タカラバイオ、エイズウイルス感染細胞の淘汰治療について研究成果を発表
エイズの感染細胞の淘汰治療:
エイズウイルスが感染しているヒトT細胞は、エイズウイルス感染によって
RNA分解酵素を発現するように構築されたヒトT細胞によって淘汰される
タカラバイオ株式会社(社長:加藤郁之進)の細胞・遺伝子治療センターでは、昨年、エイズウイルス依存的にRNA分解酵素(MazF)を発現できるように遺伝子構築されたヒトT細胞にエイズウイルスを感染させても、エイズウイルスのRNAがRNA分解酵素の作用で破壊されるため、エイズウイルスが感染細胞から生産されないことを見出しています。
◆エイズウイルス感染細胞の淘汰治療:
その後、エイズ患者の治療を想定して、既にエイズウイルスに感染してエイズウイルスを細胞外に慢性的に産生し続けている細胞株(CH-1)とエイズウイルス感染によってはじめてRNA分解酵素を発現するように遺伝子構築されたヒトT細胞株とを共存させて培養を続けると、CH-1は淘汰され、ヒトT細胞株に対する存在比率が減少しました。しかし、RNA分解酵素を発現できないヒトT細胞とCH-1とを共存させるとCH-1細胞は減少しませんでした。つまり、RNA分解酵素(MazF)がエイズウイルスの感染によって発現できるT細胞は、エイズの治療効果をも示すことが明らかとなりました。
◆サルをモデルにしたエイズ遺伝子治療
一方、ヒト細胞レベルで成功した、RNA分解酵素を用いたエイズ遺伝子治療法の有効性をサルで確認するための基礎研究を続けてきましたが、ヒト細胞株では成功を収めたベクターシステムを用いても、サルCD4陽性細胞への導入効率は2%に過ぎませんでした。しかし改良を加えた結果、このほどエイズウイルスの感染によってRNA分解酵素を発現できるレトロウイルスベクターをサルCD4陽性細胞とCD34陽性細胞に、それぞれ約85%、60%の高効率で導入できようになりました。この結果、昨年の6月に契約を締結した中国疾病予防管理センター(中国CDC)との共同研究で、中国CDCがサル末梢血から採取したサルのCD4陽性細胞に上記のRNA分解酵素をエイズウイルスの感染によって発現できるベクターを導入する、サルのエイズウイルスSHIVの感染実験をまもなく開始できる段階に達しました。また、サルの造血幹細胞(CD34陽性細胞)、CD4陽性細胞を用いたサルのエイズ遺伝子治療は、日本の独立行政法人・医薬基盤研究所・霊長類医科学研究センター(つくば市)とも共同研究を開始しています。
以上のような研究成果に加えて、レトロネクチン?には、遺伝子導入された細胞を本来の機能を損なわず増殖させる特徴があることなど、合計3題の研究成果を、本年5月30日から6月3日まで米国シアトル市で開催される第10回アメリカ遺伝子治療学会(10th Annual Meeting of the American Society of Gene Therapy)で発表します。
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