ルネサステクノロジ、SuperHマルチコア・マイクロコントローラなどサンプル出荷を開始
SuperH(TM)マルチコア・マイクロコントローラ「SH2A-DUAL」を製品化
-リアルタイム制御機器向けの高性能CPUコア「SH2A-FPU」を2個、
および豊富な周辺機能を搭載した、汎用マイクロコントローラ-
株式会社ルネサス テクノロジ(本社:東京都千代田区、会長&CEO 伊藤 達)は、このたび、SuperH(TM)(注1)ファミリの制御機器向けCPUコア「SH2A-FPU」を使用するマルチコア技術を開発しました。本技術によるマルチコア・マイクロコントローラ製品の第一弾として、「SH2A-FPU」CPUコアの搭載個数が2個の製品を「SH2A-DUAL」とし、最大動作周波数が200MHzの「SH7205」「SH7265」の合計5品種を製品化しました。2007年7月よりサンプル出荷を開始します。
「SH7205」は民生機器や産業機器向け、「SH7265」はカーオーディオやカーナビゲーション機器(以下、カーナビ)の普及モデル、マルチメディア機器向けの製品です。
特長は、以下のとおりです。
(1)リアルタイム処理性能を重視し、柔軟な使い方が可能なマルチコア・アーキテクチャ
「SH2A-FPU」は高度なリアルタイム制御処理が可能なCPUコアで、200MHz動作時に、処理性能が480MIPS(million instructions per second)(Dhrystone 1.1)、浮動小数点演算性能が400MFLOPS(mega floating point number operations per second)の高処理性能を実現します。本CPUコアの特徴を活かし、以下のコンセプトによりマルチコア・アーキテクチャを開発しました。
・特定用途向けではなく、幅広い汎用用途に使用可能なアーキテクチャ。
・リアルタイム処理性能は、より複雑化、高度化する処理に対しても低下しない。
本コンセプトに従い開発した主な技術は以下のとおりです。
1)マルチレイヤバス構造
内部バスを、CPU別にしたマルチレイヤバス構造を採用しています。CPUコアを2個搭載時で、各CPU用に2層、DMAC(Direct Memory Access Controller)用に2層の全4層構成としており、これにより、各CPUは、バスを他のCPUに使用されて発生する無駄な時間を低減できるため、高速なリアルタイム処理を実現できます。
2)各CPUコアが、異なるOS(Operating System)でも動作可能
各CPUコアが、同一のOSで動作可能なことに加え、各CPUコアを異なるOSによる動作が可能な方式としました。例えば、2個のCPUコアを、それぞれμITRON(注2)、μCLinuxで動作させ、各CPUコアで全く異なるプログラムを実行することができます。
これにより、使用用途や目的に応じてシステムを柔軟に構築することができます。
3)CPU間の処理を連携させるCPU間直接通信機能
CPU間を直接通信する機能を構築しました。本機能により、各CPUが、別のCPUの状態を確認することができます。加えて、互いのCPU間でデータを送受できるメモリを備えており、これにより、各CPUで処理している状態やデータを互いに送受することで、処理の連携が可能です。
(2)USB、ATAPI、画像処理エンジンなど豊富な周辺機能を内蔵した「SH7205」「SH7265」
「SH7205」と「SH7265」は、(1)のアーキテクチャにより、「SH2A-FPU」CPUコアを2個搭載し、豊富な周辺機能を内蔵した製品です。
USB規格v2.0のハイスピード(480Mbps)対応インタフェースやATAPIインタフェース、NANDフラッシュメモリインタフェース、さらに、ビデオ入力が可能な2Dエンジン、動画出力用アナログRGB出力を備えています。これにより、表示システムを備え、USBフラッシュメモリやHDDなどを接続して高速なデータ転送を行う機器を低価格で実現できます。
さらに、「SH7265」は、上記の周辺機能に加え、オーディオデータの圧縮形式であるAAC(Advanced Audio Coding)に対応したエンコードアクセラレータを内蔵しており、音楽データなどのAACファイル作成をハードウェアで高速に実現できます。
<製品化の背景>
近年、各種機器の高機能化、高性能化の進歩は目覚しく、今後さらに加速されることが予想されます。そして、これにともない、機器の機能の中枢であるマイコンやSoC(System on Chip)に対しては、高機能化、高性能化への要求がますます高まることは必須です。
従来、高性能化を実現する方法は、プロセスを微細化して、集積度向上や動作速度の高速化を図ることが一般的でした。しかし、プロセスの微細化を進める上では、リーク電流の増大など様々な課題を解決しなければならず、長期間を要します。
このため、業界では、プロセス微細化以外の性能向上への取組みが図られており、その手段の1つとして、マルチコア化の流れがあります。マイコンやSoCの心臓部は、演算処理を行うCPUコアであり、通常は、1つのチップに1つのCPUコアを搭載しています。マルチコアは、1チップに複数のCPUコアを搭載したものです。これにより、例えば、処理を各CPUコアで並行して行う等で性能を向上することができ、主に処理負荷が高い画像処理などマルチメディア機器向けの製品が登場しています。
一方、機器の高性能化は、高速なリアルタイム制御が必要な組込み機器に対しても強い要求があり、当社は、今回、このようなニーズに向けて、リアルタイム制御性に優れ、かつDSP(Digital Signal Processor)相当の処理を可能にするCPUコア「SH2A-FPU」を用いたマルチコア技術を開発し、第一弾製品として、本CPUコアを2個搭載したデュアルコア製品「SH7205」を1品種、「SH7265」を4品種、合計5品種を製品化しました。
