日立、カザフスタンで新技術によるパイプライン情報管理システムの事業化を検討
カザフスタンで4次元地理情報技術を用いた
パイプライン情報管理システムの事業化を検討開始
株式会社日立製作所(執行役社長:古川 一夫/以下、日立)は、このたび、カザフスタンで4次元地理情報技術(4 Degree Geomatics Information System:以下、4DGIS)を用いた天然ガスパイプラインの保守・危機管理向け情報管理システムの事業化について検討を開始しました。4DGIS技術は、日立独自の地理情報技術であり、3次元空間に時間変化を加味して地理情報を管理します。同技術は、これまでに防災システムや施設管理システムに適用されてきました。
カザフスタンは、豊富な石油や天然ガスを持つカスピ海東岸に位置する経済成長著しい資源大国として近年世界中から注目をされており、石油関係だけでも今後15年間で800億ドル以上の投資がなされると言われています。これら天然資源を周辺諸国に輸送するパイプラインは、この国の経済の生命線であるといえ、天然ガス向けだけでも総延長約1万kmにもおよぶパイプラインが国土の縦横に敷設されています。この天然ガスパイプラインの多くは、旧ソビエト連邦時代に敷設され、使用開始から既に30年から40年以上が経過しています。一部では腐食による老朽化が進んでおり、これが原因によるガス漏れや爆発事故も発生しています。また、天然ガスに含まれるメタンは、CO2の数十倍の温室効果があり、ガス漏洩は環境保全の面においても多大な悪影響を与えることになり、このため、天然ガスパイプラインの保守管理対策が急務となっています。
こうしたことから日立独自の技術である4DGIS技術をガスパイプラインの管理システムに導入することをめざした事業性調査を推進していくことにしました。パイプラインを含む様々な設備データ、計測データ、周辺の画像データなどの地理情報を3次元空間上に対応づけて一元的に管理する4DGIS技術を用いることで、次の効果が期待できます。
(1)パイプラインの老朽状況を正確に把握
検査ロボットの腐食データ等をパイプラインの3次元形状上にマッピングすることが可能となり、起伏の大きい地域においてもパイプラインの老朽状態を正確に把握することが可能になります。さらに、腐食データを時系列に管理することにより、腐蝕状態の経年変化や将来予測を地理情報画面上で確認することができます。また、4DGIS基盤上に以下の分析アプリケーションを構築し、パイプの修理・交換すべきタイミングの決定、パイプライン保守計画立案や保守コスト適正化に活用できます。
(2)さまざまなデータを利用した重畳解析
4DGISによるデータの一元管理という特長を生かすことで、さまざまな計測データを3次元パイプライン形状に沿って地理情報画面上で重畳表示でき、これらデータを利用して老朽化状態を総合的に分析することができます。例えば、腐食状態を評価する規準に従い腐蝕状態を定量分析し、修理・交換すべきパイプの優先順序決定を行うことができます。データのメインテナンスの際に、パイプの修理や交換状況をパイプの更新のごとにシステムに反映することで、パイプライン全域の現在の腐食状態を確認することができます。
(3)HCA(High Consequence Area)解析
HCAとは、住宅地などが近くにあり特に注力して監視すべきエリアのことを指し、該当エリアの潜在的な危険性を各国で定めた規格に基づいて計算します。4DGISの時系列によるデータ管理の特長を生かして、腐食の進行やパイプの修理・交換状況を考慮したHCA領域の変化を確認できるようにし、将来の危険性を予測します。
(4)新たな機能の開発
周辺システムとの連携により新しい機能の開発が可能です。例えば、輸送システムとの連携により、オンラインデータを4DGISに取り込むことができ、腐蝕状態を考慮した最大許容圧力計算やこれに基づいた安全なガス輸送が可能となります。今後は、このような4DGISシステムと周辺システムを連携した統合情報管理システムをめざします。
日立は、カザフスタン全土にシステム導入を図ることにより、老朽パイプラインの適切な保守管理を支援し、ガス漏洩損失コストの大幅な削減や環境保全に貢献していきます。
なお、本事業性調査は、日本貿易振興機構(JETRO)の「石油資源開発等支援調査事業」の一環として行っているものです。
以 上