住友大阪セメント、電気・電子部品向け高熱伝導・電気絶縁性射出成形材料「ジーマ・イナス」を開発
電気・電子部品向け高熱伝導・電気絶縁性射出成形材料
「ジーマ・イナス」を開発
住友大阪セメント株式会社(本社:東京都千代田区、社長:渡邊穰)とダイセー工業株式会社(本社:千葉県船橋市、社長:新井伯竹)は共同で、電気的絶縁性を保ちながら、従来の樹脂に比べて約10~50倍まで熱伝導率を向上させた射出成形材料「ジーマ・イナス」を開発し、商品化しました。4月より当材料のサンプル出荷ならびに当材料を使用した部品の受注を開始し、その後本格的に販売を開始します。
1.「ジーマ・イナス」の概要と開発の背景
「ジーマ・イナス」は、熱可塑性樹脂の内部に独自の無機鉱物粒子群による熱伝導構造を導入し、電気的絶縁(=比抵抗値1012~16Ω・cm、絶縁破壊強さ14~16kV/mm)を保ったまま、熱伝導率を通常の樹脂の10~50倍程度=2~10W/m・Kまで増大させた、高熱伝導・電気絶縁性の射出成形材料です。
鉄やアルミ、銅などの金属のように、熱を通す物質は通常電気も通します。逆に、プラスチックや紙などの高分子材料は電気的絶縁、すなわち電気を通さないと同時に熱も通しづらい物質です。この性質を物性値で表すと、例えば金属であるアルミの熱伝導率は約240W/m・K、比抵抗値は3×10-6であるのに対して、プラスチックの熱伝導率は約0.1~0.3W/m・K、比抵抗値は3×1015~16と、全く正反対の数値となっています。つまり、熱を通すことと電気を通すことは一体の性質なのです。
一方、材料市場に目を向けると、電子機器の小型化が著しい中、電気的絶縁と軽量化、さらにコストダウンのため、電子部品の樹脂化が進んでいますが、反面、「樹脂の熱伝導率が低いために熱がこもり、機器や部品の信頼性を低下させてしまう」という問題が顕在化しているのも事実です。
当社とダイセー工業は、こうした電子機器向けの樹脂部品を対象とし、電気的絶縁という樹脂本来の良さを生かしたまま、熱伝導率だけを革新的に向上させた材料を提供することによって、各種電気電子部品の信頼性の向上に寄与できると考え、開発を進めてきました。
冒頭に記した独自の熱伝導構造とは、全て独特の発想によって厳選された電気絶縁性の酸化物粒子群を指し、この粒子群を熱可塑性樹脂の内部に複合化することで、本来相反する物性である電気絶縁性と熱伝導性とを一つの材料内に共存させることに成功しました。セメント会社(住友大阪セメント株式会社)は、無機鉱物に関する100年の歴史と知的資産を持っており、この資産をプラスチック材料に導入した結果が当商品の開発につながりました。
多くの樹脂部品に対して、熱を通さないことに起因する熱のこもり対策、冷却の効率化に向けた要求はますます厳しくなっています。「製品の温度が上がらないようにしたい、素早く冷やしたい、だが電気絶縁は保ちたい」という命題に対し、「ジーマ・イナス」は最も優れた材料的回答の一つであると我々は考えています。
2.素材設計技術と組成構造
「ジーマ・イナス」は、MBT(MultiplexBall-Bearing Technology=多重的球状粒子構成術)という当社独自の技術により設計された無機鉱物粒子群を、ナイロンやPPSといったエンジニアリングプラスチックに複合化しています。具体的に言うと、その組成構造は「新開発-高熱伝導性MBTフィラー」、「強化・高流動用MBTフィラー」、および射出成形を可能とするために必要な「最低限量の熱可塑性樹脂」の3つを主たる構成成分とした複合材料になっています。
各構成成分の処方割合は、部品設計者のニーズに基づいて自由にカスタマイズが可能です。
現在、標準品としては、熱伝導率4、6、8W/m・Kの3タイプを市場に提供する予定です。
3.成形技術
「ジーマ・イナス」は、通常の熱可塑性樹脂の成形で使用する射出成形機や金型で成形が可能であり、特殊な設備は全く必要ありません。
ただし、材料の特性上、金型に注入されてからの冷却硬化速度が格段に速くなるので、金型温度を通常樹脂に比べて高めに設定する等、特別なノウハウは必要です。この面においては、共同開発者であるダイセー工業のノウハウが生きており、従って部品を製造する場合は、図面等をもとに必ずご相談いただく必要があります。
4.事業化方針
「ジーマ・イナス」の事業は部品販売、すなわち図面をもとに部品を製造して販売するスタイルを主とします。ただし、お客様の製造上の制約により部品製造を請負できない場合には、適切な製造技術指導を行い、材料販売も行う予定です。
今後の計画としては、初年度は月産約10トンからスタートし、3年後には月産約50トンまで販売を拡大する予定です。なお、材料の価格は1kg当たり概ね4,000~5,000円を予定しています。
5.「ジーマ」について
ジーマとは、「Z-ma」名で2000年12月に商標登録した当社のセメント・無機鉱物系材(住友大阪セメント株式会社)料群の総称です。20世紀最後の年にリリースしたことから「Z(最後の)-material(材料)」の頭文字を取って名付けました。
既に市場に投入している商品として、異次元の高精度を実現する熱可塑性射出成形材料「ジーマ・テミス」はプロジェクターやビデオカメラ等の光学機器製品と中心に量産採用実績を積み上げています。また、純無機系押し出し成形材料としてプリンタのローラー等に量産実績のある押出グレード等、いくつかのグレードを取り揃えています。
以 上