<製品について>
「SH7205」「SH7265」は、「SH2A-FPU」を2個搭載し、最大動作周波数は200MHzです。
「SH2A-FPU」の命令セットは、「SH-2A」および「SH-2」のCPUコアと上位互換であり、既存の機器で開発したプログラムを流用できます。また、FPUの浮動小数点演算性能は、400MFLOPSで、産業機器や音楽データを扱う機器等におけるデータ処理を、本製品だけで実現することが可能です。
また、豊富なインタフェースや周辺機能を搭載しています。USB規格v2.0のハイスピード(480Mbps)に対応したホストおよびファンクションのインタフェースを2ポート、HDDなどと接続可能なATAPIインタフェース、NANDフラッシュメモリインタフェース、さらに、デジタルオーディオデータ入出力用のシリアルサウンドインタフェースや16段FIFO付シリアルコミュニケーションインタフェース、I2Cバスインタフェース等豊富なインタフェースを搭載しています。
また、グラフィックス処理用に、簡易型2Dエンジンとデジタル動画入力端子を搭載しています。本機能により、図形の回転や拡大、アルファブレンディング処理、さらにデジタル入力された動画との画像重ね合わせなどが可能です。さらに、画像および動画出力用にWQVGAサイズ(480×234画素)およびQVGAサイズ(320×240画素)のアナログRGB出力端子を備えています。これらの機能により、表示システムを備え、USBフラッシュメモリやHDD、NANDフラッシュメモリなどを接続して高速なデータ転送を行うマルチメディア機器などを低価格で構成できます。
加えて、32ビットまで拡張可能な外部データバスを内蔵しており、フラッシュROMやSDRAM、SRAMなどと、外付け部品を使用せずに直接接続することが可能です。
その他、ACモータ制御用の3相PWM波等を出力可能なモータ制御に適した多機能タイマユニットを5チャネル、10ビットA/D変換器を8チャネル、8ビットD/A変換器を2チャネル、ビデオ・アプリケーションの大幅な高速化を実現する2次元アドレッシングが可能なDMACを14チャネル、CANコントローラ(注3)を内蔵しています。これらの豊富な周辺機能により、外付け部品数の低減ができ、高機能な機器の実現とともに低価格化を図ることが可能です。
「SH7265」は、上記のインタフェースや周辺機能に加え、SDメモリカード(注4)インタフェースと制御通信用のIEBus(注5)コントローラを組み合わせて搭載した製品をラインアップしています。これにより、ユーザは機器の仕様に合わせて、適切な製品を選択することが可能です。
システム開発環境としては、コンパイラやアセンブラ、リンカは従来製品を使用可能です。加えて、以下の製品を開発中です。
1)エミュレータとして、マルチコア対応のE10A-USB。
2)デュアルコア用OSとして、μITRON HI7200/MP。
補足:本OSはCPU間通信機能を備え、アプリケーション・ソフトウェアの実装容易性を高めます。本OSにより、従来のソフトウェア資産をデュアルOS動作に流用することが可能です。
パッケージは、小型の272ピンBGAを採用しており、小面積での実装が可能です。
今後、本製品をベースに、各種分野向けの周辺機能搭載製品やCPUコア数を拡大した製品、異種CPUコアを複数個搭載した製品等の開発を進めてラインアップを拡大し、市場やユーザニーズに対応する製品を提供していきます。
■注記
(注1)SuperH(TM)は、(株)ルネサステクノロジの商標です。
(注2)TRONは、"The Real-time Operating system Nucleus" の略称です。ITRONは、"Industrial TRON"の略称です。μITRONは、"Micro Industrial TRON" の略称です。
TRON、ITRON、およびμITRONは、コンピュータの仕様に対する名称であり、特定の商品ないし商品群を指すものではありません。μITRON仕様は、(社)トロン協会が策定したオープンなリアルタイムカーネル仕様です。
(注3) CAN: Controller Area Networkの略で、独Robert Bosch GmbHが提唱している車載用のネットワーク仕様です。
(注4) SDメモリカードは、3C(松下電器産業株式会社、株式会社東芝、SanDisk Corporation)で原型規格化、SDA(SD Card Association)にて発展的に拡張規格化されている小型メモリカードです。
(注5) IEBus(TM)(Inter Equipment Bus)は、NECエレクトロニクス株式会社の商標です。
*その他記載の製品名、会社名、ブランドは、それぞれの所有者に帰属します。
■応用機器例
・カーオーディオ: カーCD/DVDプレーヤ、HDD内蔵カーオーディオ等
・車載情報端末: 普及モデルのカーナビゲーション等
・ホームオーディオ: ネットワークオーディオ、HDD内蔵オーディオ等
・産業機器: シーケンサ、ロボット等
■価格
※添付資料を参照
■お客様からの問い合わせ先
株式会社ルネサス テクノロジ マイコン統括本部 マイコン製品技術統括部
マイコン製品技術第二部
〒100-0004 東京都千代田区大手町二丁目6番2号(日本ビル)
電話 03(5201)5214 (ダイヤルイン)
[Webでの問合せ]
http://update.renesas.com/registration/inquiry1.do?language=jp&action=inquiry1®ion=jp&country=jp
以 上
【補足資料】
※添付資料を参照