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2024'11.24.Sun
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2007'05.09.Wed

理化学研究所、自然免疫の活性化にアダプタータンパク質「CARD9」の関与を発見

生体防御のフロンティア“自然免疫”の新しい活性化機構を発見
- リンパ球活性化タンパク質と構造が似た分子“CARD9”が関与 -


◇ポイント◇ 
 ●“CARD9”の遺伝子欠損マウスの解析で自然免疫活性化機構を解明 
 ●ITAM関連受容体を介して、炎症反応を引き起こす転写因子NF-κBを誘導
 ●感染や自己免疫疾患への有効な薬剤開発・治療に新たな道を提示 

 独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)は、自然免疫の活性化に、アダプタータンパク質※1“CARD9”が関与することを発見し、そのメカニズムを解明しました。これは、免疫・アレルギー科学総合研究センター(谷口克センター長)免疫シグナル研究グループの斉藤隆グループディレクター、佐賀大学医学部の原博満講師らによる研究成果です。
 骨髄系細胞の樹状細胞やマクロファージは、体に侵入するウイルスやバクテリア等に対して防衛する自然免疫反応の中心的役割を担っています。これらの細胞は、細胞活性化のための共通した構造(ITAM)※2をもつ受容体を数多く発現しており、これらの受容体が、感染微生物に対する生体防御や関節リウマチなどの自己免疫疾患の発症に関わることが知られていました。しかし、これらの受容体が自然免疫を活性化する分子メカニズムはよくわかっていませんでした。
 研究チームは、リンパ球の活性化に必須であることが知られているアダプタータンパク質CARMA1と似た構造を持つCARD9※3が、ITAM構造をもつ種々の受容体を介した樹状細胞やマクロファージの活性化において、重要な役割を担うことを突き止めました。CARD9の遺伝子欠損マウスの細胞を調べると、炎症反応を引き起こすのに重要である転写因子NF-κBが誘導されず、CARD9欠損マウスでは、リステリアなどの病原微生物による感染に対して実際に抵抗性が著しく弱まることがわかりました。これらの成果は、今まで知られていなかった自然免疫の活性化機構を明らかにしたもので、今後の感染症、自己免疫疾患、がんなどの有効な薬剤開発の新しい標的として、治療への応用が期待されます。
 本研究成果は、米国の科学雑誌『Nature Immunology』(6月号)に掲載されるに先立ち、オンライン版(5月7日付け:日本時間5月8日)に掲載されます。 

1.背景
 生体防御を担う免疫系には、高等動物も下等生物も同様に持つ初期防御機能の「自然免疫」と、高等動物のみが持ちリンパ球と抗体が活躍する防衛システムである「獲得免疫」があり、両者が協調して働いています。「獲得免疫」の中心であるT細胞やB細胞などのリンパ球は、抗原受容体(TCR、BCR)によって抗原を認識して活性化します。抗原認識・活性化シグナルは、ITAMと呼ばれる特殊な構造(細胞活性化モチーフ)を持つアダプタータンパク質を介して細胞内へ伝えられます。一方、「自然免疫」において中心的な役割を演じる骨髄系細胞の樹状細胞やマクロファージも、ITAM構造を持つアダプタータンパク質によって細胞内へ活性化シグナルを伝える種々の受容体を発現していることが最近明らかとなってきました。これらの受容体は、未だ機能が不明なものが多いものの、いくつかの研究報告から、これらの受容体は、カンジダ※4やカリニ原虫※5などの真菌に対する感染防御や、関節リウマチなどの自己免疫疾患の発症に関与することが強く示唆されています。しかし、これらの受容体を介して、樹状細胞やマクロファージがどのように活性化されているかという分子メカニズムは全く不明でした。
 免疫細胞の活性化には転写因子NF-κBの活性化が不可欠で、抗原受容体からどのようにシグナルが伝わってNF-κBの活性化に至るかがこの数年間に解明されてきました。NF-κBの活性化にいたる過程には、腫瘍形成に関与するとされるアダプタータンパク質Bcl10、およびBcl10と結合して複合体を形成しリンパ球の活性化に関わるアダプタータンパク質CARMA1が必須であることが明らかになっています。CARD9は、CARMA1と構造的に良く似た分子であり、CARMA1同様にBcl10と複合体を形成してNF-κBを活性化することが培養細胞では知られていましたが、生体内での役割はまだ解っていませんでした。 

