ローム、オーディオ出力付きセット向けのD級スピーカアンプLSIを開発
業界最高レベル 高効率90%!
ロームが薄型テレビ用D級スピーカアンプLSIを開発
半導体メーカのローム株式会社(本社:京都市)はこのほど、液晶テレビ、プラズマテレビ、ミニコンポ、パワードスピーカ、アミューズメント機器等のオーディオ出力付きセット向けに高効率90%を達成した17W+17W出力のD級ステレオアンプLSI『BD5421EFS』を開発。液晶テレビなど放熱設計に十分なスペースが確保出来ないセットでも迫力のあるサウンドを実現できます。この新製品『BD5421EFS』は、既に2007年3月から当面月産100万個の規模で量産(サンプル価格:500円)を開始しており、生産は、前工程をローム浜松(静岡県)、後工程はROHM INTEGRATED SYSTEMS (THAILAND) CO., LTD.(タイ)で行っています。
急速に普及が進む液晶テレビやプラズマテレビは薄型設計が求められ、そこに搭載される電子部品には低背化が求められています。また多くのセットでHDDやCPUが搭載され多機能化が進むなか、発生する熱が益々増える傾向にあり、発熱を抑えることが求められています。今までのアナログアンプでは、効率が50%前後と小さく電力の約半分が熱に代わるため、大きな放熱板や冷却ファンが必要となりセットのさらなる薄型化は困難でした。今回ロームは最先端BiCDMOSプロセスを使用し、出力トランジスタのオン抵抗や配線抵抗を極限まで低減したステレオD級パワーアンプLSI『BD5421EFS』を開発。業界トップクラスの高効率90%を実現しました。パッケージには放熱効果の大きな小型裏面メタルタイプを使用することで放熱板無しで34W(17W+17W)まで出力できます。これによりセットの小型化・薄型化そして低消費電力化に大きく貢献します。
また従来のD級パワーアンプに対して『BD5421EFS』は、従来品を大きく下回る5.6μVrmsの入力換算雑音電圧を実現。雑音の少ないクリアな音質を実現するとともに、音声ミュートのON/OFF切り換え時にはローム独自のソフト切り換え技術で信号を滑らかなエンベロープ波形とすることで、高音質で高品位なサウンド再生を実現します。加えて『BD5421EFS』は、PMW変調用サンプリングクロックのマスター/スレーブ機能も特長です。D級パワーアンプLSIのPWM変調用サンプリングクロックは通常内部の発振回路で生成します。しかし5.1chシステムのように複数個のD級パワーアンプLSIを使用する場合、それぞれのクロック周波数の僅かな差がビートノイズの原因となります。ロームのD級パワーアンプLSIを使用すれば、マスターとなるD級パワーアンプLSIから他のスレーブとなるD級パワーアンプLSIにクロック供給ができるため完全同期動作が可能になります。このためクロック間のビートノイズの発生を防ぎ、クリアな音質を実現できます。
《 BD5421EFSの主な特長 》
1)業界トップクラスの高効率90%(10W+10W出力、負荷8Ω時)で低発熱
2)小型裏面メタルパッケージHTSSOP-A44の採用により外付け放熱板無しで34W(17W+17W)出力が可能
3)最小4Ωまでの定格負荷を駆動可能
4)電源ON/OFF時、電源瞬断時のポップ音低減
5)ソフト切り換え技術により、高品位な音声ミュートを実現
6)複数個同時使用時に同期可能なマスター/スレーブ機能で、サンプリングクロック周波数の個体差によるビートノイズの発生を防止
7)外付け抵抗によりゲイン調整が可能(20dB~37dB)
8)内部PMW用サンプリングクロック周波数を調整(200~400kHz)可能で、AMラジオ帯域への不要輻射の低減
9)ステレオ出力のパラレル接続により、高出力34Wモノラルアンプが構成可能
ロームは『BD5421EFS』の他にも、低出力超小型パッケージタイプや高出力タイプ、デジタル入力タイプなどAV機器から小型携帯機器までご使用いただけるD級スピーカアンプのラインアップ充実を進めてまいります。
1.用語説明
●D級スピーカアンプとPMW変調用サンプリングクロック
「D級スピーカアンプ」とは、アンプの増幅方式の一種で「デジタルスピーカアンプ」と呼ぶ場合もあります。D級アンプは、まずコンパレータで入力オーディオ信号と三角波を比較してパルス幅が時間とともに変化する矩形波(PMW)に入力オーディオ信号を変換します。そしてPMW信号にて出力FETをスイッチングし、外付けのローパスフィルタを介してスピーカを駆動します。アンプ内部の出力段はスイッチング動作のため、僅かな電力しか消費せず効率よく増幅が行えます。D級スピーカアンプは効率がよく発熱も少なく、また小型であるため薄型テレビや低価格オーディオ機器、携帯電話に使用されています。PMW変調用サンプリングクロックはオーディオ信号と比較する三角波を生成するための基準クロック信号のことです。
●入力換算雑音電圧
アンプ内で発生するノイズが全てアンプの入力箇所で発生したものと仮定したノイズ量を入力換算雑音電圧といいます。
アンプの入力換算雑音レベルが信号入力レベル以上であれば、信号はアンプ自身の発生するノイズに埋もれてしまいます。
●5.1chシステム
ステレオは2つのスピーカで音声を再生しますが、5.1chシステムでは6つのスピーカが使われます。正面、右前方、左前方、右後方、左後方、低音出力用のサブウーハスピーカの6つです。サブウーハスピーカは出力できる音域が限られるため、0.1chとカウントされます。ステレオD級スピーカアンプを3個使いすることで、5.1chシステムを構成することが可能です。
●マスター/スレーブ機能
他のシステムやデバイスを制御する機能をマスター機能といい、他のシステムやデバイスに制御される機能をスレーブ機能といいます。
●ビートノイズ
周波数が近接する2つの信号がお互い干渉して発生する差分の周波数のノイズをビートノイズと言います。最悪の場合、スピーカから異音が発生します。
2.製品写真
(※ 関連資料を参照してください。)
3.BD5421EFSの出力電力-効率特性
(※ 関連資料を参照してください。)