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ニュースリリースのリリースコンテナ第一倉庫

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2024'11.27.Wed
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2007'04.24.Tue

島津製作所と実験動物中央研究所、がん転移の解明につながるタンパク質候補を発見

がん転移の解明につながるタンパク質候補を発見 

-実験動物中央研究所と島津製作所が共同研究-  


 財団法人 実験動物中央研究所と島津製作所は、共同研究により、2種類のがん転移モデル細胞系の解析から、がん転移に共通して量的な変化を示す9種類のタンパク質を発見しました。これらのタンパク質の働きを詳しく調べることで、将来的にはがん転移のメカニズム解明やその治療・診断薬の開発に貢献できることが期待されます。
 今回の成果は、ともに日本発、世界初のオリジナル技術である(財)実験動物中央研究所の超免疫不全マウスの技術と島津製作所のプロテオーム解析技術(NBSバイオマーカー探索システム)とが融合することで、達成することができました。

 (財)実験動物中央研究所では、がん研究で一般に用いられるヌードマウスやSCIDマウスよりも更に免疫能を抑えた、NOGマウス(*1)と呼ばれる超免疫不全マウスを独自に開発しました。このマウスを用いて、ヒト由来の膵臓がんや大腸がんの細胞株が肝臓に転移し生着したあとで、さらに高い転移能を獲得したがん細胞株を得ることができる、精度と再現性が高い新しい手法を確立しました。
 そして、島津製作所の独自技術であるNBS試薬(*2)と質量分析装置を組み合せたNBSバイオマーカー探索システムを用いて、上記ヒト由来の膵臓がん細胞株とその高転移がん細胞株で発現しているタンパク質の量的変動解析(定量的プロテオーム解析)を行ったところ、変化の大きいものを約160種類同定しました。さらに、同様の手法で大腸がん細胞株とその高転移株のセットについても解析を行ったところ、量的変化の大きいタンパク質を約150種類同定しました。
 また、この2つの解析から得られた結果を比較したところ、両方の高転移がん細胞株で共通に量的変化を示すタンパク質9種類が見つかりました。

 今回のがん転移モデル細胞系の解析では、修飾されたタンパク質も含めて解析しており、遺伝子解析では見いだせない、より多くの情報を得ることができました。

 “癌は転移がなければ怖くない”と言われています。今後、共同研究チームでは、見つかった9種類のタンパク質を、NOGマウスを利用したモデル解析系でさらに詳しく調べることにより、膵臓がんや大腸がんの肝臓への転移メカニズムの解明、さらには、その治療・診断薬の開発に貢献できるよう研究を進めていきます。

 今回の研究成果は、今年5月に広島で開催される第55回 質量分析総合討論会で発表する予定です。


(補足) 
 島津製作所ではこの数年来、質量分析装置を核としたプロテオーム解析に重点をおいたライフサイエンス事業を進めてきました。その中で、安定同位体を用いた定量的プロテオーム解析のための新たな試薬、NBS試薬を開発し、その改良と応用開発を進めてきました。さらに、NBS試薬と質量分析装置を組み合せてバイオマーカー探索解析の信頼性向上と作業の大幅な効率化を実現したNBSバイオマーカー探索システムを昨年9月に発売しました。

 NBSバイオマーカー探索システムは、高速液体クロマトグラフ(Prominence)、MALDIプレート用自動スポッティング装置(AccuSpot)、質量分析装置(AXIMAシリーズ)および解析ソフト(TWIP)で構成され、NBS試薬による定量的プロテオーム解析を効率的に行うことができるシステムです。


*1)NOGマウス :
 免疫をつかさどる主な細胞にはT細胞とB細胞があり、T細胞(胸腺)欠損マウスをヌードマウス、T, B両細胞欠損マウスをSCIDマウス(Severe combined immunodeficiency;重症複合型免疫不全症マウス)と呼んでいます。SCIDマウスには、もう一つの重要な免疫担当細胞で、がん細胞等の異物を排除する機能を持つナチュラルキラー(NK)細胞が残存しています。NOGマウスは(T・B細胞に加え)このNK細胞も存在しない超免疫不全マウスです。がん細胞等の生着性が極めて高いマウスなので、免疫学だけでなく再生医学やがん研究の分野でも利用され始めています。 

*2)NBS試薬 :
 質量の異なる2種類の安定同位体試薬により、タンパク質に含まれるアミノ酸の一種トリプトファンを選択的に標識する試薬キットです。あるがん細胞と高転移能を獲得したがん細胞から抽出したタンパク質を、異なる質量の試薬でそれぞれ標識した後に質量分析装置で測定することにより、がん細胞とその高転移能獲得がん細胞に含まれるタンパク質の種類や量の違いが解析できます。 


■財団法人実験動物中央研究所について: 
<設立目的>
 財団法人実験動物中央研究所(実中研)は、終戦後、感染論研究を行っていた現理事長の野村達次が、医学研究者が研究に使用していた実験動物の水準を上げることで日本の医学研究全体の水準向上に貢献するために1952年に設立された研究所です。

<所在地>
 神奈川県川崎市宮前区野川1430 

<設立>
 1952年5月 

<理事長>
 野村達次 

<主な共同研究団体>
 應義塾大学医学部連携大学院、東海大学医学部、WHO、FDA(USA)、創薬関連会社等
 
<研究内容>
 ・重度免疫不全マウスの作出とNOGマウスを用いた各種動物実験系の開発 
 ・遺伝子改変マウスを用いた26週間投与がん原性試験システムの開発 
 ・ポリオ生ワクチンの神経毒力検定用マウスの開発(WHO認定) 
 ・コモンマーモセット(霊長類)を用いた、脊髄損傷モデル・パーキンソン病モデルの開発

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