機器構成で重要となるエンベデッドプロセッサ、エンベデッドボード、エンベデッドOS、エンベデッドミドルウェアの各要素を組み合わせる事で機器の制御、機能を持たせる。しかし各要素が持つ特徴や性質が異なりブロックの様に容易に組み合わせる事が出来ない。また開発されるターゲット機器の性能・特性次第でプログラムサイズや機能の制限が非常に厳しくなる。これらを機能させるためには『擦り合わせ』が必要である。要素技術を製品化して事業展開している各ベンダでも自社の製品販売だけで完結するケースは極めて稀で、ほぼ全ての場合において各要素が組み合わされた『組込みシステムインテグレート』が必要となる。
市場規模は、携帯電話関連が最も大きく2006年に1,800億円(構成比25%)となった。情報家電関連の1,300億円(同18%)、自動車・車載関連1,100億円、OA・業務関連800億円、通信・ネットワーク関連700億円と続いている。市場は、主に大手電機メーカー系列のグループ系SI企業と独立系のSI企業で構成され、大手SI企業では主要応用分野のほとんどを事業対象としている。顧客からの受託ビジネスが中心であり、事業規模拡大には組込み技術者の増加や効率化が求められる。あらゆる機器の製品開発においてエンベデッドシステムの重要性が強くなっていることから、今まで表舞台に出てこなかった大手SI企業が勢力を伸ばし、主要な技術やソリューションを中心とした大規模開発がさらに進んでいくと予測される。
< 調査結果の概要 >
近年、エンベデッドシステムが注目を集める要因の一つとして、CPUの性能が飛躍的に向上している点が挙げられる。高性能なCPUを搭載することで今まで搭載出来なかった機能を持たせることが可能となっている。携帯電話機では、通常の一般消費者が使いこなすのが困難なほど高機能・多機能化しており、これに伴ってソフトウェアの規模が爆発的に増加している。一方で、複雑化する組込みシステムの構築に伴って技術者不足が大きな問題になりつつあり、ソフトウェア不具合や、機能障害、リコールを発生させる原因となっている。このように、肥大化、複雑化するエンベデッドシステム市場では、製品群別のプラットフォーム化などで開発を効率化させたり、組込み技術者育成の為の国内・海外含めた教育も進められ、人材派遣業からの意識も高まっている。
【 エンベデッドプロセッサ市場 】
●2006年 1兆8,866億円 2009年予測 2兆4,130億円(伸長率127.9%)
全量がプロセッサとして使用されるマイクロプロセッサ、DSPに加えて、その他関連LSIであるASIC、ASSP、FPGAのうち、プロセッサ用途として使用されている部分を対象とした。アプリケーションの多機能化・高機能化に伴って16ビット以上のプロセッサへ需要がシフトしている。ASICやASSP、FPGAなどその他関連LSIにおいては、現状ではエンベデッドプロセッサとしての採用は少ないものの、低価格化や開発における柔軟性から、今後プロセッサとしての採用拡大が見込まれる。
DSP(Digital Signal Processor):デジタル信号処理専用プロセッサ
ASIC(Application Specific Integrated Circuit):ゲート・アレイ、スタンダード・セルなどを使って設計したカスタムIC
ASSP(Application Specific Standard Product):特定の分野を対象に機能を特化させた汎用LSI
FPGA(Field Programmable Gate Array):プログラマブルなゲート・アレイ
【 エンベデッドボード市場 】
●2006年 243億円 2009年予測 281億円(伸長率115.6%)
産業用コンピュータ関連市場は大きくFAパソコン、パネルコンピュータ、Embedded PC、ボードコンピュータに分けられ、そのうちボードコンピュータを対象とした。CompactPCIやPCIなど、よりバス幅の広いボードを中心に市場が拡大している。また、ATXボードに関しては、AT互換ボードを搭載するアプリケーションの増加に伴い、ITXなどのよりコンパクトなボードを提案することで搭載アプリケーションを拡大している。従来規格であるVMEボードやPCI-ISAボードに関しては、特定分野向けの需要が残るものの、市場は減少している。また、2007年よりトライアルが開始されたNGN構想の本格化により2008年から2009年頃にかけてAdvancedTCAボード市場の垂直的な立ち上がりが予測される。
PCI(Peripheral Component Interconnect):パソコン内部の各パーツ間を結ぶバスの規格
ATX:Intel社が発表したPC/AT互換機用のマザーボードの規格
VME(Versa Module Europe):16/32ビットマイクロコンピュータ応用製品の世界標準バス
ISA(Industry Standard Architecture):工業標準の拡張バス
AdvancedTCA(Advanced Telecommunications Computing Architecture):高度な通信プラットフォームの標準規格
【 エンベデッドOS市場 】
●2006年 89億円 2009年予測 108億円(伸長率121.3%)
エンベデッドOS市場は大きく4タイプに分けられる。1つ目は組込みシステム向けの国内代表格であるITRON。唯一の国産仕様OSであるITRONはLinux同様無償のオープンソース仕様のOSで、ソフトベンダだけでなく、チップベンダがこの無償仕様をベースとしたOSを開発しており、国内の制御機器で広く普及している。2つ目は組込みLinuxで、グローバルワイドのオープンソースOSで主にエンタープライズ系のOSとして実績があり、2001年頃から組込みシステム向けとして市場を形成している。3つ目は、商用のRTOS(real-time operating system)で、各ターゲット機器向けの組込みOSとして作られたものである。主に産業、航空、宇宙、軍事分野で実績があり、高精度なリアルタイム制御が可能なOSである。4つ目は一般PC用の商用OSで独走するWindows系OSの組込みシステム版である。Windows系OSは、組込みシステム向けでは主に業務向けや車載機器向け、携帯電話機向けのOSとして活用されている。また「ITRON+組込みLinux」、「ITRON+Windows Embedded」、「組込みLinux+Windows Embedded」、や「RTOS+他OS」といった構成が可能なハイブリッドOSも増えてきている。
【 エンベデッドミドルウェア市場 】
●2006年 283億円 2009年予測 499億円(伸長率176.3%)
ミドルウェアは、各ターゲット機器のユーザーインターフェース、データ管理、インターネットや他機器との通信といった重要な機能を補い、組込み市場においても重要な位置付けとなる。組込みシステムを採用する各機器では、CPUの高機能化によって搭載機能が増加している。これに伴いエンベデッドミドルウェア市場も拡大傾向となっている。特に携帯電話向けに採用されるミドルウェアの市場規模が大きなウエイトを占め、今後も開発規模の大きい携帯電話関連を中心にミドルウェア市場は拡大するとみられる。現時点では、携帯電話関連で採用されているWebブラウザ、組込みJavaなどが大きな市場に育っている。2009年にはSIPも大きな市場になると予測される。DLNA(Digital Living Network Alliance)は、携帯電話への搭載がはじまり、またホームネットワークのスタンダードになりえるミドルウェアと期待されている。
SIP(Session Initiation Protocol):インターネット電話などで用いられる通話制御プロトコルの一つ
<調査対象>
※ 関連資料参照
<調査方法>
弊社専門調査員による関係企業、研究機関、官公庁等への直接面接取材を基本に、電話ヒアリング、文献調査により補完
<調査期間>
2006年11月~2007年1月
以上
資料タイトル : 「エンベデッドシステムマーケット 2007」
体裁 : A4判 249頁
価格 : 97,000円(税込み101,850円)
調査・編集 : 富士経済 大阪マーケティング本部 第一統括部 第一事業部
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