大日本印刷、RIOEと共同で電光表示板向け長寿命の有機ELディスプレイを開発
大日本印刷 電光表示板向け長寿命、高輝度、高精細な有機ELディスプレイを有機エレクトロニクス研究所と共同で開発
- 従来の有機ELディスプレイと比べ10倍の寿命を達成 -
大日本印刷株式会社(本社:東京 社長:北島義俊 資本金:1,144億円、以下:DNP)は、財団法人山形県産業技術振興機構 有機エレクトニクス研究所(所長:城戸淳二 山形大学教授 以下:RIOE)と共同で、電車内や店頭などに設置されている電光掲示板向けに、長寿命、高輝度、高精細な有機ELディスプレイを開発しました。
今回DNPとRIOEが共同開発した有機ELディスプレイは、マルチフォトン※1構造のディスプレイで、従来に比べ約10倍以上の寿命を達成しました。また、高輝度な表示が可能であることから、屋外や明るい所でも視認性に優れ、また、現在電光掲示板に多く使用されているLEDに比べ高精細な表示が行えます。DNPではフレキシブルな基材を用いた有機EL素子で広告分野への応用を進めていますが、今後は高輝度・長寿命なディスプレイパネルを組み合わせて、さらに用途拡大を目指していきます。
※1 マルチフォトンとは、有機ELの照明用途への利用を目的として、ガラスなどの基板に形成された有機ELの発光層を直列式に複数積層した構造により、高効率化を実現するRIONが開発した技術。発光層を2層以上の構造にすることで、単層構造に比べて、同じ電流でより高い輝度が出る。同じ輝度を達成しようとする場合、少ない電流で済む。
【背景】
有機ELディスプレイは、電圧をかけると自らが発光する有機物を利用したもので、省電力化、軽量・薄型化が可能なことから、液晶やプラズマにつづく次世代のディスプレイとして注目されています。
一般的な有機EL素子は、複数の構成材料を積層しており、その境界面において、電流の流れやすさが不安定になることが長寿命化を妨げる一つの原因となっていました。
今回DNPとRIOEは、ディスプレイ内の電流の流れやすさに着目して構成材料を見直し、特性が不安定な境界面の数を減らしたことにより、長寿命化が実現できる有機EL素子を共同開発しました。この新しい素子と、RIOEが開発したマルチフォトン技術とを組み合わせることで、長寿命、高発光効率、高輝度を実現する有機ELディスプレイを開発することができました。
【特長】
・DNPとRIOEが共同開発した有機EL素子は、発光効率の劣化が少なく、また、少ない電流で高い輝度を実現しました。今回、DNPとRIOEが共同開発した有機EL素子を、RIOEのマルチフォトン技術と組み合わせることにより、従来の10倍以上となる、1000カンデラ※2で10万時間以上の寿命を達成しました。
・RIOEのマルチフォトン構造のディスプレイは、高輝度な文字の可変表示ができます。また、点状に発光するLEDディスプレイに比べ高精細化が可能で、視認性に優れているため、電車・バスの車内や、飲食店の店頭などに設置されている中型の電光表示板として使用できます。
※2 カンデラは輝度の単位で、1カンデラでろうそく1本程度の明るさ。
【今後の展開】
・電光掲示板の他、文字などの可変表示の機能を付加した発光ポスターやPOPの情報表示端末、などへの展開を進めていきます。
・ガラス基板以外に、フレキシブル性を持つプラスチックフィルムを基板とするディスプレイの開発や、フルカラーの有機ELディスプレイの開発を進めていきます。
・2008年度中にサンプルを出荷し、2010年度に約100億円の売上を見込んでいます。
◆財団法人山形県産業技術振興機構 有機エレクトニクス研究所について
有機ELの第一人者である山形大学の城戸淳二教授を中心に、有機EL研究の黎明期から現在に至るまで、材料化学をベースに常に世界トップレベルの性能を追求する、新しい技術の提案を行っています。また有機ELの発展を牽引する日本の中心的研究室として、様々な教育・普及活動も行っています。