サッポロ、大麦のメタボリックシンドロームの予防効果に期待など研究成果を発表
大麦の機能性に関する研究発表
~メタボリックシンドロームの予防効果を期待~
サッポロビール株式会社(本社・東京、社長・福永勝)では、1876年の創業以来、原料や品質にこだわり、独自の取組みを行っています。当社は、世界中の生産者と共に大麦・ホップを育てる「協働契約栽培」という取組みを行っています。「協働契約栽培」とは、サッポロビールと生産者とが、しっかりとコミュニケーションをとりながら、互いに協力して安心、安全な高品質の原料をつくることです。
また、当社では協働契約栽培を実施するとともに、大麦研究にも積極的に注力しています。この度、当社では大妻女子大学と共同で「β-グルカン高含有大麦品種の機能性検証」について、先般開催された日本農芸化学会2007年度大会でその結果を発表しました。特に、大麦は白米と比較して、血清コレステロール、特にLDLコレステロールの低下作用を有するばかりでなく、メタボリックシンドロームの指標になっている内臓脂肪面積、胴回りの低下作用も有する可能性を示唆する試験結果は、今後の大麦を使った、酒類・飲料・食品開発などの可能性につながるものと考えています。
記
発表先 日本農芸化学会 2007年度大会
会期 2007年3月24日(土)~27日(火) *本件の発表は3月25日(日)
会場 東京農業大学
■β-グルカン高含有大麦品種の機能性検証I.KKマウスにおける腹腔内脂肪蓄積抑制効果
サッポロビール:木原誠、荒木茂樹、清水千賀子、中村義幸、渡淳二、林勝弘、伊藤一敏、大妻女子大学:青江誠一郎、加藤美智子、池上幸江
【目的】
穀類の種子中に含まれる(1,3)(1,4)-β-D-グルカン(以下β-グルカン)には、複数の機能性が報告されている。また、研究者は、血清コレステロール上昇抑制試験において、β-グルカン高含有大麦がラットの腹腔内脂肪蓄積抑制効果を有することを確認している。本研究では、KKマウスを用いてβ-グルカン高含有大麦2品種(CDC Fibar、CDC Alamo)の腹腔内脂肪蓄積抑制効果を検証した。
【方法】
4週齢のKK雄マウスを1群8匹の4群に群分けし、実験飼料を8週間給餌した。飼料組成はセルロース5%を含むAIN-93G組成を対照群とし、小麦群、大麦1,2群は、飼料中の総食物繊維量が5%となるように配合した。
【結果及び考察】
大麦群は小麦群、対照群と比較して後腹壁脂肪蓄積量を有意に低下させた。また大麦群、特にCDC Fibarは対照群に比べて後腹壁脂肪のサイズが有意に小さかった。脂肪細胞数は各群間に差が認められなかったことから、β-グルカン高含有大麦による後腹壁脂肪重量の低下は、脂肪細胞の肥大化抑制によるものと推定された。
■β-グルカン高含有大麦品種の機能性検証II.新規なモデル動物STR/Ort マウスを用いた機能性の評価
サッポロビール:荒木茂樹、木原誠、清水千賀子、中村義幸、伊藤一敏、林勝弘、渡淳二、大妻女子大学:青江誠一郎、加藤美智子、池上幸江
【目的】
β-グルカン高含有大麦を添加した高コレステロール食をFischer344ラットに投与した実験において大麦の血清コレステロール上昇抑制作用ならびに腹腔内脂肪蓄積抑制作用を明らかにした。そこで、本研究では肥満と高脂血症を自然発症するSTR/Ortマウスを用いて、β-グルカン高含有大麦の機能性を検証した。
【方法】
AIN-93G組成に準じた飼料に小麦および大麦を飼料中の総食物繊維量が5%となるように配合した。4週齢のSTR/Ort雄マウスを一群6匹の3群に分け各飼料を8週間給餌した。飼育終了後、血清及び肝臓脂質、臓器重量等を測定した。
【結果】
大麦群は小麦群に比べ,non-HDL-コレステロール値の上昇を有意に抑制した。血清総コレステロールは小麦群に比べ大麦群で低下傾向が見られた。また、後腹壁脂肪組織の重量及び脂肪細胞のサイズが小麦群に比べ大麦群が有意に低値を示した。以上の結果より、STR/Ortマウスを用いて大麦の血清non-HDLコレステロール上昇抑制作用と腹腔内脂肪蓄積抑制作用を明らかにした。
■β-グルカン高含有大麦品種の機能性検証III.-ヒト試験での検証結果について
サッポロビール:清水千賀子、木原誠、荒木茂樹、中村義幸、林勝弘、伊藤一敏、渡淳二、大妻女子大学:青江誠一郎、池上幸江
【目的】
大麦は水溶性食物繊維であるβ-グルカンを豊富に含む食物繊維給源である。我々は一般の大麦よりβ-グルカン含有量の高い品種(CDC Fibar)にコレステロールの上昇抑制効果だけでなく、腹腔内脂肪蓄積抑制効果があることを動物試験で見出した。本研究は、これらの効果をヒトで確認することを目的として実施した。
【方法】
コレステロールおよびBMIが高めの男性44名を2群に分け、主食としてプラセボ群にパック米飯、試験群に50%大麦配合のパック麦ご飯(β-グルカン3.5g含有)を1日2パック12週間毎日摂取させた。
【結果】
繰り返し測定の分散分析を行い、誤差分散の推定を行った。F-検定の結果、総コレステロールおよびLDL-コレステロールは大麦群で有意に低下した。また、摂取終了の時点では胴回り、内臓脂肪面積などについて試験群がプラセボ群よりも有意に低かった。以上の結果から、β-グルカン高含有大麦は、ヒトにおいて血清コレステロールの低下作用ともに、胴回り、内臓脂肪などの低下作用も有することが確認された。
以上