2.研究手法と成果 
 CARD9の生体内での機能を解明するために、CARD9の遺伝子を欠損するマウスを作製して、「獲得免疫」をつかさどるT細胞・B細胞の機能と、「自然免疫」をつかさどるマクロファージや樹状細胞の機能を調べました。
 その結果、CARD9欠損マウスのT細胞とB細胞では、抗原認識とサイトカイン産生にいたるその後の活性化は全く正常でした。しかし、CARD9を欠損するマクロファージや樹状細胞では、種々のITAM関連受容体※6を、そのリガンド※7または受容体に対する特異的抗体によって刺激しても、産生される炎症性サイトカイン(IL-6、IL-2、IL-12、TNF)の産生は、いずれの場合にもほぼ完全に抑制されることが明らかとなりました。
 次に、サイトカイン産生に至るシグナル伝達経路を調べたところ、CARD9を欠損した樹状細胞では、ITAM関連受容体を介したNF-κBの活性化が障害されていました。Bcl10を欠損するマクロファージや樹状細胞でも、同様にこれらのITAM関連受容体を介する活性化が起こらなかったことから、NF-κBの活性化にCARD9とBcl10の複合体が必須であることがわかりました。一方、CARMA1を欠損した樹状細胞では、正常なNF-κBの活性化が起こり、CARMA1-Bcl10複合体は樹状細胞のNF-κB活性化には関与しないことが判明しました。
 これらの結果から、リンパ球の活性化にはCARMA1を介したシグナルが必要なのに対して、骨髄系細胞の活性化には、CARD9が選択的に関わり、いずれもITAM関連受容体を介した細胞活性化を担っていることが明らかとなりました(図1)。

3.今後の期待 
 C型レクチンファミリー、TREMファミリー、Siglecファミリー、DC-Signなど、ITAMを介して細胞に活性化シグナルを伝える受容体は、膨大な種類が存在することが解ってきました。未だリガンドや生理機能が不明なものが多いなかで、これらの受容体が、カンジダやカリニ原虫などに対する生体防御や、関節リウマチの発症に重要であることが明らかになってきています。今回の研究による成果は、今まで知られていなかった自然免疫の活性化機構を明らかにしたものであり、新規創薬ターゲットを提供するなど、今後の感染症、自己免疫疾患、がんなどの治療に新たな可能性を提示することが期待されます。


<補足説明>
※1 アダプタータンパク質 
 細胞内に存在して、それ自身では酵素活性などの機能は持たないが、他のタンパク質と会合する機能によって、シグナル伝達を担う分子。多くがタンパク質相互作用を支える特定の領域(SH2、SH3、CARDなど)を含んでいる。
 
※2 ITAM 
 Immunoreceptor Tyrosine-based Activation Motifの略。T細胞受容体、B細胞受容体、Fc受容体などの免疫細胞受容体のサブユニット(CD3分子群、Igα/Igβ、FcRγなど)や、NK細胞受容体と会合するアダプター分子(DAP12など)などに共通して見られるチロシン残基を中心とするアミノ酸配列で、チロシンリン酸化によって活性化されて、活性化シグナルの伝達を担う。
 
※3 CARD9 
 アダプタータンパク質のひとつで、タンパク質相互作用を促すモチーフであるCARD領域を含んでいる。Bcl10と結合して協調的にNF-κBを活性化することが、培養細胞を用いて報告されていた。
 
※4 カンジダ 
 真菌の一種。カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)は、元来はヒトの体表や消化管、それに女性の膣粘膜に普通に生息するが、糖尿病、がん、エイズ患者や妊婦など,免疫機能が低下している人では,カンジダ症とよばれる日和見感染を引き起こす原因となる。
 
※5 カリニ原虫 
 真菌の一種。Pneumocystis Carinii。エイズなどでみられる日和見感染症の一つであるカリニ肺炎を引き起こす。
 
※6 ITAM関連受容体 
 ITAMを含む受容体(レクチン受容体のDectin-1など)、およびITAMを持つアダプタータンパク質(FcRγ、DAP12など)と会合する受容体(IgG受容体のFcγR、MAIRII、TREM-1、OSCARなど)。その他にも、C型レクチンファミリー、TREMファミリー、Siglecファミリー、DC-Signなど、数多く知られる。
 
※7 リガンド 
 特定の受容体に対して特異的に結合する物質のこと。例えば、酵素タンパク質とその基質、ホルモンや神経伝達物質などのシグナル物質とその受容体など。 

●図1 ITAM関連受容体を介する免疫細胞の活性化機構
 リンパ球(T細胞・B細胞)の抗原受容体(TCR、BCR)は、抗原認識をすることにより、受容体に会合するITAMを持つアダプター分子(CD3分子群、Igα/β)にリン酸化を起こし、CARMA1を介してシグナルを伝達し、転写因子NF-κBの活性化に至る。一方、骨髄系細胞の樹状細胞やマクロファージによる自然免疫系では、同様にITAMを持つアダプター分子(FcRγ、DAP12)と会合する関連受容体を介した活性化シグナルは、CARD9によって伝達、NF-κBの活性化に至る。また、CARD9欠損マウスの解析から、CARD9はTLRからのNF-κB活性化シグナルにも重要に関与することが判明した。すなわち、ITAM受容体による免疫細胞の活性化は、リンパ球ではCARMA1が、骨髄細胞(樹状細胞・マクロファージ)ではCARD9が担っている。


(※ 図1は関連資料を参照してください。)

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