雪印種苗など、通常の2.5倍の亜鉛含有量を持つ大豆栽培法を開発
通常の2.5倍の亜鉛含有量を持つ大豆栽培法の開発に成功
雪印種苗株式会社(本社;札幌市、社長;掛村博之)と株式会社山本忠信商店(本社;北海道河東郡音更町、社長;山本英明)は、標準的な大豆と比較して2.5倍まで亜鉛含有量を高めた亜鉛高含有大豆について、専用資材の開発と栽培方法を確立し、平成18年12月27日に共同で特許を出願しました。この大豆の亜鉛含有量を他の食品と比較すると、一般に高い亜鉛含有率を持つ食物として知られている牛レバーの2倍以上となります。
今後は、各種食品原料としての可能性を探り、その付加価値を追及して行きたいと考えています。
未成熟大豆として収穫するエダマメの品種開発を積極的に進めている雪印種苗は、エダマメ種子の生産と販売で日本国内トップのシェアを持ち(同社推計)、品種の付加価値を高める研究開発を進めてきました。山本忠信商店は北海道内大手の穀物商社として、道産穀類では大きな取扱い実績を持ち、生産者との契約栽培等を進めてきました。
この二社が、大豆産業の活性化に役立つ技術や商品の開発ができないかという点で一致し、平成16年6月25日に共同研究契約を締結して、各種基礎試験や研究を進めてきた結果、その事績として今回の特許出願に至りました。
開発の内容としましては、北海道近海に自生している海藻を加工し、亜鉛を配合した特別な肥料の製造方法です。この専用資材は既に肥料登録を取得し、今年から各種実用化試験を開始する予定です。この専用資材を豆類に与えると収穫物中の亜鉛含有量を飛躍的に向上させることが可能で、大豆であれば通常の2.5倍にまで亜鉛含有量を高めることができます。
亜鉛は人間が生きていく上で必須のミネラルですが,近年,現代人は亜鉛不足であることが指摘され、種々の健康障害や精力減退、抑うつ症状の原因として問題視されています。このことから平成14年には厚生労働省が栄養機能食品成分として亜鉛を追加し、また平成16年には文部科学省により給食中亜鉛含量の目標値が設定されるといった公的機関による対策も講じられています。
この技術によって得られる収穫物の亜鉛強化食品としての有用性については,亜鉛不足の健康被害について詳しい冨田寛博士(日大名誉教授、微量栄養素研究所所長)に以下の通り解説をしていただきましたので付記いたします。
【亜鉛高含有大豆栽培の普及は人類の福音】
日本大学名誉教授・微量要素研究所所長冨田(とみた)寛(ひろし)
(第2回国際微量元素医学会議会長,初代日本微量元素学会理事長)
大豆に含まれているイソフラボンという物質は、女性ホルモンに似た働きがあり、女性の更年期障害を軽減し、骨粗鬆症や肌の老化を防ぐとともに、動脈硬化を予防することで、ダイズを多く食する住民は、男女とも高血圧や高脂血症、さらに心筋梗塞や脳卒中が少ないことがWHO(世界保健機構)の地球規模の研究で明らかになっている。
前立腺癌や乳癌の死亡率も、イソフラボンの摂取量と逆相関している。
さらに大豆は、もともと必須微量栄養素の亜鉛を比較的多く含む穀類(3.2mg/100g)であるが、雪印種苗(株)と(株)山本忠信商店が共同開発した『海藻エキス肥料』で栽培することにより、その亜鉛含有量を2.5倍(8.0mg/100g)に高めることに成功した。
亜鉛は、妊娠の持続、子供の成長に欠かすことの出来ない栄養素であり、成人では免疫力を高めるとともに、老化を早める体内での活性酸素の発生を抑え、細胞の新生を活発にすることにより、動脈硬化症や骨粗鬆症を防ぎ、イソフラボン同様の働きをするばかりではなく、味覚、嗅覚、視力、脳力を良くするという、日本の少子高齢化社会を健やかに過ごすために必須の栄養素である。
厚生労働省の食事摂取基準による亜鉛の推奨量は、男性9mg/日、女性7mg/日であるが、現在の日本人の食事内容では、かなりの人々が亜鉛欠乏状態であり、事実、味覚障害を訴える患者が増加している。
『海藻エキス肥料』栽培で得られた亜鉛高含有大豆を食すれば、一日僅か150gで推奨量を充たすことが出来るわけである。大豆は様々な加工食品の原料として利用されているとともに、主食となりうる食材でもあるので、日本ばかりでなく、世界の食糧事情に大きく貢献できるであろう。